「michi-co」2017年6月25日号連載記事

 

希望を与えてくれた熊本との交流
自然の力や摂理を伝えながら復興再生を

 

 

潮風に吹かれながら、海を望める高台に建つ「山田神社」。平成28年9月、この地に新社殿が遷座された。美しい入母屋造の社殿と石鳥居が凛とした佇まいで迎えてくれる。

山田神社は、相馬市と南相馬市にまたがる「八沢浦」と呼ばれる海を干拓して田んぼにした土地の総鎮守として、また干拓を成し遂げた功労者・山田貞策氏の偉業を後世に伝えるために、昭和16年に創建され、地域住民の心の拠りどころになっていた。しかし、東日本大震災による津波によって、この地で港地区と呼ばれる集落の約40戸がすべて流され、氏子46名が犠牲になった。その後、縁があり、熊本県立球磨工業高校の生徒たちが製作した社殿と鳥居を贈られ、平成24年2月、仮社殿として祀った。

「熊本の皆さんからいただいたのは仮社殿や鳥居だけでなく、復興再生への勇気と希望、夢でした」と話すのは、宮司の森幸彦さん。だからこそ、平成28年に起きた熊本地震に胸を痛め、感謝の気持ちを忘れずに永く寄り添うように支援し合っていきたいと考えている。

「海を農地に変えるのは人間の大いなる智恵ですが、自然の力や摂理に抗うことはできません。その結果どうなったかということも後世に伝えていかなければならないことの一つです」。森さんは、これからが復興の正念場だとし、相双地域の神社再建への尽力を誓った。

ふだんは無人の山田神社だが、毎年4月23日の例祭には参拝者でにぎわう。復興のシンボル「ぽっぽさん」のグッズは、例祭など特別な日に販売され、人気を集めている。

 

宮大工の養成コースを持つ球磨工業高校から寄贈された仮社殿と木製の鳥居。亡くなられた方々の御霊を慰めたいと、絵師の「はと」さんが描いた“鳥いっぱい鳥居”は、現在は神社の入口に建ち、癒やしてくれる

 

高台に遷座した山田神社から望む風景。明治期まで、この地はすべて海だったという。左手は震災前まで350ヘクタールの田んぼが広がっていた場所で、排水機場の近くにあった神社は流失した

 

「山田神社の海に面する崖上を、誰もが祈りを捧げられる場としたい」と願う森さん。おだやかな海と故郷を見守りながら、相双地域の復興再生に取り組んでいる

 

「手ぬぐい」(1,000円)や「お守りストラップ」(400円)など、かわいいぽっぽさんグッズは、例祭などの特別な日だけ、神社で販売する。手ぬぐいは、農家民宿「翠の里」(南相馬市鹿島区)や、野庵ホームページでも購入できる

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