サイトアイコン 【東北「道の駅」公式マガジン】おでかけ・みちこWeb

サエノカミと生きる村 ①

東北奇譚巡り
サエノカミと生きる村 ①

秋田県にかほ市の道の駅・象潟(きさかた)には、一風変わったご神体を祀る「才の神神社」がある。そこに鎮座するのは、巨大な木製の男性のシンボルだ。その特異な光景に驚かされる来訪者も少なくないのではないだろうか。

「道の駅」にある「才の神神社」

「才の神」とは、悪霊や疫病の侵入を防ぐために村境などに祀られたサエノカミのことで、道祖神とも称される。無病息災や子孫繁栄などが祈願される対象として古代から伝わる民間信仰の神様だ。その形態はワラ人形や自然石など様々だが、男根型が最もよく知られている。

この「道の駅」にサエノカミが祀られている理由は、当地が「才の神」という地名であることに由来している。しかし同市には「サエノカミの聖地」とも言うべき場所がある。それは、「道の駅」から約6キロ東に位置する上郷地区だ。

鳥海山の北麓に広がる標高100〜250メートルの台地上に集落が点在し、多くの村の入口には男根型のサエノカミが祀られている。中でも特筆すべきは、上郷の最も奥に位置する横岡集落だ。

横岡(下村)のサエノカミ

約90軒の横岡は西から下村、中ノ下(なかのしも)、中屋敷、寺地(てらじ)の4つの組(町内)に分かれており、各組のサエノカミが村はずれの4か所に祀られている。それぞれ高さ50〜100センチ程の石製、木製のシンボルが数体〜十数体集められており、中には等身大のものもある。

毎年小正月の1月15日頃には上郷の各集落でサエノカミの行事が行われる。サエノカミの場所にワラ小屋を立て、お正月飾りなどと一緒にそれを燃やして一年の無病息災を祈願する。

この行事に併せて集落によってはナマハゲによく似た来訪神が各家を回る「アマノハギ」(石名坂)や、子供たちが新婚の家を訪れて嫁の尻を棒で叩く仕草をする「嫁つつき」(大森)などの風習もある。

横岡では小屋焼きの後、子供たちが各家々を訪れる「鳥追い」が行われている。国指定重要無形民俗文化財に指定されている横岡のサエノカミ行事を取材した。 

サエノカミに参拝する「中ノ下」の皆さん

1月15日の小屋焼きに向けて、1月11日午前8時からサエノカミの小屋建てが行われた。それぞれの組の住民たちが木の骨組みにワラを葺いて、古代遺跡に復元されているような小屋を作る。

幅150センチ、奥行250センチほどで、屋根の両側に「グシ」というワラの束を取り付けて2時間ほどで完成した。入口を封じると、ワラを束ねて作ったノサ(幣)を小屋の周りに付けた。これは家にいる男の子の数だけ作るもので、子孫繁栄、家内安全、五穀豊穣などの願いが込められる。

中ノ下組では、一人の男性が新しいサエノカミを3体奉納し、朽ちかけてきた1体を小屋焼きの際に一緒に燃やすという。最後は御神酒を供えて拝礼。あとは15日の小屋焼きを待つのみとなった。


プロフィール
小松 和彦

秋田市在住。工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主。民間信仰や花柳界を中心に秋田県の郷土史を研究している。共著に『村を守る不思議な神様・永久保存版』(KADOKAWA)、『秋田県の遊廓跡を歩く追補版』(カストリ出版)など。秋田魁新報電子版で『新あきたよもやま』連載中。

モバイルバージョンを終了