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駒止峠 初代車道【本編 第12回】

このレポートは、「日本の廃道」2012年8月号および2013年4月号ならびに5月号に掲載した「特濃!廃道あるき 駒止峠 明治車道」をリライトしたものです。
当記事は廃線探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。

所在地 福島県南会津町
探索日 平成21(2009)年6月26日

2009年6月26日 9:42
2番目の切り返しを

チョットだけショートカット

この自作の図を見て欲しい。図のような沢と道の位置関係で九十九折りがあるときは、偶数番目の切り返しについては簡単にショートカットできることが分かると思う。この図にある矢印は全てショートカットを示しているが、偶数番目の切り返しの前にいるときは、どこから下っても、ほぼ必ず下の段に到達することが出来る(つまり成功する)が、反対に奇数番目の切り返しに向かっている時にショートカットしようとすると、上手く下の段に辿り着けず、そのまま谷底に下りていってしまうリスクがあるのだ。

え? そんなことを考えながら廃道を歩いているなんて、意外に頭を使っていて驚いたって?(^_^)

というわけで、やっちゃった。 

あまりにひどいネマガリタケの激藪だったので、次の2回目(偶数番目)の切り返しを確かめることを断念し、直ちに道を外れて右の激藪斜面を下るショートカットを試みたところ、案の定これに成功した。まあ、ほんの5mほど下で3段目の道に拾われたので、もともと2回目の切り返しは、1回目の切り返しからあまり離れていない近くにあったのだと思うが。

今後についても、激藪で仕方がない場合に限り、このようなショートカットを取り入れていくぞ。生還することが大事だからな。

3段目の道を下流方向へ歩き続けること約5分。ここまでは相変わらずのネマガリタケ地獄だったが、その状況に待望の変化が現れた。ネマガリタケが“晴れ”てきたのである。そして普通の森のなかの風景へと変ってきた。当然私の安堵はとても大きかったが、願わくはずっとこの平穏が続きますように…。もう、あの藪には戻りたくない…。

余談だが、こんな激藪なので、ここまでの探索区間を逆に麓から峠を目指して登るのは極めて困難だと感じる。私は下り坂ゆえ重力に助けられた部分があるので、反対に辿る場合、藪の手強さはさらに増すはずだ。道を辿るのではなく、ショートカットに専念すればなんとかなるだろうが…。

藪の状況が改善したことで、やっと峠歩きを楽しもうという気持ちが戻ってきた。位置的にはまだたいして進めてはおらず、麓はずっと遠いままだったが、藪のために遭難するのではないかという恐怖と不安はだいぶ解消した。

それからまた少し進んだところで、何気なく路肩から下を覗くと、そこに4段目の道が見えていることに気付いた。そこも激藪ではないことを確認して安堵した。まもなく3回目の切り返しがあるだろう。

9:55
3番目の切り返し

ここまでの3段目の道は、途中から激藪より解放されて歩きやすくなったが、それでも長く感じられた。実際に経過した時間を見てみると、ショートカットを終えたところから13分間、同じ段を歩き続けていた。ここでやっと4段目へ移行できる。

田島側もそうだったが、やはりこの道の勾配は明治の車道らしくとても緩やかで、徒歩には過剰な緩やかさだ。それだけに、距離を進んでもなかなか高度が下がっていかない。こんなペースだと、下界まで辿り着くのにいったい何段の九十九折りが必要になるのか……、正直おそろしいな。たとえ激藪でなくても、相当の長期戦を覚悟する必要がありそうだ。

おおっ!

南郷側の下りに入ってから、はじめて石垣を見つけた! 4段目の道から見上げたところに見つけたこれは、直前まで歩いていた3段目の道の路肩を護る石垣だ。そこに居る時には気付かず、下の段から見上げることで発見した。

使われている石のカタチや積み上げ方の特徴は、田島側で見た石垣と変わるところが無さそうだ。やはり同じ道、同じ人たちが作ったんだろう。この様子だと今後も現れそうだな。よく注意して進もう。

道の勾配はひたすらに緩やかだが、それでも見上げる3段目との高度差は勾配の倍の速度で離れていく。石垣の発見に喜んだところからおおよそ2分後に再び見上げてみると、まだ石垣の続きが見えたが、だいぶ上方に離れていた。近くに見えるのは自然の岩場で、上の方にうっすら見えるのが、3段目の路肩だ。周りの地形は急峻で、直接上り下りするのは相当に骨が折れる傾斜がある。そんな急斜面に必要な道幅を確保するために、路肩に長い石垣が築造されていた。

4段目を歩き始めて約7分後、眼下に5段目が見え始める。さらに下には小屋沢の谷底があるのだが、まだ近くはないようで、白く明るく見える底の方からは水の音も聞こえてこない。一生懸命に道は九十九折りで谷底へ下っていこうとしているが、今のところは実際に近付いている感じはほとんどしない。本当に先が長そう。

九十九折り、同じような道の風景が続いているので、この辺から写真撮影も最低限度となり、先へ進むことを優先する巡航体勢へと入った。これから特に目立った変化とか、大きな疲労がなければ、立ち止まらず進んでいくつもりだ。

10:05
[前の切り返しから10分後]
4番目の切り返し

これは4番目の切り返しを越えた直後で道を塞いでいた、巨大な倒木。倒木なんて廃道では珍しくないし、オブローディングの障害物としては基本的に「容易」な部類だが、この倒木はとても太く、しかも上を越すにも下を潜るにも半端な高さにあるせいで、少し私を手こずらせた。(結局、下を潜った)

序盤のような笹藪の脅威は完全に離れたようだが、依然として路上の緑は濃かった。踏み跡らしいものはまったくなく、刈払いも見られない。これは完全なる廃道だ。この場所は特に灌木が密に生えていて、ちょっと苦労させられた。

10:17
[前の切り返しから12分後]
5番目の切り返し

またしばらく歩いて、カーブの内側に低い石垣を擁する5番目の切返しを通過した。さっきからさらっと時間経過を書いているが、1段1段がかなり長くなってきていることに注目して欲しい。この5番目の切り返しへの到達には4番目から12分を要しているが、途中で足を止めていないので、最低でも300mは歩行したと思われる。なかなかスパンの大きな九十九折りになっていることが分かる。

これから先も、こんな風に、時間と歩行距離が増え続けるのを、皆さまには、生ぬるく見守っていただきたい。はっきり言って、当分、風景的な見せ場はない。だが、これをばっさりとカットしてしまうと、この廃道のリアルは伝わらないだろう。この長さこそは、この峠道の見逃せない個性だった。

次回、ひたすら下り続ける。
ぐねぐねぐねぐね。

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