日刊ウェブマガジン「まいにち・みちこ」│東北「道の駅」公式マガジン「おでかけ・みちこ」

まいにち・みちこ【東北 道の駅 日刊マガジン】

教員として過ごした三十五年間を経てなお、子ども達や先生方、保護者の皆さんに伝えておきたいことが少なくありません。その思いで自費出版した「お天道様は見ています〜校長先生のおはなし〜」の続編やこぼれ話をお伝えいたします。お子さんと一緒に読んでみたり、かつての自分を思い出したりしながらお付き合いください。

第10話:物にも命がある

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まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/76954238/11523

今日も校長先生が小さかった頃のお話をしましょう。

お天道様はよいこともしっかり見ている、というお話です。

7月には七夕集会がありますね。その時は、みなさん願い事を書いた短冊を笹竹につるすでしょう。校長先生も私も小さい頃は、短冊に願い事を書きました。「学校の先生になりたい」と書いてつるしたんです。

あれっ、今学校の先生になってるから願い事が叶ったんだ、と思う人がいるでしょう。でも、簡単にはこの願いが叶わなかったんです。

 

小学校1年生のときの先生は、ヒサコ先生という女の先生でした。やさしくて、いつも子ども達と一緒に遊んでくれました。私も大人になったらヒサコ先生のような先生になりたいと思ったんです。

 

七夕さまを終えたばかりの夏の日でした。近所のお兄さんたちが小さなタイヤを転がして遊んでいました。それを見て私も、タイヤで遊びたくなったんです。でも、私にはタイヤはありません。そこで、おもちゃ箱のなかから古いおもちゃの自動車を取り出して、それを壊してタイヤをとろうと思ったんです。

(もう古くなったおもちゃの自動車だからいいんだ。もう遊ばないおもちゃだから壊してもいいんだ)

心の中でそういいながら、タイヤをほしいばかりに金槌でおもちゃの自動車を何度もガンガン叩きました。結局、自動車はタイヤどころか、何もかもメチャクチャになってしまいました。壊れてメチャクチャになったおもちゃの自動車を見たとき、なんだか苦いものが胸にこみ上げてきました。

 

ある晩、夢にお天道様が出てきました。

「おもちゃを壊してしまうなんてよくない子だ。壊れた自動車は泣いているよ。物にも命があるんだ。おもちゃの自動車だって、鉛筆一本、消しゴム一個にだって、命があって、最後まで大事に使われたいと思っているんだよ。簡単に物を壊してしまう子どもの願い事を叶えるわけにはいかないよ」

と、いったのです。私は、

「じゃ、どうすれば願い事を叶えてくれるの」

と、お天道様に尋ねました。

「どうしても願い事を叶えてほしいなら、よいことをいっぱいすればいいんだ。みんなのためになるよいことをいっぱいする子になれば、願い事を叶えてあげよう」

しかし、私はよいことをしませんでした。だからよい子にはなれませんでした。

 

大きくなった私は中学校、高校、大学を卒業し、願いだった学校の先生になろうと、試験を受けました。結果は不合格でした。しっかりと勉強して試験を受けたのにどうして不合格になったんだろうと考えました。その時、お天道様の言葉を思い出したのです。

(ああやっぱり、これまでよいことをしなかったから自分の願い事は叶わなかったんだ。今からでは遅いかもしれないけれど、みんなのためになるよいことをできる限りやろう)

そう思って、それから少しずつよいことをするように心がけました。友達を助けたり、困っている人に手を貸したり、ボランティアの活動に参加したりしました。

そうして27歳になってやっと、学校の先生になれたんです。

その時私は、お天道様のいうことは本当だ。よいことをする自分をしっかりと見ていたお天道様が、願い事を叶えてくれたんだ。お天道様のいうことは本当だと、信じることができたのです。

 

学校の先生になってからの私の願いは、勤める学校の子ども達がみんなよい子に育ちますように、ということでした。30年間以上も学校の先生をしてきて、今年が最後の年になってしまいました。3月で定年退職です。少しさびしいです。でも、最後の学校がこの学校でよかったと思っています。1年生から6年生まで、みんな明るく元気でよい子どもばかりの学校だからです。お天道様は、学校の先生になってからの願いも叶えてくれました。みなさんのようなよい子に出合えてとても幸せでした。

 

みなさん、お天道様はすべての物には命があると教えてくれました。物は鉛筆一本、消しゴム一個でも、最後まで大事に使ってほしいと思っているんです。このことを忘れないようにしましょう。それと、お天道様はよいことをする子どもをしっかりと見ていて、そんな子どもの願いを叶えてくれるってこともね。

 この記事を書いた「マイみちスト」
(こんのひとし)
大学を卒業後、一般企業に三年間勤務し、その後1年間大学専攻科で特別支援教育を学ぶ。昭和57年から盛岡市、宮古市、釜石市の小学校に勤務。平成23年 釜石市立小学校長として勤務時に東日本大震災被災。平成27年度小学校長で退職。平成28年度は大阪府の小学校で校長を務める。

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皆さまよりお寄せいただいた感想はこちら (3)
  1. マッキー さん

    小さい頃は鉛筆だって小さくなるまで大事に使っていたのに、今はものがあふれ便利すぎる世の中になってしまって、ついついもったいないという心も薄れてきたように思います。アイタタタ!今の私の心を見透かされているようです(^^;)
    お話を読んで、失敗したり上手く行かないことがあるからこそ、それが心のよりどころになるんだなあ。もっといい人間、もっと強くもっとやさしい人になろうと努力して、人は育っていくんだなあと感じました。
    校長先生の「よい子に育ちます様に!」という願いがちゃんと子供たちにも通じていましたね。
    小学校を訪れた時、見ず知らずのおばさんの私達にも、笑顔で挨拶してくれたり、明るくしっかり答えてくれた子供たち。そして先生の退職の花道を飾る「釜石せいてつ物語」での迫真の演技を見て実感しました。校長先生がこの学校で良かったと思われているように、きっと子供たちもこの学校でよかったと思ったでしょうね。
    誰と出会うかで人生が大きく変わります。私もそれを実感しています。素敵な出会いに感謝の気持ちでいっぱいです!

  2. いきいき さん

    良い人になるって、どんな人なんだろう⁉️って改めて考えてしまいました。自分にとって都合の良い人になるのは簡単。自分のことだけ考えていればいいのですから。この歳になると?少しずつ分かってくることがあります。周りの人達も幸せでなければ自分の本当の幸せもやっては来ないことが。身近なところから、助け合い、労わりあい、励まし合い、慰め合い、そして笑いあえるように自分に出来ることをやり続けたいなぁ。

  3. ルイ.ニャン さん

    先生になれてよかった、この学校で終われてよかったという悔いの残らない定年退職ができたのは素晴らしいと思います。

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