このレポートは、「日本の廃道」2010年5月号に掲載された「特濃廃道歩き 第27回 浪江森林鉄道 真草沢線」を加筆修正したものです。当記事は廃道探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。

林鉄界の秘宝! 幻の「三段インクライン」を解明せよ!

 このレポートは、「日本の廃道」2010年5月号に掲載された「特濃廃道歩き 第27回 浪江森林鉄道 真草沢線」を加筆修正したものです。当記事は廃道探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。

 

◆ 9:03 第一インクライン 上端部 

 

 12分掛かって、汗みどろになって、さらに両足のふくらはぎに筋肉が過剰に引っ張られたことによる違和感を抱えながら、なんとか、1本目のインクラインを完登した。

だが、『全国森林鉄道』にあった「3段インクライン」が実在ならば、いま辿り着いたここは「2段目」ということになり、この先に「3段目」へ登るための第2のインクラインが待ち受けているはずだ。

私は、過去に体験したことのない特異な林鉄の核心に触れ始めたという実感に、興奮していた。だが、ここより先へ進む前に必要なことがあった。それは、立ち止まって呼吸を整え、身体の熱を逃がし、足を十分にほぐすことだった。

 

一旦休止!

 

 

 これこれ! これがなければ、インクラインの証明は出来ない。インクライン上端部のすぐ上の斜面にあった、ケーブルを操作するための機械(制動機)を設置していた跡だ。ここには車重を超えるたいへん強い力が加わるので、幾重にも石垣を張り巡らせた頑丈な地固めが行われていた。

残っているのは石垣だけで、制動機そのものは跡形もなかったが、これだけでもインクラインの証拠としては十分だ。

 

 

 高所恐怖症の人は、これも閲覧注意かもしれない。いましがたよじ登ってきたインクラインの傾斜路を見下ろすと、高度感と強い傾斜が相まって、なかなか恐ろしいものがあった。

 これはたぶん、登ってくる方がまだマシで、ここから下れというのは、もっとキツい気がした。足を踏み出した途端、落葉で滑り落ちそう。

 

 

 これまで探索した軌道跡とインクラインを、地形図に重ねて描いてみた。

 

 第一インクライン 推定緒元

 

(一)開設年度:戦前(大正末?~昭和初期?)

(二)様式:複線? 一部曲線あり

(三)斜面長:120m 

(四)高低差:50m

(五)最急勾配:45度

 

 標高150mにある起点(本線との分岐地点)から、約1kmで240mの標高まで登った「下部軌道」は、その終点で全長120mの第1インクラインと接していた。インクラインによって50mの高度を稼ぎ出し、標高300m付近から、改めて「中部軌道」が始まる。

 なお、インクラインを擁する軌道に関し、インクラインの下に接続する軌道を「下部軌道」、上に接続する軌道を「上部軌道」と呼び分けることが一般的である。しかし今回は、インクラインがもう1箇所あるとの想定から、現在地について「中部軌道」と表現した。

 

 

 谷底で始まった路線だったが、凄まじいインクラインの威力によって、一気に山の中腹へ躍り出た。だが、地形図は現在地の周囲にも密な等高線を描いている。したがって、ここからどの方角に進路を採るとしても、軌道の行く末は、決して容易ではないだろう。もちろんそれは他人事ではなく、我が進路の難易がかかっている。

 

 この先、どうなるのか。

 

次回、「中部軌道」に

 

叫ぶ!