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「5年あったら、何にだってなれるよ」~Knockout Bumboclaat~

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人生は当たり前の毎日が重なる一冊の本。読んだあなたのその本に挟んでいく栞になるように、日々が少し彩るようにと思いながら書いていきます。満月と新月の頃に更新。
まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/56479328/14500

季節を二つ遡ろう。

夏の終わり。わたしは友人家族に誘われて、近くの神社で催されていたお祭りに来ていた。屋台で買った、焼きそばや焼き鳥の袋をぶら下げ、大きく広げられたブルーシートの右の端っこに腰掛けた。

並ぶ夜店。あちこちで交わされる、ご近所同士の密なあいさつ。

大きな音と、にぎやかな声と、あたたかなオレンジ色の光と。「ああ、おまつりっていいなあ」と、まったりとした気分で、流れてくる演歌やスコップ三味線を聴いていた。

にぎやかさにも少し疲れてきて、そろそろ帰ろうか、と思ったとき。ステージに上がったのは少し年下に見える、男の子2人だった。

明らかに今までとは違う、ワクワクした音と空気。機械の調整だろうか、デジタルな音が響く。年配の人も多くいた会場は「なんだなんだ」とざわめき、みんながステージに注目していた。わたしも一緒に座っていた友人の耳元に、「なにか、はじまるみたいだね!」と、大きな耳打ち。

 

簡単な自己紹介的な話があって、そのあと音楽が鳴り出す。

彼らのオリジナルの曲。最初は少し戸惑っていたお客さんを、ぐんぐん引き込んでいく。繰り返される前向きな歌詞と口ずさみやすいメロディー、そしてなによりも心から楽しそうな彼ら二人の様子から目が離せない。気づけばわたしも手を挙げ、おじいちゃんやおばあちゃんもこどもたちも手を振り、歌に対して、声を返す。

ステージから二人が下りると、また演歌が流れ、いつものお祭りらしい空気に戻った。

ここが盛岡の小さな神社の、夏祭りのステージだなんてすっかり忘れてしまっていた数分間だった。

彼らの歌う姿が、帰宅してからも頭から離れなかった。ぼんやりとしか聞き取れなかった彼らの名前と、MCで聴いたClub Changeというライブハウスの名を手がかりにして、インターネットで彼らを探し、「逢いたいです、お話を聴かせてほしい」と伝えた。

それから、なんども、撮ったり、話したり、観たり、聴いたりしながら、約半年が経った。

わたしはフェスに熱くなる方でもないし、ライブもほぼ経験値0(ゼロ)。

でも二人のライブは、聴いているとお腹の底から元気が出た。だから毎回、少し緊張しながらカメラを抱えて出かけた。

二人をきちんと紹介しておこう。Knockout Bumboclaat(ノックアウトボンボクラ)という名前で活動している、白のキャップをかぶっているホマレくんと、黒いTシャツにバンダナがゼンくん。ソロのときは、ゼンくんがZENDAMAN、ホマレくんはMyrtという名前で歌っている。二人とも高校3年生だ。音楽のジャンルで言うと「デジタルレゲエ」だよ、と二人に教わった。

「高校生なんて記事にならないよ」

二人の話を友人にしたとき、そんな風に言われたこともあるんだけど。それはちがうよ、と思った。

歌でも文章でも、表現するということは「恥ずかしさ」や「不安」と隣り合わせだ。まっさらなところから紡ぎ、形作り、文字や音に乗せていくのは、自分の一部そのもの。高校生だとか、大人じゃないとか、そういうことは関係がなくて。表現するのか?しないのか? 彼らは表現していた、そして多くの人を惹きつけていた。だから撮りたい、逢いたいと思った。そういうシンプルな話だった。

夕方の公園、放課後の制服姿で歩いてきた二人はとっても礼儀正しくて、とてもていねいに挨拶をしてくれた。なんというか、もっとウェイウェイした感じの雰囲気を想像したので正直驚いた。

二人のはじまりは中学生のときに通っていた塾。そこでのお互いの印象を尋ねると、「なんか変なやつがいるなーって思ってた」とホマレくん。「俺も同じこと思ってたし!」とゼンくん。お互いを「だいきらいだ」と笑い合う。その後同じ高校に入学し、それぞれソロで活動。そして、KnockoutBonboclaatが動き出した。

レゲエってどんなきっかけで好きになっていくんだろうと気になって、ゼンくんにレゲエとの出会いを聞いてみたら、「たぶん生まれたときからレゲエ聴いてます、親がレゲエ好きで。そればっかりでした」と答えてくれた。

この半年、二人は高校生活と並行し、大人たちに混じり色々な舞台に立った。ライブハウス、いしがきミュージックフェスティバル、ラジオにテレビ。会うたびに新しいニュースを聴かせてくれて、2段飛ばしくらいで階段を駆け上がっていく姿。嬉しい驚きが半分、二人なら当然かな、という気持ち半分。

そして3月1日。岩手の県立高校は卒業式の日を迎えた。

目の前に見える景色にためらわずに飛び込んでいく二人。ホマレくんは東京の音楽専門学校へ進学して音楽をさらに学び、ゼンくんはジャマイカへの留学を決めている。まっすぐにまっすぐに、音楽へ向かっていく。

二人に、「5年後、どうなっていたい?」と、きいてみたことがある。二人は顔を見合わせて「5年もあったら、なんにだってなれるよね」と笑っていた。

そう、本当に何にだってなれるよ。なりたい姿がはっきりと見えていて、数ヶ月の間にこれだけ前へ進んでいるんだから。大人になっていくのは楽しいよ。こどものときには開けられなかった扉も、これからどんどん自分の手で開けられるよ。

二人の半年は、わたしにも「目の前の景色は、変える!と思えばどんどん変わっていくものなんだ」と思わせてくれた。

ゼンくん、ホマレくん。卒業、本当におめでとう。

二人の「これから」楽しみにしています。

 この記事を書いた「マイみちスト」
(すがわらまり)
盛岡市在住。聴くこと、撮ること、書くことを通して、「伝わる」ためのお手伝いを仕事にしています。

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皆さまよりお寄せいただいた感想はこちら (3)
  1. ひろ さん

    6年生の息子のピアノの発表会が終わった直後に、この記事を読んだ。中学になるから、ピアノはやめるのだと思い込んでいた自分を恥ずかしく思った。クラブと勉強、スイミング、ピアノの両立は難しいのは、わかっている。それでも続けたいという息子の考えを、大人の「無理でしょ 」の無責任な固定観念でやめさせようとしていた。苦労はさせたくない。親なら誰でも思うことだろう。でも、こうしなさい。は、小学校卒業と同時に卒業しようと思った。出来る、出来ない。を、決めるのは息子自身だ。5年後、いや、1年後どんな道を選ぶのか、出来るだけ遠くから見守っていたい。
    5年あったら… 48歳の自分も考えてみようかなぁ

  2. 菅原茉莉 さん

    ひろさん。
    クラブ、スイミング、学校の勉強にピアノ。忙しい毎日を6年生まで頑張ってきた息子さんなら、きっと1年後も自分にとって一番だと思える選択ができる。そういう土台が育っているのだろうと思います。
    そして自分の意思で選択した、という経験がまた息子さんの糧になっていきますね。こんなふうに考えてくださるご両親、あったかいなあ。
    12歳も大人も、5年という時間が平等なら。大人も前へ進み、変わっていくところをこどもたちにみせていきたいですね。コメントありがとうございました^^
    改めて息子さんの卒業・入学おめでとうございます。良い春を!

  3. ダイざぶ さん

    「まいにち・みちこ」の読者になってすぐにこの記事に出会いました。
    彼らの純粋さと真っ直ぐな目。
    濁った目をした大人にゲンコツを食らわすような「五年あったら何にだってなれるよね」というストレートな言葉、眩しい自信。
    そしてひとりの大人、先輩として彼らに優しい視線を向ける菅原さん。
    とても印象的でした。

    時々この記事を時々読み返しては自分を鼓舞しています。
    「50歳の俺も前へ進まなきゃ」と。
    (でも実際は具体的な目標も定まらず、ただ焦ってるだけで終わっているのですが……)

    またいつか、彼らの途中経過の記事を書いて下さい。
    彼らの生き方に、ずっとずっと先輩であるはずの私は、驚かされ色々考えさせられています。

    いつも楽しみにしてます。
    これからも頑張ってください。

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