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第13話:人生を生き抜く知恵はすべて運動会で学んだ

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教員として過ごした三十五年間を経てなお、子ども達や先生方、保護者の皆さんに伝えておきたいことが少なくありません。その思いで自費出版した「お天道様は見ています〜校長先生のおはなし〜」の続編やこぼれ話をお伝えいたします。お子さんと一緒に読んでみたり、かつての自分を思い出したりしながらお付き合いください。
まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/76954238/20039

東北、北海道では8割近くの小学校が春に運動会を行っているのだそうです。お子さんの学校の運動会はいかがだったでしょうか。あるいは、これから行われる運動会を楽しみにしているのでしょうか。今日は、保護者やご家族向けに運動会についてのお話をいたしましょう。

 

運動会は、明治の初期に海軍兵学校で始まり、中期には小学校にも広まったと言われています。以来、運動会は現在まで綿々と続く一大行事です。保護者にとっては、全力で競技するわが子の可愛さに拍手喝采したり、成長を喜んだりと楽しみなイベントであるかもしれません。しかし、子どもにとっては家族総出で自分を応援しに来る運動会に自ずと意欲は高まり、力が入ります。級友と競い合って優位性をアピールする格好の場であり、年に一度の真剣勝負なのです。そして、保護者の予想以上に、運動会は重要な学びの機会なのです。

 

運動会における学びをいかに効果の上がるものにするかは、それぞれの小学校の運動会に対する考えと取り組みによるのです。運動会までの二週間は、校内を運動会一色にして、一丸となって運動会成功を目標に盛り上げたいものです。仮に体育の時間が多くなったとしても、あとで調整すればいいことで、中途半端にしては、子どもの伸びる芽を十分に伸ばし切れないということにもなるでしょう。

 

まずは徒競走。1等賞獲得のためにゴールめざして疾走。この競い合いが大事です。全力を出し切った結果は、1位になる子、ビリになる子、当然順位が分かれます。しかし、それぞれが正々堂々と全力を尽くした結果であることを子どもたちは受け入れるのです。何十年か前でしょうか、優劣をつけてはわが子がかわいそうと、ゴール前で一緒に手をつなぎ、全員1位などということがありました。そんなことでは、ひ弱な子どもに育ってしまいます。

当然ながら、足の速い子は俄然張り切ります。運動会の華、紅白リレーの選手に選ばれようものなら、とてつもない優越感に浸ります。その子は運動会では主役になれるでしょう。しかし、算数や図工、音楽といった教科にも優れているとは限らないのです。こうして子どもは、人には個性があること、得手不得手があることを理解するのです。

 

フライングは、1年生であっても認められません。認めてはならないのです。何度でも厳格にやり直しをさせます。そうして、競技にはルールがあり、それを守らなければ成立しないことを学ぶのです。

しかし、徒競走が苦手な子にもチャンスレースという救いの手は差し伸べられます。負け続けるということはないのです。必ず、チャンスは巡ってきます。人生も同じです。いつか、明日の大逆転があることを信じて、前向きに生きて欲しいものです。

 

おじいちゃん、おばあちゃんもその昔行った定番種目は玉入れ、綱引きです。仲間とともに勝利めざして一心不乱に力を合わせて競技に没頭します。この集中力と、結集力によって、全力を出し切ることの爽やかさや仲間と協力し合うことの大切さを実感するのです。

昨今は、玉入れとダンスを交互に繰り返す玉入れ競技が大流行ですが、可愛さの演出が目的のようで、私はあまり賛成できません。頭上の籠をめがけて一つでも多く、とひたすら紅白玉を投げ入れる無心さこそ、子どもらしさであり、子どものよりよい成長に必要な瞬間なのです。その大切な時を保証してあげたいものです。

もう一つ言えば、玉入れが終わった後、「次はお片付け競争で~す!」と、競技を終えたばかりの主役たちに後片付けをさせることが多いのですが、

その言葉にウソはないのか?

といつも疑問でした。お片付け競争とは言いながら、それは点数の入る正式競技ではないのです。

「競争という言葉はやめよう、子ども達にウソをつくことになるから」

と、言うのですが、

「校長先生、それは考えすぎです」

と返す教員も少なくありませんでした。しかし、そうでしょうか?たった今、競技を終えた子どもたちに、その純真さを利用して片づけをさせるということに、私はどうしても抵抗があるのです。私たちは子どもを指導する立場です。だからこそ、その前提として、子どもへの深いリスペクトがなければならないと思うのです。

 

さて、話を戻します。応援合戦です。子ども達は、機械的に赤と白に等分されます。1組は赤、2組は白とか、クラスの半分を赤白に分けるという風に。ですから、昨日の友は今日の敵です。しかし、偶然に出来上がった組団でも、運動会当日までに連帯感は高揚します。子どもは本番当日、喉を枯らして仲間に声援を送り、優勝めざして応援歌を絶叫するのです。応援合戦にも優劣が付けられ、大きな得点が入るのでなおさら大応援合戦となり、迫力十分です。

 

閉会式では、結果発表があります。ついさっきまで、得点版の点数で一喜一憂していたのですが、いつの間にか得点版が空白になっています。子ども達の期待を高める先生方のこのような演出はとても大事です。子ども達は、固唾を呑んで得点発表に聞き入ります。これまでなかった静寂が校庭を覆います。「○組優勝!」の一声で校庭には大歓声が沸き上がります。子ども達がこの一瞬をめざしてきた取り組みが一気に爆発するのです。

 

優勝旗を手にした6年生の応援団長は陣地に戻り、生まれて初めての感涙を経験し、仲間にこれまでの団結と努力が報われたと感謝の言葉を発します。それを聞く下級生は、応援団長はじめ6年生の印象を威丈高から感服へと変化させ、高学年への憧れをつよく抱くのです。

 

保護者や家族は、可愛ければそれでいい運動会だったと締めくくるかもしれませんが、しかし、子どもにとっては単なるイベントではありません。

子どもにとって運動会は、人生を生き抜く知恵を学ぶ場なのです。

嬉しさも悔しさも感動も、流した涙も、多ければ多いほど、それは確かな成長の証なのです。

 この記事を書いた「マイみちスト」
(こんのひとし)
大学を卒業後、一般企業に三年間勤務し、その後1年間大学専攻科で特別支援教育を学ぶ。昭和57年から盛岡市、宮古市、釜石市の小学校に勤務。平成23年 釜石市立小学校長として勤務時に東日本大震災被災。平成27年度小学校長で退職。平成28年度は大阪府の小学校で校長を務める。

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Comment (1)
  1. マッキー さん

    「人生を生き抜く知恵はすべて運動会で学んだ」 ← 校長先生の強い思いを感じるタイトルですね!子供たちの悲喜こもごもを表したイラストもグッときますね!
    運動会は学年を超えた1年生から6年生までの縦割りの一大行事!親も見に来る運動会、誰でも頑張りたいです!でも人には得手不得手があります。子供たちのの中にも運動が好きな子もいれば苦手な子もいます。得意でなくても精一杯頑張ってる子供を見ると、思わず「頑張れっ!」と声援を送りたくなります。
    子供であれ、大人であれ、自分のやるべきことに一生懸命に取り組む姿はただもう素晴らしいと思います。

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