日刊ウェブマガジン「まいにち・みちこ」│東北「道の駅」公式マガジンmichi-co

まいにち・みちこ

(すがわらまり)
盛岡市在住。聴くこと、撮ること、書くことを通して、「伝わる」ためのお手伝いを仕事にしています。

つないだ手と手のあいだには。

人生は当たり前の毎日が重なる一冊の本。読んだあなたのその本に挟んでいく栞になるように、日々が少し彩るようにと思いながら書いていきます。満月と新月の頃に更新。
まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/56479328/8063

 

突然だが、あなたは最近だれかと手をつないだだろうか?

 

人の温かさが恋しくなる季節になったことだし、今日は「子どもと手をつなぐこと」について書きたい。

 

一言で「手をつなぐ」と言っても小さな頃から今まで、つないでいるときの気持ちというのはゆっくりと変化していたのだな、と思うのだ。

 

 

こどもがまだ歩き始めの頃は、転ばないように、まっすぐ歩けるように、常に手をつないでいた。
手をつなぐふたりの真ん中に、「行こう、の気持ち」のバランスがみえるとしたら、おそらく私が9、こどもは1くらいだった。

少し足と腰をかがめて、小さな手を、できるだけ優しくひいた。たどたどしい足どりにあわせて、ゆっくりゆっくり。小さな花や、石ころ、ちょうちょ、道の模様、大きなトラック。普段の生活の中では気にもしないようなものにも「あ!」「わ!」と驚き、喜び、指を差し、目をまんまるにして、くるっとこちらを振り返る。

夜泣きで寝不足の日が続き、家事も思うようには進まない。大人と会話していない時間が長すぎて敬語の使い方を忘れていることに気づき、世の中がどんどん先に歩いて行ってしまったような寂しさ。あのころ独特のしんどさというものは確かにあった。

けれど、子どものキラキラした目に映っているであろう景色を思うと、少し前から生きている先輩として「どうだい、今いる世界、なかなかでしょ?」と言いたいような、少し誇らしい気持ちにもなった。

3歳くらいのときだっただろうか。
「てをつなごう?」とわたしが言ってもやんわりと拒否する時期があった。何か言いたそうにこちらを見て、ちょっとするとぷいっとする。その時期の少しあとから、「行こう」のバランスが変わったように思った。
わたしが5、こどもも5。まっすぐ水平。

手をつないでいるときの、きゅっと握る強さ、絡めた指と指の間の感じ、腕の振り方、歩幅のとりかた、わたしを見上げる目線。
それらをイーブンに感じる瞬間が増えた。

そして、こどもが4歳の頃。

こどもが眠る時間の少し前。わたしはとても悲しいことがあって、白い毛布にくるまれ、携帯電話を握りしめながら泣いていた。

ひっくひっく。

おさえればおさえるほど涙と嗚咽がとまらない。

テレビに夢中で気づいていないと思ったのに、子どもはいつの間にか隣に座っていて、「どうしたの?」と一言、聞いた。

わたしは一旦涙を拭いて「あなたが涙の理由ではないからね、ちょっとおかあさん悲しい気持ちだから泣くね。泣いたら元気になるから」。そう伝えた。言ってるそばからまた泣いた。

こどもはわたしの隣に座ったまま、

「ないてもいいんだよ。 ママもかなしいときって、あるよね。 てをつなごっか。 あったかいからいいきもちだよ」。

そんなことを言って、赤ちゃんのときよりは少し大きくなった、でもまだまだちびっこな両手でわたしの左の手のひらをきゅっとはさんだ。

きっと眠かったからだろう、たしかにその手はいつもに増してあたたかで。たしかに、とても気持ちのいいもので。じゃんじゃん流れていた涙も少しずつおさまった。

手をつないだまま横になると、カーテンの隙間から細い弓張月が見えた。

あの夜、こどもはきっと10の気持ちでわたしと手をつないでいた。

 

 

それから手をつなぐときは、「行こう」のバランスがわたし8、こども2で、親らしく背筋を伸ばして、手を引いているようなときもあれば。
こども9、わたし1で子どもたちの「いこ!」にあわせて付き添っているだけのようなときもある。

すれちがう人から見れば、普通の、手をつないでいる親子でしかないだろう。

でも、わたしたち二人のあいだは日々少しずつ変わっているのだ。

今は頼もしくなっていくあたたかな手のひらを味わいながら、その変わっていくバランスを楽しみたい。

そして、わたしとつないでいた手を離し、からっぽになったその手のひらが何を選んでいくのか。

それを近くで見ていられることに感謝する毎日だ。

 

 

変わって行けることの強さを見送ろう。

変わらずにいることの儚さを味わおう。

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。菅原茉莉です。ここから先は、はみ出し話です。今回は「母親が泣くことについて」。お付き合いいただけたら嬉しく思います。

 

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