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男鹿森林鉄道 消えた隧道 【本編第11回】

このレポートは、「日本の廃道」2008年12月号に掲載した「特濃!廃道あるき vol.18」をリライトしたものです。
当記事は廃線探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。

所在地 秋田県男鹿市
探索日 平成20(2008)年12月3日

12:56 「西口」へ向けて移動中

クルマに戻った私の姿、それはそれは本当に酷いものであった。全身泥まみれという言葉があるが、実際に大人がそうなることって、ほとんどないと思う。だが、私はそうなっていた。髪の中まで土や砂が入っていたし、挙げ句の果てに帰り道で雨に降られたせいで、べっとりと湿って、払って落とせなくなってしまった。

そんな私が、相棒である細田氏のマイカーの助手席に収まろうというのだから、普通なら絶交されても文句は言えないところだ。まあ、我々の場合、汚れるのは珍しくないので、さすがに今回の汚れ方に閉口はしたが、シートにゴミ袋を敷いて座って発進した。一応着替えは持っているが、まだ着替えるわけにはいかない。

まだ探索は終わっていない。

隧道の西口がどうなっているのかを知りたいのだ。そして、このあとの展開次第では、もう一度、あの恐ろしい洞内探索が再現されるかもしれない。着替えるのはまだだ。

クルマに収まった我々は、この地図に示した黄色い線のように移動して、隧道の西側へ向かうことにした。開集落までは、来るときにも通った道だが、そこから先は、市道、旧男鹿林道、増川林道という順に進む。どの道も青年時代に自転車で走ったことはある。

写真は、開集落から防衛省専用道路へ抜ける市道。未舗装の砂利道で、道路脇の草が刈られておらず、クルマに細かな掠り傷が残りそうな道だった。約800m続く。

この背景に見える山が男鹿半島の最高峰の男鹿三山で、一番高い山頂を本山という。本山の山頂には日本海に睨みを利かせる航空自衛隊のレーダー施設があり、麓に加茂分屯基地がある。

次は防衛省専用道路、別名、男鹿林道だ。国道101号と本山山頂のレーダー施設を結ぶ、高低差700mにも及ぶ秋田県屈指の山岳道路である。今回利用するのは麓の一部の区間だけで、近年舗装された。

なお、この写真の場所の辺りが、先ほど探索した隧道直上の地上に当たる。防衛省の関係者は、この道路の地下がどういう状況になっているかを、把握しているのだろうか。たぶん知らないだろうな。

右図は、前の回でもご覧いただいたが、隧道の推定断面図だ。私が辿り着いた洞内の巨大な竪穴式崩落は、洞床から見て20mくらい高い位置まで達していた。あの崩壊地は隧道の中間地点付近とみられ、最も土かぶりが大きい。そして、ちょうどその辺りを防衛省専用道路は通っている。

隧道と道路の高低差は、せいぜい30m程度とみられるので、現在では道路の地下、わずか10mくらいのところまで竪穴が到達している恐れがある。冗談ではなく、いずれは陥没事故となる恐れがあると思っている。まあ、探索したのが平成20(2008)年で、これを書いている令和4(2020)年まで、そのようなニュースは流れていないが…。

見た目は普通の道路だが、「ここは防衛相専用道路」である旨を記した看板が路傍の所々に設置されている。特に通行規制はないので、一般車両も通行可能だ。

尾根上を走る道から右折して増川林道に入ると、すぐ下り坂となる。この道路も未舗装で、あまり使われていないのか、ガレ気味だ。林道は、「なまはげ伝承館」や男鹿三山信仰の拠点である真山神社がある上真山まで通じている。

昭和28年の地形図を見ると、今回探索している隧道を通っていた男鹿林鉄仙養坊支線は、真山神社の近くまで伸びている。現在の増川林道とは一部重なっていないようだ。

今回の探索は隧道に特化したので、仙養坊支線の終点側の探索は、今後の課題だ。

魔の隧道、果たして西口の現存はいかに ?!

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