このレポートは、「日本の廃道」2010年5月号に掲載された「特濃廃道歩き 第27回 浪江森林鉄道 真草沢線」を加筆修正したものです。当記事は廃道探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。

林鉄界の秘宝! 幻の「三段インクライン」を解明せよ!

 このレポートは、「日本の廃道」2010年5月号に掲載された「特濃廃道歩き 第27回 浪江森林鉄道 真草沢線」を加筆修正したものです。当記事は廃道探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。

 

◆真草沢線分岐 7:54 【現在地】

 

 

橋を渡ると、道は一気に4方へ分かれる。このうち2本が軌道由来である。写真に赤線で描いたのが浪江林鉄の本線で、我らが真草沢線は黄線の通り直進する。また、この分岐の下を真草沢の水が暗渠で潜っている。

 

ここから始まる真草沢線だが、本線を機関車が走るようになってからも、最後まで人力で運行されたという。もっと具体的に言うと、まずは空のトロッコを手押しで一両ずつ押し上げ、帰りに材木を乗せたトロッコのブレーキを操作しながら下山してくるという、いわゆる乗り下げ運材が行われていた。

なお、このさほど広くもない合流地点で本線上の機関車列車へ積み替えをしていたとは考えにくく、荷を乗せたトロッコはそのまま畑川橋梁を渡って、申瘤の土場で積み替え作業をしたと思う。

 

7時55分、真草沢線へ進入開始!

 

 

 入った直後は自動車でも通れそうな緩やかな土道で、廃道にも見えず、歩き易かった。この先に何が待ち受けているのか、全く事前情報はない。探索前の調べでは、路線の長さも、終点の位置も、判明しなかった。ただ、途中のどこかに「三段インクライン」があったという事だけが記録にある。果たして、この穏やかなスタートを信じていいのか。

 

 

道の右側に真草沢の狭い谷があり、左は山。この山側の法面に、低い空積みの石垣を発見した。早速、新しい道ではないことを物語る発見。大丈夫。私は知っているぞ。お前が歴史ある軌道跡だということを。だから来たんだ。テンションが少し上がった。

 

 

 入口から約100m地点。道に笹が目立ち始めた。廃道の気配である。人が日常的に出入りしている感じがしない。と同時に、なんだか前方の道が、ゆるゆると、二段に分かれはじめた。上下に分岐しているとも表現できる(写真では分かりづらいだろうが、肉眼なら気付ける)。

 どちらが軌道跡なのか、即座に判断が付かなかったので、とりあえず藪が浅そうな右、すなわち下段の道を選んだ。

 

 分岐から50mほどで「選択ミス」だったことが確定した。どうやらこの道は、いま目の前に横たわっている取水槽らしい廃墟に通じるものだったようだ。行く手を阻む崖の向こう側に、朽ちた水路用パイプ(青矢印)が見えたが、そこも明らかに軌道跡ではない。

肝心の軌道跡は、頭上3mほどの位置で猛烈な笹藪に埋もれていた。これでさっきの分岐は上の道が正解だったと分かったが、同時に、そこが強烈な藪漕ぎを要する廃道であることも確定してしまった。四の五の言わず、笹を漕いで路盤へよじ登った。

 

 

笹藪を少し歩くと、真草沢を見下ろす軌道跡が鮮明に現れた。だが、踏み跡はない。路上には、ふっくらと盛り上がった落葉の堆積と、苔生した岩塊の散乱だけがあった。まだスタートから200mほどしか来ていないが、この時点で、軌道跡が廃道であることははっきり分かった。

 こいつは、なかなか骨がありそうだ。

 

 

 次回、美しいものとの出会いが!