まいにち・みちこ【東北 道の駅 日刊マガジン】

本と酒。嗜み、語り、分かち合う夜。book bar @紫波町図書館

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人生は当たり前の毎日が重なる一冊の本。読んだあなたのその本に挟んでいく栞になるように、日々が少し彩るようにと思いながら書いていきます。満月と新月の頃に更新。
まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/56479328/22636

八月四日。夕焼けの、少し前の時間。

さんさ踊り最終日の熱気に包まれる盛岡駅から、東北本線で南へ。

紫波中央駅で下車して向かったオガールは、思った以上の賑わい。盛岡とまた違った一体感と、アットホームさを感じる盛り上がりが駅のホーム近くまで伝わって来る。

地酒、ビールにワイン、気心知れた仲間との会話。

笑い顔と笑い声が溢れるテントを眺めながら、オガールの建物内へ。

人がまばらになった紫波町図書館の2階に上がると、20名弱の客席に流れる穏やかな空気。

今回伺ったのは、book bar。

盛岡市内で本に深く携わる、小山由香理さん(pono books&time)、長江貴士さん(さわや書店)、早坂大輔さん(BOOKNERD)がブックバーテンダーとして、お客様からオーダーされる本を紹介してくれるイベントだ。(ponoさんとBOOKNERDさんは以前記事を書かせていただきました。店名のリンクからどうぞ)

いつもは、お店に立つちょっと遠い存在の三人。本についてゆっくり話が聴ける機会はなかなかない。客席にもふわふわと期待感が漂う。

本のオーダーメニューを見ていると、急にお腹が空いていたことを思い出させるようないい香りが。

紫波町日詰にお店をかまえる、藤屋食堂さんのお料理は二品。

「紫波夏野菜のモザイク」は、酒粕風味の白和えにしたお野菜の、カリコリカリコリとした食感が楽しい。「酔いどれ和牛と大根のマリアージュ」は、酒粕と5時間半煮込んだお肉が箸でスッと切れ、口に運ぶと体温で柔らかにほどける。お酒と交互にいただくと、本当にどちらも止まらない。

 

並んだグラスには紫波町の四つの酒蔵からそれぞれ日本酒が一種ずつ。ワインも一杯。賑やかなテーブルを囲んで会話も弾む。

「最近読んで面白かった本」「失恋した時に読む本」などオー ダーが入るたびに思いがけない本のタイトルがバーテンダーから紹介される。

その都度、おー、ほー、わーっという声と拍手。和やかに盛り上がる客席でお話を伺うと、「こうやってご紹介を聴いてると、ふだん縁のないジャンルでも読んでみたいなって思っちゃいますね」とお話に夢中になる方や、左手に日本酒、右手にペンを持ち、熱心にメモをとる方。スマートフォンを片手に、その場で本の情報を確認する方も。

楽しそうに会話が広がっているテーブルに、カメラ片手におじゃました。お友達同士かと思ったら、この日が初対面だったのだそう。お互いの好きな本やお酒について熱心に語り合っている姿は昔からの知り合いのような和やかさ。

デザートには高橋酒造店(堀の井)の日本酒と紫波産のブルーベリーを使った、「不可思議な水のゼリー」。紫波という町の名前と同じく薄く柔らかな紫色だ。昔、東京に住んでいたときに紫波という地名を伝えたら「紫色の波!かっこいい!すてき!住みたい!」とべた褒めされたのを思い出した。さっぱりとしたゼリーが、日本酒で少し火照った口の中をひんやりとさせてくれる。

 

まるで宝探しのような興味深い本の話を聴き、個性あふれるお酒を飲み比べながら、時間をかけて作られたお料理を少しずついただく。写真を撮りながら、思わず「これで話が弾まないほうが不思議だよね」、と呟きたくなるほど、お客様一人一人がbook barを楽しんでいるようだった。

 

 

印象的だった選書を少しご紹介。オーダーは「失恋に効く本」。

小山さん 猫とパリジェンヌに学ぶリラックスシックな生き方 米澤よう子

「猫はモテるんですよ。猫の歩き方やしぐさ、振る舞いを学ぶ本です!」

 

長江さん なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか  二村ヒトシ

「AV監督が著者。恋愛の話から入るけれど、母親との関係性や「心の穴」の話につながっていく」

早坂さん 難しい愛 イタロ・カルヴィーノ

「20歳位に大失恋したときに読んだ本。まだ始まらない恋の話。また恋がしたくなります」

窓の外にはオガール祭りの喧騒。耳をすますと、外の賑やかさがうっすらと聞こえる。

もしも、紹介された本を実際に手に取りページをめくることがあったら。この日と同じお酒をもう一度飲むときがきたら。きっと、ブックバーテンダーの三人が話してくれた、「お酒を飲んだので言いますが……」という内緒の話や、紹介する本と出会ったときの話を思い出すだろうな。拍手や乾杯の音、隣の人との会話、外にシトシト降っていた雨のきれいな水滴も。

本もお酒も、そのときの声や、音、思い出が、読むたび、飲むたびに重なっていく。

紫波町図書館二階のbook barで過ごしたあの時間は、ただのトークイベントではなくて。

一冊と一杯との出会いの場であり、積み重なる思い出の最初のページでもあったのでした。

 

 

 この記事を書いた「マイみちスト」
(すがわらまり)
盛岡市在住。聴くこと、撮ること、書くことを通して、「伝わる」ためのお手伝いを仕事にしています。

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