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まいにち・みちこ【東北 道の駅 日刊マガジン】

図書館。その響きからどんなことを想像するだろうか。電子書籍が当たり前の時代においても、印刷された本は今なお健在で、紙の匂いや手触り、頁をめくる仕草までもが愛おしく感じられる。本記事では青森県内の個性的な公立図書館を中心に取材しながら、地域の人々に愛され続けてきた図書館の魅力に迫る。

Vol.3 タイムトリップへの誘い、弘前市立弘前図書館

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まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/83469527/20114

桜の名所・弘前公園には、桜の開花とともに毎年、可能な限り足を運ぶ。

弘前城天守閣のある本丸を中心に52品種・約2,600本の桜があるというが、やはり圧巻は、ソメイヨシノ! いくら遅咲きの桜も美しいのだと言われても、こればっかりはどうしたって譲れない。桜色に染まる空を見上げながら歩く喜びは、比べるものがないほどなのだと思ってしまう。

日が暮れかける弘前公園・外堀の桜並木
公園の中の恋人たちに人気のスポット

 

少々頑固な紳士のようで

そんな、観光客で賑わう公園の喧噪から離れて向かったのは、弘前図書館だ。かつて公園内にあったという図書館は、平成2年に観光施設・追手門広場の一角に新築移転され現在に至る。お洒落でスタイリッシュな図書館流行りの昨今ではあるが、弘前図書館は少しばかり違うようだ。人間に例えるなら、少々頑固な紳士のような印象。当時としてはモダンな、様式美さえ感じられる図書館だから、古くからのファンはきっと多いはず。弘前公園とは目と鼻の先にありながら、普段と変わらない静寂を貫く館内は、まるで別世界。今年は思いのほか暑い日が続いた桜まつり期間だったけれど、図書館のロビーはひんやりとしていて、少しばかり身が引き締まるようで、桜への熱い想いをしばしクールダウンさせるのにもってこいの場所だ。

再び訪ねたのは、目にも鮮やかな新緑の季節。夏の深緑と違って、若々しいグリーンが何とも清々しく、一年中で一番美しく、輝かしい季節と言っていい。

追手門広場から追手門をのぞむ
広場側からのアプローチ

 

そして、弘前図書館。

正面玄関は追手門広場の反対側にあるけれど、そこはやっぱり、多くの人たちと同じように広場側からが入りやすい。実は、広場には意外な建物がある。歩を進めると、赤い八角形の双塔が特徴的な洋館・旧市立弘前図書館が真正面に見えてくるのだ。一時は弘前大学の近くで下宿やカフェだったこともあるこの洋館は移築され、現在の図書館の隣にひっそりと佇んでいて、新旧の図書館が隣合わせとは、ちょっとしたタイムトリップ感覚が楽しめる。広場にはほかにも、青森県内初の私立学校・東奥義塾高校の旧東奥義塾外人教師館もあって、洋館の1階ではお茶やアップルパイがいただける。そんなロケーション。

移転を重ねて現在の場所へ・旧市立弘前図書館
写り込む旧市立図書館の塔、インスタ映え?
正面側からも旧図書館が見える

 

“本の森”へようこそ

外光とのギャップに目が慣れると、少しずつ図書館のレイアウトが見えてくる。弘前図書館の特徴は、縦に伸びる吹き抜けだろうか。トップライトから光が降り注ぐ様子は、教会のステンドグラスを想い起こさせる。さすがに色硝子でこそないが、弘前が教会の街であることを意識させられるデザイン。考え過ぎだろうか…。

1Fロビーは2つの入り口を貫くレイアウト・向かって左に長椅子がある

 

やはり縦に配された長椅子には、いつも誰かが座っていて、思い思いの時を過ごしている。ちなみにこのロビーでは飲食が許されている。一日中図書館にいたい本の虫にとっては、何とも居心地の良いスペースだ。

初めての図書館に足を踏み入れる時は、好奇心でいっぱいになる。それは、外から見ただけではきっとわからない魅力が、どんな図書館にもあるからだ。

 

― さあ、深呼吸して“本の森”へ踏み出そう! ―

 

光と影のコントラストが際立つ閲覧室が、左右に伸びている。

国立大学を抱えた学都らしく、蔵書数は50万冊にも及ぶと聞く。そこには、見渡す限りの“本の森”が広がっている。今年で28年になろうという重厚感のある趣。照明も書架もお洒落というわけではないけれど、どこか懐かしい記憶とリンクする。

迷路のような“本の森”をさまよう

 

手に取りやすいようにだろうか、下段が内側に入り込むような造りの書架に囲まれていると、一瞬、“本の森”に迷い込んでしまったかのような錯覚に陥る。日常と非日常が混ざり合う特別な感覚は、窓の外にも続いている。

往時を見つめ続けてきた洋館と、同じ時間を共有する不思議。そんなことに思いを馳せながら、本を読むという喜び。

外とは一線を画す、静かで奥深い時間がゆったりと流れていく。

ソファ席は気軽にくつろげるスペースだ

 

実は、大学病院を有する弘前らしい一角がある。「医療情報コーナー」。青森県はもう何年も短命県ワースト1位という不名誉な記録を更新し続けている。その死因のトップががん。県は医療機関と連携して“短命県返上”を目標にさまざまな活動を行っているが、弘前大学はその中心的役割を担う。そして、がん予防やデータの先進地を目指す弘前の図書館らしく、ここでは小さいスペースながら、新しい情報や知識、それに患者さんやご家族へのサポート情報を掲示することで、“短命県返上”への一翼を担っている。

まずは、がんを知ることから始めたい

 

昨年4月、弘前図書館には隣の郷土文学館とともに指定管理が導入された。全国規模で図書館運営を担う「TRC(図書館流通センター)」、弘前市のコミュニティFM「アップルウェーブ」、それに「弘前ペンクラブ」の3者が、共同事業体となって運営する図書館として再スタートを切ったのだ。弘前図書館はそれぞれの分野、サービスの向上・ラジオでの情報発信・文学からのアプローチによって、多くの人に愛される新しい図書館に生まれ変わろうとしている。

 

お気に入りの席はありますか

休日にはたくさんの人が訪れるという図書館。この日は平日にもかかわらず、結構席が埋まっていて、大きな窓に面した洋館や、緑が鮮やかな庭園を眺める席は、ほとんど空きがない状態だ。見落としがちではあるけれど、明治・大正時代に弘前の街を彩った建物14棟を、10分の1のミニチュアサイズで再現した散策路もあって、やはりこの窓辺からのぞけるのが楽しい。

洋館をのぞむ特等席のひとつ
ミニチュア散策路
飴色の床に光が映り込む、緑の植栽がまぶしい!
窓越しにカーブを描く書架

 

子どもたちの席も可愛らしい。建物のカーブに合わせて設えられたテーブルや、まん丸のテーブルは、大人でも座ってみたくなるし、ボランティアによる“おたのしみおはなし会”や紙芝居が催されるこどもコーナーでは、赤いリンゴのドアが、お話し好きの良い子たちを待っている。

子どもコーナーの一角
可愛らしい立体POPが好奇心をくすぐる
りんごのドアの先に…
ここは子どもの王国!?

 

好奇心のままに“本の森“をさまよっているうちに、小さな隠れ家を見つけた。書架と書架の間に設けられた、10席ほどのカウンタースペース。近づいてみると、大学生らしい男の子が一人、真剣なまなざしで本の世界を旅していた。

探していた席を見つけた!

 

はるか往時に想いを馳せる

実は、受け付けカウンターの右側に階段がある。おそるおそる上がってみると、そこは調査室。辞書類や地方新聞の東奥日報、弘前の新聞社・陸奥新報の製本された保存新聞が並ぶ。さすが日本一のりんごの街らしい「りんご資料」の奥にあったのは、藩政時代の日々の出来事などを綴った7,800冊にも及ぶ「藩庁日記」だ。書架4、5面ほどを埋め尽くす津軽藩の古文書は、もちろんレプリカではあるけれど、手に取って読むことができる。書架に並ぶのは国元で書かれたものだが、奥の書庫には上屋敷で書かれた江戸日記があり、これも室内で閲覧することができるのだ。江戸時代前期から幕末に至るまでの記録がほぼ欠けることなく現存しているのは、とても珍しいのだという。

明治の洋館を眺めながら、津軽藩の日記を紐解くという贅沢!

ちなみに「藩庁日記」はすべて当時のくずし字で書かれている。

いつかチャレンジできるかはさておき、しばらくは文字面を眺めながら往時を偲ぶ。そんな楽しみ方があっても、いいかなと思うのだ。

いつかスラスラ読んでみたい
2階はレトロモダンな雰囲気

 

あなたは、どんな場所で本を開くのだろう。

私は本に囲まれた窓辺がいいな。できれば小さな、はめころしのレンズのような窓があって。読み疲れたら窓のずっと遠くに広がる、プラモデルのような世界を眺めるだろう。そんなことを考えながら、春の昼下がりを過ごしている。

弘前図書館の中で一番好きな場所!

 

ふと、弘前城の天守が見たくなった。帰りは、追手門を抜けて真っ赤な欄干の下乗橋を渡って…。それとも、少し遠回りして元寺町にあるバニラアイス色の弘前教会に会いに行くのもいいかな。弘前図書館へは地下の駐車場を利用するという手もあるけれど、せっかくなら、街中を巡りながらゆっくりと訪ねたい。

<弘前市立弘前図書館>

開館:1990年7月
蔵書冊数:約500,000冊

住所:青森県弘前市下白銀町2-1
電話:0172-32-3794
開館時間:月〜金/9時30分〜19時
          土・日・祝/9時30分〜17時
休館日:毎月第3木曜日(祝日の場合は直後の平日)、 12月29日〜1月3日・蔵書点検期間

http://www.city.hirosaki.aomori.jp/tosho/

 この記事を書いた「マイみちスト」
岩手県雫石町生まれの父と、秋田県大館市生まれの母を持ち、青森県青森市で生まれ育った津軽と南部のハーフ。キャッチコピー、エッセイ、自治体のパンフや要覧、CMコメントなど幅広いラインナップで営業中。趣味は美味しい料理でお酒をいただくこと。

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