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茂浦鉄道 【第5回】

『このレポートは、「日本の廃道」2013年7月号に掲載された「特濃廃道歩き 第40回 茂浦鉄道」を加筆修正したものです。当記事は廃線探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。』

 

幻の大陸連絡港と運命を共にした、小さな未成線

所在地 青森県東津軽郡平内町

探索日 2010/6/6

◆ 6:47 謎の掘割り

 

この溝は、なんだ!

急坂の林道を進んでいくと、鬱蒼とした杉の植林地が現われた。地形は丘陵的で、これまでよりなだらかだ。道は、森の中を真っ直ぐ、茂浦と平内を隔てる尾根の方角へ延びていた。それは、我々が探し求める、茂浦鉄道の隧道が建設されたとみられる方角でもあった。

この森の中で我々は、1本の大きな溝を見つけた。それは林道の北側に隣接して並んでいた。写真は、来た方向を振り返って撮影した。足元にあるのが林道で、右にあるのが問題の溝だ。

我々は、ついに茂浦鉄道の遺構を発見したのではないか。しかも、これが遺構だとすると、土工の一種である掘割構造物であり、事前情報にない新発見となる。

溝を追跡し、正体を突き止めるぞ!

初めて見出した、直接の手掛かりであることが疑われる溝。前後とも調査するが、まずはこのまま進行方向にある尾根へ向かおう。

そこには、茂浦鉄道唯一の隧道が我々を待っている可能性がある。

林道と溝ははじめ並行していたが、すぐに林道が溝を横切り、左側の斜面を登っていなくなった。残された溝は、登りも曲りもせず、尾根の方向へ黙々と進んだ。

溝は次第に、周囲の地形の高さにも取り残される。溝は深くなり、底は泥濘みに変わっていく。だが、水の流れはない。明らかに自然の渓流ではない。どこまでも人工的な溝だった。

 

ヤブ濃い!

初めて溝と出会った地点から、既に100mは尾根方向へ辿っている。笹藪が強烈になってきた。足が地面につかないほどの猛烈なヤブに、たちまち地形を見失う。当然、溝も見えない。

だが、この溝が我々の求める者であるならば、軽々しく進路を曲げることはないはずだ。曲がっているとしても、それは極めて緩慢であるべきで……、我々は視覚に頼らず、感覚で直進を続けた。

 

水面がある!

猛烈ブッシュを根気よく突破していくと、前方やや右寄りに思いがけない「色」が現われた。そこには深淵を思わせる群青色があった。小さな沼だった。溜め池というほどのものではない。溝に溜った雨水が長年排水されず、ついに固定された物のように見えた。

だが、冷静に考えれば、こんなに小さな沼が晴天下に永続するには、理由がなければならない。つまり、今も水の供給が止まっていない事を示していた。

そこで私は、これまで幾度も目にしてきた探索中の光景を、この水に重ねた。

隧道より湧出する地下水の存在……。

小沼の先の溝の内部には、案の定、細長い湿地帯が続いていた。ただし、まともに侵入すれば底なし沼の危険があったので、脇の笹地を掻き分けて先を目指した。

ここは既に谷底で、行く手は遠からず尾根へ突き当たる予感があった。

ここに隧道があるならば、遭遇はもう間近である。

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完全に確信した。

これは人工の地形だ。

周囲の地形に対し、圧倒的に不条理だ。間違いなく、人間が、意思を持って、掘り抜いたものだ。しかも大規模だ。この先にあるものは、隧道のほかには考えられない。

 

隧道前地形!

直線的な掘割りが鮮明化した。

隧道の有無が確定するまで、あと10歩ほどか。

次回、隧道の有無が明らかに!

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