東北奇譚巡り
ピラミッドに鬼伝説⁉ 摩訶不思議なまち、大船渡 ①
自然豊かな港町・大船渡
岩手県の沿岸南部に位置する大船渡市。三陸地方のご多分に漏れず、複雑に入り組んだリアス式海岸が、大小さまざまな湾を形成している。リアス式のもう一つの特徴は、海と山の近さである。海岸から直ぐに急峻な山々がそびえ立ち、ところどころで断崖絶壁を形成している。
そんな地理的特徴をもつ大船渡市には、一見では読めない難読な地名が数多く存在している。例えば越喜来(おきらい)・首崎(こうべざき)など。これらの地名には鬼にまつわる伝説が残されていた。今回はそんな大船渡市の地形と地名にスポットを当て、観光するだけでは見えない不思議な一面を紹介しよう。
これは、まさか! ピラミッド?
大船渡で「山」といえば思いつくのが五葉山。標高は1,340mあり、岩手県沿岸南部の最高峰である。春はツツジ、夏はシャクナゲが咲き誇り、花の名山としても知られている。山頂付近に鎮座する五葉山神社は大同年中に坂上田村麻呂が建てたと言われ、気仙地域の総鎮守ともされている。
そんな五葉山にはある時、摩訶不思議な疑惑が掛けられたことがあった。それはなんと「五葉山はピラミッドである」というなんとも奇天烈な解釈だった。この説を唱えたのは昭和の宗教家・酒井勝軍だ。
酒井は日本の様々な山々や地形において巨石群や石室状をもってしてピラミッド認定を下しており、五葉山も一九三九年に行われた彼の調査によりピラミッド認定を受けた。また、酒井勝軍は調査のなかで『竹内文書』に書き残された「ヒヒイロカネ」を五葉山にて発見したと発表した。
『竹内文書』とは、昭和初期に新興宗教の教祖・竹内巨麿によって公開された古文書で、超古代からの日本史が記されているといわれている。「ヒヒイロカネ」とは、その中に登場するかつて日本で栄えた高度な文明が活用していた伝説上の金属であり、金よりも軽くダイヤモンドより硬いという特徴がある。
それが、五葉山で見つかったというのだ。そして山頂付近の巨石群も高度な古代文明が形成した人工物であり「ピラミッドである」というのが酒井の主張である。五葉山に登ってみると緑が豊かな登山道は気持ちがよく、比較的軽装でも楽に登ることができるコースだ。
確かに、山頂付近には高さのある巨石郡が人為的に積み上げられたかのように立ち並んでおり、独特の雰囲気を醸し出している。五葉山がピラミッドであるかどうかは、学術的根拠はない酒井独自の解釈である。しかし、地形的な特徴や山頂の巨石群の荘厳さ、その眺めの美しさから、気仙地域の人々にとって信仰の対象であったことは想像に固くはない。
プロフィール
小田切 大輝
岩手県遠野市を拠点に活動する怪談語り部・作家。遠野で暮らしている際に聞き集めた現代の怪談・奇譚をまとめた『遠野怪談』を2024年4月に竹書房怪談文庫より出版。岩手県各地で怪談イベントに登壇している。

