『このレポートは、「日本の廃道」2011年12月号および2012年1月号に掲載された「特濃廃道歩き 第36回 深浦営林署 追良瀬川森林鉄道」を加筆修正したものです。当記事は廃線探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。』

未だ知られざる

白神山地の森林鉄道に挑む。

 

所在地 青森県西津軽郡深浦町

探索日 平成23年6月18日

 

◇第1ステージ 「追良瀬地区」 その2

 

■国道立体交差跡 6:07 

 

 

 

国道の下を斜めに横断するこの暗渠、ここをかつて森林鉄道が通っていたという。

外見からして非常に頑丈そうな鉄筋コンクリート製の暗渠で、奥に見える自転車の廃車体とサイズを比較しても、幅は単線の線路を敷くのに十分そうだが、高さがどう見ても足りない。かつては地面がもっと低かったのだろう。何らかの理由で外から土砂が持ち込まれ、天井が低くなったと思われる。

 

 

 残念ながら通り抜けることはもう出来ない。入口から5mほどのところに錆びたトタンの壁が立ち塞がっていた。僅かに隙間があるので覗いてみると、奥は倉庫か何かに使われているようだった(現役国道の地下が私有地とは思えないが)。とはいえ、構造物としてはしっかり貫通していることが隙確認出来た。

 林鉄用の立体交差施設自体が貴重だし、何より全く予期せぬ遭遇だったので、とても幸先が良いと思った。今日の探索は、ひょっとすると大きな成果が期待できるかも知れない。

 

 ところで、林鉄が追良瀬駅を起点に開設された昭和11年当時、交差している道路は国道ではなく、まだ県道だった。また、立体交差ではなく、同じ場所で平面交差していたはずだ。立体交差化の時期は不明だが、踏切を除去するためというよりは、道路の勾配を緩和するための改良だったと思われる。この立体交差から始まる上り坂は今なお急なもので、冬場は特に国道101号有数の難所とされている(これを解消する追良瀬バイパスの建設が現在進んでいる)。

 

 

 今度は暗渠直上の国道に上って、追良瀬駅方向を俯瞰してみた。黄線で示した矢印の先端に暗渠があり、この線の位置を林鉄は通っていたと思う。奥にある追良瀬駅からここまで山沿い通じる町道があるが、おそらく林鉄はこの町道へ姿を変えたのだ。

以上の推測の根拠となるのが、昭和23年の航空写真である。

 

地図・空中写真閲覧サービスより取得した画像(URL)を一部加工。

 

 図中に赤く示したのが、軌道跡と思われるラインである。追良瀬駅の北側に隣接する広大な敷地が貯木場(製材所も併設か)で、林鉄はその西端辺りから始まり、山際を東へ延びている。さらに追良瀬橋の北側で県道(現国道)を立体交差で潜り、追良瀬川上流へ向かっているのが見えるだろう。

 対して水色の線は、現在もある川沿いの町道である。一般的に林鉄は、宅地や農地としての利用価値が低く、土地の取得が容易い、山際や山腹といった不便な土地を通過することが多いのだが、この追良瀬でも同様の傾向があったことが窺える。

 

 

 今度は暗渠の上流側の出口だが、坑口前は私有地なので、近くの路上から観察した。坑口前に資材が立て掛けられていて見えづらいが、ちゃんと原形を留めているようだ。

 

 

 暗渠前の民家を回り込むと、丁字路があった。おそらくこの右の砂利道が軌道跡の続きであろうと読んで、歩きで進入してみた。

 

 

 公道だとは思うが、凄くローカル感の強い路地だ。家並みを縫うように走っている。森林鉄道というものをよく知らない人にとっては、とても「鉄道」と名のつくモノの通り道とは思わないだろうが、林鉄ならあり得る景色だ。

 

 

 道は、コンクリートで固められた山裾を回り込むように細く続いて、最後は広い道に辿り着いた。こうして通り抜けられるのは、道の外形は変わってしまっても、軌道跡としての連続性を保っているということであり、楽しいことだ。

 

■追良瀬集落出口 6:17

 

 

 

 軌道跡から辿り着いた町道との合流地点を振り返って撮影した。右の細道が軌道跡である。

 注目は、この右に見えるシャッターがある木造建築。シャッターは新しいが、建物自体は年季を感じさせるもので、林鉄時代の生き証人を期待させたが、壁を見ると……

 

 

 キタキタ! 青森営林局の名前が入ったホーロー看板! 「山火防止 たきびたばこに御用心」の文字が入っており、見るからに林鉄時代からのアイテムだ。内容は林鉄と直接関わるものではないが、山仕事の出入りに通る道がここにあったことを強く感じさせてくれた。

 

 

 以上で起点を含む追良瀬集落の探索は終了。ホーロー看板を背に追良瀬川の行く先を見れば、こんな絵に描いたような山峡への旅立ちの景色が広がっている。

 

 次回は、追良瀬川沿い最奥の集落からスタート!

 

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