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浪江森林鉄道 真草沢(まくさざわ)線【第12回】

 このレポートは、「日本の廃道」2010年5月号に掲載された「特濃廃道歩き 第27回 浪江森林鉄道 真草沢線」を加筆修正したものです。当記事は廃道探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。

林鉄界の秘宝! 幻の「三段インクライン」を解明せよ!

 このレポートは、「日本の廃道」2010年5月号に掲載された「特濃廃道歩き 第27回 浪江森林鉄道 真草沢線」を加筆修正したものです。当記事は廃道探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。

 

◆ 9:06 隧道出現!

 

 

 

 第1インクラインの上端から始まる「中部軌道」の跡。そこを100mほど西へ進んだ地点に、素掘りの隧道が発見された。インクラインが作られたのと同時期に掘られたであろう、古い隧道だ。内部が崩壊し、閉塞していても不思議はない。

 

 貫通していることを願いながら、持参したマグライトを点灯させて、洞窟の入口のような坑口へ近づいていった。

 

 

 よっしゃ~!! 貫通している!

 

 それにしても、驚くほど狭い。天井が高く見えると思うが、これも幅が狭すぎるせいである。実測はしていないが、幅1.8m、高さ3.6m程度と目測した。木材を満載したトロッコが潜り抜けるために、幅に対して天井が高くなっている。林鉄用らしい特徴ある断面だ。

何より興奮したのは、洞床の柔らかい土に、枕木を敷いていたことで出来た鮮明な凹みが残っていたことだ。屋外では水に流されたり、落葉や土に埋もれてしまったりで、すっかり消えてしまった枕木の跡が、隧道の中にだけ残っていた。かつては、この等間隔に列べられた枕木の上に、軌間762mmのレールが敷かれていたはず。これらの窪みは、インクラインの上部にも確かにレールが敷かれていたことを証明していた。

 

 

 ライトを点灯させる必要を感じない、全長わずか15mほどの短い隧道は、内部にはほとんど崩れもなく、良好な保存状態に見えたのだが、それでも素通りはさせてくれなかった。

 出口が外側から土砂に埋もれかけていて、ほとんど閉塞寸前の状態になっていた。天井よりも高い土砂の山に大量の落葉が厚く堆積していて、まるで新雪の斜面をよじ登るみたいな手応えだった。天井付近に僅かに残る開口部は狭く、背負っていたリュックを一度降ろさねば出られなかった。

 

 ふぉ~!

 脱出成功!!

 振り返った出口は、洞窟どころか、ほとんど獣の巣穴のようだ。

これを書いているいま(2019年)は、探索から9年も経過しているので、もう開口していない心配もある。

 

辛くも隧道を潜り抜け、私はさらなる奥地へ歩みを進めるパスを手にした。果たして中部軌道はどこまで続くのか。このような地図にない“未知”を切り開くのは、廃道探索の一番の醍醐味だった。

 

 短い隧道を抜けると、また落葉に埋もれた軌道跡があり、周囲も見慣れた雑木林の風景だったが、

あれれ? こんなに谷底に近い所に、私いました?

 

 

 ごく小さな尾根を隧道で抜けただけで、隧道前は遙か下方に見ていた真草沢の谷底が、一気に手が届きそうなところまで近づいてきた。自分は上っても下りてもいないので、もの凄い勢いで沢が上がってきたのである。

 俄に信じがたかったが、現実だ。インクラインの力で、たいへん苦労して50mほど遠ざけた真草沢が、今はまた軌道のわずか10mほど下に近づいた。インクラ

 

インから150mも来ていないのに。

 

 

 地形図をよく見ると、真草沢の本流は、隧道がある小さな尾根の下辺りで、もの凄いペースで高度を上げているようだった。そこには見応えのある滝があるかもしれないが、探すのは私の役割ではないだろう。君子危うきに近寄らずだ。

 

 

 その後、あっという間に真草沢は私の隣に帰って来た。

 

なんか、あんなに苦労したインクラインの攻略が、真草沢の前では一時しのぎの戯れ事に過ぎなかったと思い知らされたようで、少し悔しかった。真草沢は一度、鉄道が山を登ることの苦労や、インクラインを生身の足で登る苦労を、味わった方がいいだろう。

 だが、落胆はない。これほど激しい地形に耐えて、なおも奥地を目指した林鉄が、より一層愛おしく思えたからだ。愛が深まった。これは大切なこと。それに、軌道もこうなれば“次の一手”を放つしかなくなるに違いなかった。それが楽しみだった。

 

 

軌道が放つ“次の一手”とは、もちろん……。 次回へ続く!

 

 

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