このレポートは、「日本の廃道」2010年5月号に掲載された「特濃廃道歩き 第27回 浪江森林鉄道 真草沢線」を加筆修正したものです。当記事は廃道探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。
林鉄界の秘宝! 幻の「三段インクライン」を解明せよ!
このレポートは、「日本の廃道」2010年5月号に掲載された「特濃廃道歩き 第27回 浪江森林鉄道 真草沢線」を加筆修正したものです。当記事は廃道探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。
◆ 8:35 支流の渡河地点
起点からおおよそ800m。辺りは森閑とした空気に包まれており、集落や県道がある下界からは、早くも隔絶された雰囲気だ。しかし、かつてはこの足元にある森林鉄道を利用して大勢の作業者が入り、山に賑わいをもたらしていたはずである。
そしてこの直後、私はそんな昔人の息吹を感じる発見を得た。
軌道跡は沢の本流に沿って右へ大きく曲がっていた。そこで小さな支流を跨ぐのだが、ここに橋の跡は全く残っていなかった。
進行方向が変わり、背中越しに朝日が射し込むようになった。この穏やかな路盤に沿って、僅かな段差を見せているのは、低い石垣だ。増水への備えといったところか。ささやかな発見だが、こういう作り手の道への愛情を感じられる構造物は、私を例外なく喜ばせる。
◆ 8:44 対岸に何か見つけたぞ
路盤は右岸をひた進む。しばらく行くと、対岸に気になるものを見つけた。それは、人工的に均されたとしか思えない、平らな地形だった。いわゆる平場(ひらば)というやつである。画像の二つの赤矢印の位置にあった。
気になったので、飛び石伝いに対岸へ渡ってみた。
これは「手前の矢印」の平場。そこには、川側を石垣で固められたコンクリート敷きの土地があった。広さは数メートル四方で狭い。隅には浅い溝のようなものが掘られており、おそらく木造の家屋が建てられていた跡だと思う。小さいので物置小屋だろうか。
この謎のコンクリート平場から、少し前まで自分が歩いていた右岸の軌道跡を振り返ると、期待以上に路盤が鮮明に見え、特に路肩の低い石垣の列が美しかった。だが、見るからに勾配がキツく、手押しトロッコの空車上げは大変な重労働だったろうなぁと、昔人の汗が思いやられた。
そして次は、左岸に見えたもう一つの平場へよじ上った。最初の平場より10mほど高いところだ。
◆ 8:48 作業場跡?
おおおっ! これは綺麗で広い平場だ! 更地に木が生えた状態で、コンクリートは敷かれていないが、前の平場よりだいぶ広い。
平場というのは、山中に放置されても簡単には消えない。特に、川の流れに洗われないこのような高台にあれば、なおさらだ。だからこそ、平場が建造された時代を推定するのは簡単ではない。
この平場の場合、周囲に路盤と同様の空積みの石垣が多用されていることや、生えている木があまり太くないことから、林鉄と同時代の遺構だと思う。
林道や林鉄沿いの施設といえば、営林署が建設した造林宿舎や製品作業所がまず疑われるのだが、ゴミを含めた遺物が少なく、正体は不明のままである。
この平場は沢の蛇行に削り残された小さな岬状の高台にあるため、谷間にありながら見晴らしが良かった。
だがこの写真の通り、見渡した林鉄の進行方向、すなわち上流である北方には、あるはずの路盤が見えなかったのである。直前まで明確に見えていた路盤が、忽然と消えていた……?
平場探索のために、少しだけ目を離したら、路盤が消えてしまった。
そんな筈はない!
よく目をこらして探せ!
あ。
斜面に刻まれた、怪しい窪みが――?!
出たー!!!
遂にインクライン跡地を発見したぞ!