「michi-co」2017年3月25日号連載記事

 

震災の記憶を千年先まで伝える「千年希望の丘」

 

 

点在する丘を緑の園路がつなぐ。丘に立つと東に太平洋の大海原、西に蔵王の山並みを望む。そして目の前には東北の玄関口、仙台空港。まさに絶景のパノラマだ。

「千年希望の丘」は岩沼市が千年先まで人々の命を守ることを目指して整備する復興を象徴する丘だ。沿岸約10キロに、高さ9~11メートルの丘15基とそれらを結ぶ園路(緑の堤防)を築造。丘と丘を結ぶ園路に30万本の木を植える計画で、現在9基の丘が完成している。東日本大震災の際、県の岩沼海浜緑地の築山に避難して生き延びた人がいたことを教訓に、設計された。非常時は丘のてっぺんが避難場所となり、平地から約3メートル高く作られた園路は避難丘に導く誘導路等に活用され、全体は防潮林として津波を減衰させることを期待する。

宮城県内の被災自治体でもっとも早くプレハブ仮設住宅が解消するなど、「復興のトップランナー」と注目された岩沼市。丘の整備でも、コンクリート片など震災廃棄物を土台に有効活用したり、大規模な植樹祭ですでに25万本の木を植えたりと、スピーディーで意欲的な取り組みを展開した。

震災記録の伝承などを行なう「千年希望の丘交流センター」の鈴木晴彦さんは、「慰霊碑の鐘に込められた想いは、鎮魂の祈りと記憶の伝承、未来への希望」と話す。一帯は美しく整備された。しかし、よく見れば津波で倒された火の見やぐらや壊れたブロック塀など、確かにここにあった暮らしの痕跡も残る。過去を忘れず、希望をもって未来へ向かう――そんな気持ちにさせられる場所だ。

 

人と人が支え合う形をイメージした慰霊碑の中央の塔。高さは東日本大震災の津波と同じ8メートル。月命日には献花して鐘を鳴らす来訪者が多いそう

 

千年希望の丘交流センターでは、被災状況や復興の取り組みを展示し、語り部による案内も行なっている

 

過去4回の植樹祭には全国各地や海外から延べ約3万人が参加した。平成29年度も開催予定

 

「時間をかけて森が育つように、岩沼も着実に復興しています。ぜひ、いらしてください」と話す鈴木さん。奥に見える丘の頂上には、非常時にテントとして活用できる「防災四阿(あずまや)」やソーラー照明等を設置

 

東北お遍路巡礼地の標柱が建てられ、平成28年12月に除幕式が行なわれた

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