このレポートは、「日本の廃道」2010年5月号に掲載された「特濃廃道歩き 第27回 浪江森林鉄道 真草沢線」を加筆修正したものです。当記事は廃道探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。
林鉄界の秘宝! 幻の「三段インクライン」を解明せよ!
このレポートは、「日本の廃道」2010年5月号に掲載された「特濃廃道歩き 第27回 浪江森林鉄道 真草沢線」を加筆修正したものです。当記事は廃道探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。
◆ 9:49 切り返しの沢
箱庭みたいな、美しいカーブだ。小さな沢を連続で2度跨ぎながら、ぐるりと進路を反転させている。橋台だった石垣が、遺跡のように残っていた。
こうして切り返して、九十九折りの2段目へ向かう。
すぐ下に、1分前に歩いていた路盤がある。
もう、空が近く感じられる。標高は400m程度だが、周囲に高い山がないために、このくらいでも高山の明るさがある。この程度の低山だと、単調なスギ人工林に覆われてしまった土地も多いが、この辺りは谷が険しく地形も入り組んでいるせいか、意外に植林地は多くない。探索には好都合だ。なにせ、景色に飽きづらい。
この谷は見覚えがあるはずだ。私にはもちろんある。数分前、この20mほど下の斜面を、今回と逆方向に横断している。そしてそのとき、目の前にある石垣を見つけ、興奮している。
さて、視線を谷の上方へ向けると、今度は3段目の路盤が横断しているのが見える。近いのでショートカットも容易だが、路盤を忠実に辿るのが楽しいので、そんなことはしない。
インクラインのような“裏技”に頼らずに山を登る、林鉄の通常のやり方が、こういう九十九折りりなのである。この冗長さも、林鉄の味だ。
再びの切り返し、180度のヘアピンカーブが現われた。急峻な斜面に、レールが敷設できる最低限の半径(おおよそ5m)を持ったカーブを据え付けるために、一部は地面を掘り下げた切り通しになっていた。こんなカーブひとつを取っても、作ろうと思ったら大変な仕事だ。
いやいや、よく登ってきたよ。
これは同地点から、真草沢の下流方向を見下ろしている。もう視線も届かなくなった谷底から、2本のインクラインで強引によじ登ってきたのが、この高さだ。
◆ 10:04 谷の3段目
2度見上げた谷を、3度目の横断。足元には、頬ずりしたくなるような可愛らしい石垣が続いていた。
この上にもう石垣は見えない。この横断で、最後か。
見よ! この九十九折りを!
かっこいいでしょ! 大好き。
頑張ったなぁ、この道。私も頑張ったけど、一番頑張ったのは、道だ。永い永い間、私のことを、こんなに綺麗な姿で待ってくれていた。頑張った。
インクライン、橋、隧道、九十九折り……。林鉄が、山と戦うための武器は、あらかた出尽くした。死力を尽くして、ここまで私を連れてきてくれた。ありがとう。
あ……
これは、
終わりっぽい。
次回、ついに終点へ