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まいにち・みちこ【東北 道の駅 日刊マガジン】

熱く繊細な、歴史を彩る洒落者の真の姿に学ぶ

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【操觚の会】日本の歴史小説作家、時代小説作家の親睦団体。2016年6月に創設。2018年5月現在、赤神諒、秋山香乃、朝松健、芦辺拓、天野純希、荒山徹、神野オキナ、神家正成、蒲原二郎、木下昌輝、小松エメル、坂井希久子、杉山大二郎、鈴木英治、鳥羽亮、新美健、早見俊、誉田龍一、簑輪諒、谷津矢車(五十音順、敬称略)が所属。現在、鈴木英治が代表、早見俊が副代表を務めており、トークイベントや書店でのサイン会といったイベントを定期的に開催している。
まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/72048136/21731

 伊達政宗。大河ドラマの影響もあってか、“独眼竜政宗”という名で人口に膾炙している、東北地方有数の戦国大名です。そのいかめしい呼称だけを見ると、どうしても無骨な武将像を思い浮かべてしまいがちですが、実際にはそんなことはなく、当代一流の文化人・教養人でありました。政宗公が残した豪壮かつ優美な建築からは、彼がすぐれた審美眼の持ち主であったことがうかがわれます。

 また意外や意外、政宗公はとても家族思いだったらしく、愛娘に送った情愛細やかな手紙が残っています。どうやら子煩悩な一面もあったようです。他にも早寝早起きの、規則正しい生活習慣の持ち主であったり、勤勉で清潔好きであったり、高麗陣ではお母さんのためにお土産を探し回ったりと、意外性に富んだ逸話には事欠かない人物なのですが、そんな政宗公のエピソードの中でも、特に印象に残るものが一つあります。それは家臣である、二代目片倉小十郎(重綱。後に重長)とのこんなやり取りです。

 時は慶長十九年(一六一四年)十月、大坂冬の陣の時のことです。徳川将軍家の発した陣触れが、遠くはるばる陸奥の伊達家にも伝えられました。それを居城である白石(しろいし)で聞きつけた重綱は、すぐさま仙台へと向かいます。父である景綱(かげつな)は病のため出陣できないものの、なんとしてでも、戦場で先鋒を勤めたかったからです。言うまでもなく、合戦で先鋒を任されるということは武門の誉れであり、家中における名誉、これに過ぎるものはありません。

 重綱が登城したところ、ちょうど政宗公は御殿の奥に向かうところでした。そのため重綱は、主君の後を廊下まで追いすがり、勢い込んで思いのたけをぶつけます。
「此度御出陣於大坂御先鋒拙者に被仰付下度(こたびの大坂での戦、ぜひとも拙者に先鋒をお命じくだされ!)」

 すると政宗公は元いた席に戻り、重綱の手を引き寄せるや、頬に「御口を被為附」、つまりキスをしてこう返しました。
「其方御先鋒不被仰付候て、誰に可被仰付哉(お前以外に、誰がいるっていうんだよ!)」 そして目を潤ませ、感激の涙を流したそうです。自分は若輩者なのに、我が殿は早速願いを聞き入れてくださった。 
「ありがたき幸せ!」
 重綱も政宗公同様、目頭を熱くして感涙にむせんだのでした。 

 この話は『片倉代々記』という、白石(しろいし)片倉家の公式記録に記載されているものです。特記されているところを見るに、小十郎重綱にとって、よほどうれしく、かつ名誉なことだったのでしょう。

 暗殺、裏切り、謀反。いつ何があってもおかしくない、殺伐とした戦国社会にあって、政宗公と片倉重綱は、主従の関係を越えて心を通わせ合い、かつ情熱的であったようです
 もっともっと東北の人や歴史について知りたくなる、そんな素敵な歴史の一コマではないかと、私はこの話を思い出すたびに、考えています。

【娘に送った手紙について】

 大宴会の後、政宗公に、次女牟宇姫より体調を気づかう手紙がきたようです。それに対する政宗公の返事です。心温まる、親子ふれあいの様子がうかがえます。

<意訳>
「早速、お手紙をくれてありがとう。夕べは宴会の座持ちで、無理をして酒を飲んだので、二日酔いで参っております。でも、今朝は鷹狩りに出かけるから、気分良く晩には帰ってこようと思います。まだふらふらしていて、とりとめない返事になってしまいました。またお便りします。 牟宇ちゃんへ 父より」

 この記事を書いた「マイみちスト」
(かんばらじろう)
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。衆議院議員秘書を経て、現在小さな幼稚園の園長をしている。大坂の陣をえがいた小説『真紅の人』を上梓後、大河ドラマ「真田丸」時代考証の先生方の勧めにより、『武田氏研究 第56号』に道明寺合戦に関する論文(『大坂夏の陣における道明寺合戦の再検討~真田信繁の動向を中心に』)を発表。現在は執筆に生かすべく、徳川家康の嫡男・松平信康が切腹させられた「信康事件」 や、中国の隋・唐時代の調査している。操觚の会会員。日本推理作家協会会員。
この「マイみちスト」の作品

真紅の人

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皆さまよりお寄せいただいた感想はこちら (2)
  1. さくやくん さん

    伊達政宗の意外な一面を知ることができました。とてもおもしろい記事だったと思います。

    • 蒲原二郎 さん

      ありがとうございます。伊達政宗公はまことに洒脱で、大変興味深いお方です。

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