まいにち・みちこ【東北 道の駅 日刊マガジン】

盛岡にある、「世界で一番やさしい本屋」 〜 大通 pono books&time 〜

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
人生は当たり前の毎日が重なる一冊の本。読んだあなたのその本に挟んでいく栞になるように、日々が少し彩るようにと思いながら書いていきます。満月と新月の頃に更新。
まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/56479328/13837

盛岡市の大通から、開運橋へ向かう途中。

昔からあるおもちゃ屋さん、おしゃれなアパレルのお店、新しくできた飲食店の灯に混じって、小さな看板があるのをみかけたことはあるだろうか。

 

ガラスにかかるOPENの文字。ドアを開け、階段を上がった2階にあるのが、pono books & time(ポノブックス&タイム)。

 

 

ponoは新刊も扱い、お客様から持ち込まれた本も売る本屋さん。

それがbooks&timeの”books”の部分だ。

 

そして、”time”の部分はコワーキングスペース、と呼ばれる場所で時間をすごせること。まだ岩手には数箇所しかないが、コーヒーはもちろん、抹茶、ちょっと珍しいジュースなど気分に合わせて飲み物をオーダーして好きな席に着く。

WiFiや電源も用意されている、窓際の椅子席に座るもよし。

靴を脱ぎ、ふかふかのクッションがたくさんある低めのソファで、本を何冊か片手にくつろぐもよし。

 

土日は女性のお客様が多く、読書はもちろん、おしゃべりをしたり、中には編み物をするお客様もいるという(!)懐の広い空間だ。

平日の夜に多いのはお一人でいらっしゃる男性の方。家に帰る前に、もう少しだけ仕事をしたり、手帳を整えたり。そんな風に自分の時間を過ごす方が多いのだそうだ。

 

「わたしは、そんなに読書家というわけではないんですよ(笑)。でも、背表紙を眺めて、ふーん、ってパラパラとページをめくって。引き込まれて気づいたら日常から非日常にポンと飛んでいる、そんな本屋さんという場所が大好きで。」そう話す小山さん自身も、日中はponoとは別の会社で働く会社員。平日夜と土日の午後、このponoのカウンターに立ち、お客様を迎える。


一人で起業する女性、というとバリバリキラキラした、周りを圧倒するようなイメージを持っていたのだが、小山さんからはそんな空気は感じない。

お話を聞くのも、ご自身のことを話すのもすごく楽しそうで、初めて会った時から、いつ会っても優しい遠い親戚のお姉ちゃんというような、遠すぎず近すぎない心地よさと、身内感を持った方。

 

「会社の行き帰り、この道を通るたびに『あー、誰か、この辺に居心地がいいカフェとか本屋さんとか作ってくれないかなあ。そしたら常連さんになるのに!』って思いながら歩いていたんです」

 

窓際のワークスペース。降りつづく雪と、行き交う人や車をみながら小山さんは言う。

 

 

「副業で起業して、本屋さんのオーナーになった女性」

 

そんな肩書きだけでみると小山さんはとても遠く感じるのだけれど。開運橋通りを毎日会社へ通い「だれかやってよ!」と思っていた時もある。夢のように遠く離れた人の話ではないからこそ、なんだか勇気が出る。

 

そんな生きた体験談を求めてだろうか、副業に関してお客様から相談をうけることも多いそうだ。「副業としてだれかに雇われて、働く場所を増やすこともありだと思う。でも、そうじゃないこともできるよ、って。会社員の安定を手放さなくても、お店をやったり、自分のやってみたかったことを形にしていくことはできるんだよ、って思います」そんな風に小山さんは話してくれた。

 

情報の届け方も選択肢が増え、「出版不況」という言葉を時々耳にする。そんな中でも小山さんはponoをオープンさせる以前から、不況とは真逆の雰囲気を感じていたという。

「大きな書店ではなくて、小さな本屋さんが盛り上がっているなっていう感覚はありました。仙台くらいまではその波が来ていた。岩手にも、ドリンクを飲みながら買う前の本を読めるカフェができたりしたけれど、利用してみると『便利だけど、わたしの好きな本屋さんとは違う』と、はっきり思ったんです。それで、自分で作ろう、と。」

毎日の通勤路だった開運橋通に物件を決め、内装や店のコンセプトを決めて行った。

「コンセプトを決める時、相談した方からは『尖ったコンセプトに!』と言われました。できるだけジャンルを絞って、って」

 

そんなアドバイスをいただきながらも、小山さんが作りだしたのは、ぜんぜん尖っていない、むしろ、あったかくって、まーるくて、やわらかい。「尖り」と真逆のコンセプトだった。

「わたしはずっと、ロックと、ハワイと、プロレスが好きだったんです。でも好きなものに共通点が全然ないなあって思っていました。でもコンセプトを考えていたとき、突然、あ!!共通点があった!『やさしさ』だ!って(笑)」

 

ハワイはリゾート地のイメージがあるけれど、ずっと趣味で続けているフラダンスが教えてくれたハワイには、愛と笑顔とやさしさが根っこにあって。

ロックも、一見騒がしく荒々しい音楽に聴こえるけれど、歌う人も、歌詞も、掘り下げていくと、やさしさに行き着いて。

そしてプロレスも格闘家という印象が一番にきてしまうけれど、深ぼりするとレスラーの皆さんには「表現者」という言葉がぴったりで。プロレスを通して信頼関係や、やさしさを感じることができて。

小山さんが大好きなもの、ずっとそばにあったものの中にみつけた共通点は、少し掘り下げると、うわべだけではわからなかった「やさしさ」が見えてくること。

 

自分自身の根っこを見つけた小山さんがponoにつけたコンセプトは「世界で一番やさしい本屋」だった。

「まだまだponoも私も変わっていく途中だと思っていて。だから、これからの私が好きになったものや興味を持ったものも、仲間にいれられるようなコンセプトにしたんです。マーケティング的には尖った方がいいのはわかるけれど、それは私がやりたい本屋さんではなかったし、ちゃんと好きなことじゃないとできない、と思ったの。」

 

この先、夢中になれるものができたら、その熱量をお店の棚にも反映させたい。自分が本当にいいと思うものを、「自分のやり方」で伝えられる場所にしたい。

この冬一番の雪と寒さの日に、ぽかぽかしてくるような笑顔と声色でそう話してくれた小山さんを見ていたら、ponoにこれ以上ぴったりのコンセプトはないよなあと、つられて笑ってしまった。

 

 

わたしたちが「自分をさらけ出せる場所」というのは、「だれかが自分をさらけ出している場所」とイコールなのかもしれない。

ponoの本棚をみると、どの棚も小山さんの一部のようにありのまま並んでいて。お客様の手から手へ渡り、集まってきた本も一冊一冊、体温を持ってここにあるように思える。

 

ponoはハワイの言葉で「地球上のすべてのものがその場所にあっていい。バランスがとれた状態」という意味なんだそうだ。

 

本と向き合い、自分と向き合う。

夜の盛岡を見下ろし、毎日少しでも、そんな時間をすごせたら。

今日の終わりも、明日の始まりも、きっと”pono”な気持ちで迎えられるだろう。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。ここから先は編集後記です。

今回はponoの挑戦について。

 

……(この記事には続きがあります。会員登録で最後までお読みいただけます)

続きは「プレミアム会員登録」で読む事ができます

まいみちプレミアム会員になると、有料記事を含む全ての記事が読み放題となります。

・会員向けプレゼントの応募
・頒布会などのお知らせ
・会員参加イベント企画
・メールマガジン
などお得な情報を受け取ることができます。

まいみちプレミアム会員は月額194円(税込)です。
まいみちプレミアム会員登録(購読申し込み)方法

ペイパル - あなたのカード情報、守ります。|Mastercard,VISA,American Express,JCB

会員登録されている方はこちら

 この記事を書いた「マイみちスト」
(すがわらまり)
盛岡市在住。聴くこと、撮ること、書くことを通して、「伝わる」ためのお手伝いを仕事にしています。

この記事が気に入ったらシェアお願いします

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

感想をお待ちしております

*

CAPTCHA


この「マイみちスト」の記事を読む