東北奇譚巡り
ピラミッドに鬼伝説⁉ 摩訶不思議なまち、大船渡 ②
地名の由来は鬼の亡骸!?
大船渡市三陸町越喜来。この越喜来という地名の由来には「鬼」がまつわるとされている。本来は「鬼喜来」や「越鬼来」と書いたなどとも言われ「鬼が喜んで来る場所」という意味だともいわれる。
この「鬼」というのは、東北にかつて住んでいた蝦夷(えみし)と同一視する説が根強い。五葉山の説明にも出てきたように、大船渡の地には坂上田村麻呂にまつわる伝説が残されている。坂上田村麻呂は朝廷より征夷大将軍に任命され、蝦夷を制圧するために東北を訪れていた。
征伐から逃れ、沿岸へと落ち延びた蝦夷たちが身を隠したのが越喜来であり、そのために「蝦夷(=鬼)が喜んで来た」というのが由来だと主張される。そして越喜来に隠れた蝦夷の酋長を、坂上田村麻呂が成敗し、その遺体を切り刻み海へと投げ捨てた。
その亡骸の頭が流れ着いたのが「首崎」、脚が流れ着いたのが「脚崎(すねざき)」、時間がたち骨だけになった残りの部位が流れ着いたのが「死骨崎(しこつざき)」であるという残虐な伝説が、一帯の地名の由来として言い伝えられている。首崎には白い灯台があり、岬からの眺めは隠れた絶景とも言われている。澄んだ三陸の美しい海と複雑な沿岸線を見下ろすことができる。
その土地に住んでいる人々にとっては、地名は地名以上の情報量をあまり持たない固有名詞かもしれない。ただ、一度興味を持って由来を探ってみると、土地の歴史や風習、文化に触れることが多分にある。ぜひ、大船渡の美しい景色と美味しい海産物と、少し不思議な一面を楽しみに訪れていただきたい。
プロフィール
小田切 大輝
岩手県遠野市を拠点に活動する怪談語り部・作家。遠野で暮らしている際に聞き集めた現代の怪談・奇譚をまとめた『遠野怪談』を2024年4月に竹書房怪談文庫より出版。岩手県各地で怪談イベントに登壇している。

