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茂浦鉄道 【第7回】

『このレポートは、「日本の廃道」2013年7月号に掲載された「特濃廃道歩き 第40回 茂浦鉄道」を加筆修正したものです。当記事は廃線探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。』

幻の大陸連絡港と運命を共にした、小さな未成線

所在地 青森県東津軽郡平内町

探索日 2010/6/6

◆ 7:26 (再び)最初に見つけた掘割り


衝撃的なファースト遭遇地点となった杉林の掘割へ戻ってきた。我々は最初、茂浦集落からここまで林道を登ってきたのであるが、帰りは、茂浦鉄道の未成遺構であることが確定したこの掘割を、隧道と反対方向(画像の矢印の方向)へ辿って集落を目指す。これまで不明だった、茂浦集落と隧道を結ぶルートを特定するために!

よし! 幸先上々! 左に見える轍が登ってきた林道だが、右側に鬱蒼とした暗がりに延びていく、怪しい掘割が続いているのを発見した。

唯一の事前情報だった『幻の茂浦鉄道』の記事には、茂浦から隧道までの区間は、レールを敷設する前段階まで工事が進捗していたとあったが、ここにあるのがそれなのだろう。おおよそ100年も前の工事跡だと思うと、ただの掘割であっても、なんかこう…ゾクゾクするものがある……。

林道を捨て、腰丈の笹藪と化している掘割に突入する。ガサガサ進んでいくと、掘割は最初から見えていた数十メートルだけで、そこを抜けると、今度は平らな森の 中だった。相変わらずの笹藪だったが、よく見ると、前方には周囲の林床より微妙に高い土地が直線的に続いていて……、間違いなくこれは人工的な「築堤」であった。

鉄道土木の代表的2大構造物といえる掘割と築堤が、早くも出揃った。

◆ 7:33 笹藪の築堤

100年近い歳月がそうさせた面はあるだろうが、随分となだらかな築堤だった。傾斜をキツくしても崩れないようにするには、石垣のような土留工を用いるのが普通だが、ここにはそうしたものがなく、手間のかからない作りになっている。とはいえ、その分だけ積み上げた土砂の量は多かったはずで、古い時代の人海戦術的工事が連想された。

路盤は北方へ向かっている。高森山(この山名は旧地形図にのみある。最近の地形図では標高236mの三角点があるだけの山)の西斜面を、南から北へ向かって、緩やかに下りながら横断している。

目指す茂浦集落は西方なので、どこかで進路が変わるはずだ。

緩やかな築堤は、次に杉の植林地に入った。同時に、林床を覆っていた笹がなくなり、シダを中心とする暗所の植生に置き換わった。歩き易くて助かる。

優しい木漏れ日に照らされた、美しい直線の築堤。行く手は、風化して埋れかけた小さな掘割へ通じていた。鬱蒼とした植林地の林床に、こんな人工的な構造物が眠っていた。明治鉄道工事の幻のような風景だった。深い森のため、航空写真では決して見つけられない、地表をつぶさに歩かなければ決して見つけられないものが、ここにあった。

前の画像の矢印の位置を築堤上から覗き込むと、林床に刻まれた、このような小さな「溝」があった。そこに水の流れは見当たらないが、築堤を潜るように刻まれた溝は、自然のものではあり得なかった。

「溝」が築堤を潜るところには、こんな小さな穴が口を開けていた。大きさは、腕がちょうど呑み込まれる程度。獣の巣穴のような気色の悪い穴だったが、私はこれを覗き込む必要があった。なぜなら、これが人工的な疎水路であるならば、土以外の材質で作られているはずだからだ。今回の探索で初めて、土工以外の遺構を目にする可能性が……!

 次回、続々現われる、幻の鉄道工事の痕跡を一つも見逃すな!

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