このレポートは、「日本の廃道」2005年9月号、10月号、11月号に掲載した「特濃!廃道あるき」をリライトしたものです。
当記事は廃線探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。

所在地 岩手県八幡平市(市道 藤七温泉線)
探索日 平成17(2005)年7月24日

V地点 暗渠
2005年7月24日12:55

石畳は所々残っていたが、それを除けば道の大半が藪に覆われ、痕跡はとても乏しい。そして全体的に勾配は非常に急で、「ジープ道」であったという記録を裏付けた。急勾配かつ滑りやすい石畳や赤土の路面という状況は、仮に藪がないとしても、一般の足回り構造の車では走破出来ないはずだ。

なお、米陸軍に由来するジープだが、昭和30~40年代には国産化もされ、林業、建設、電力関連などを中心に、国内にも多くのユーザーがいた。当時の日本の山道は、まだ一般の乗用車には過酷すぎる場所が多かったのだろう。そしてその頃、この八幡平では、東北最高地の一軒宿である藤七温泉への荷揚げを目的に、ジープが利用されたことが記録されている。一般人がジープのような自家用車を使って藤七温泉を訪れたことがあったかどうかは記録がなく定かではないが、基本的には藤七温泉の専用の輸送だったように思う。ほとんどの登山者は、このジープ道を半日掛けて歩いたのだ。

海抜1230m付近にて、写真の暗渠を発見した。路面のすぐ下に素材不明の管が埋設されており、そこを勢いよく沢水が通じている。廃道にありながら機能を完全に保っており、ここに幅2m内外の車道があったことを物語る貴重な存在となっていた。

だが、暗渠を越えて数分後には、赤土が露出した痩せた尾根に立っていた。道を辿っていて自然とここに至ったつもりだが、気付けば尾根の上には道形がなく、おそらく崩壊して地形が変化しているか、本当の道が藪に隠されて見逃したかしたのだろう。

ただ、全く人の来なかった場所ではないようで、錆びて文字が読めなくなったブリキの標識板が赤土の上に転がっていた。

加えて、我々はこの場所で不思議な熱気のようなものを感じた。火山地帯なので地熱を帯びているのかもしれないが、原因は不明。気温のせいか蚊が大量に発生しており、我々はすぐにこの場所を退散した。

赤土の尾根は、尾根であるがゆえに藤七沢の対岸がよく見渡せたが、開放感とは無縁の眺めが私を辟易させた。八幡平の特徴である、雄大といえば聞こえは良いが、冗長と表現できる樹海が眺望の全てを支配しているのは、ここまでこの山域に深入りしてしまった我々に楽な逃げ場は全くないことを物語っているようだった。

W地点 温泉マーク
13:18

海抜1300mに達すると、道は再び藤七沢の畔へ出た。約1kmぶりに再会した沢は、驚くほど水量が減っており、せせらぎ程度の流れであった。変化はそれだけではなく、両岸の所々に白っぽい地肌が露出している部分があって、異様である。そして何より嗅覚に訴えてくるこの強烈な異臭は、硫黄臭とよく勘違いされる、硫化水素の匂いだ!

なるほど、地形図を見ると、この近くに「温泉マーク」が描かれているが、開発されていない源泉があるらしい。

ついに藤七沢の源頭を極めつつある我々の前に、神秘の熱泉が姿を見せる!
次回、稀有なる廃道温泉を見逃すな!!