東北をフカボリ!「道の駅」日刊ウェブマガジン「まいにち・みちこ」

まいにち・みちこ【東北 道の駅 日刊マガジン】

あなただけの画用紙に、小さな点を描く場所。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
就農って何なのか、夢ファームで何ができるのか、一戸(いちのへ)ってどんなところなのか。 マイみちストが肌で感じた「農家への道」をそれぞれの目線で紹介します。
まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/56479328/12918

夢ファームに集う、3つの「チャレンジ」

 

夢ファームでさまざまなお話を聞きながら随所に感じたことがある。それは、ここがチャレンジの詰まった場だ、ということだ。

1つ目は近隣の農家のチャレンジ。
夢ファームに通うのは2年間の研修生だけではない。数日、数時間など短期で、ベテラン農家の方々もくるのだそうだ。ある方は自宅でりんどうを栽培していて、夢ファームでりんどう以外の作物に携わり「気分転換」する、という。見慣れた作物、繰り返される作業からしばし離れ、ここに来て他の研修生と話をすることも、自宅とは違う作業をすることも「楽しみに来てくれている」のだそう。

専門分野外のこと、というのは驚きと発見に満ちている。本屋さんで、初めて足をとめた棚の本を手にとるような。そして専門分野で悩んでいることを解決する糸口が、その初めての本棚から見つかることはよくあるのだ。農家の方からすれば「気分転換」だったり、「楽しみ」だったりもするのかもしれないが、夢ファームで新しい作物に出会うこと自体が、チャレンジと言えるのではないだろうか。

2つ目は研修生のチャレンジ。
調べてみると、岩手県内だけでなく他県にも農業を指導してくれる施設はたくさんある。だが話を聞くと、指導する作物を1種類の作物に絞っている施設も少なくはないようだ。「この作物に決めた!」という方にとっては、一つの分野に絞って学べるそういった施設の方がぴったりなのだろう。

トマト、りんどう、しいたけ、ネギ、じゃがいも、にんじん、ほうれん草に小松菜。「いろいろと試すのが好きなんです」そう笑って話す高橋先生の指導のもと、夢ファームで育つ作物は、花、野菜など20種類を超える。そして、研修生はその中から取り組む品目を選択する。

わたしがもし研修するとしたらできるだけ多くの作物を育てたい。なぜなら、2年後の独立の時にベターな選択をしたいから。そして農業について経験値が少ないからこそ、独立したあとの引き出しとして他の作物についても知っておきたいから。

ここには試すことが大好きな高橋先生がいる。その先生と、他の研修生と、踏み入れたばかりの農業という世界でいろいろ覗いて、触って、動かして、考えて。たくさんのチャレンジができるのが、夢ファームだ。

3つ目は夢ファームの、新しい技術へのチャレンジだ。
IT化の波が来ているのは、農業だって同じ。新しい技術がどんどん開発されている。そんな技術を試してみたい!と一般的な農家が考えたとしても、1台数十万、数百万という機械を導入するというのは、なかなか即決が難しいだろう。しかも、効果があると証明されていない機械だったりしたら、なおのことだ。

しいたけのハウスで作業をさせてもらったあと、他のハウスのなかも案内していただいた。なるほどなあと感心したのが、小松菜とほうれん草の苗があるハウス。上の写真を見ていただくとわかるように、左には穴の空いた黒いマルチ(ビニール状のシート)がかかっていて、右には同じように穴の空いた白いマルチがかかっている。これは、色の違うマルチで同じ時期に植えた苗の生育がどう差がついていくか「試し」ているのだそうだ。夢ファームの数あるチャレンジのなかの一つだ。

この他にも、夢ファームでは二酸化炭素発生機(二酸化炭素の量を調節し、作物の光合成を助ける)や、側窓自動開閉装置(ハウスのなかの温度に合わせ、ハウスの横にある窓を開け閉めすることで、ハウス内の温度や二酸化炭素などの環境を整えるための機械)を導入し、効果を検証している。

「普通の農家ではできないことを、わたしたちが代わりに試すんです。そのための場所でもあるんですよ」。白っぽい光に満ちた、明るいハウスのなかで高橋さんが話してくれた。夢ファームは、農業を前へ前へ、力強く前進させるためのチャレンジの場でもあるのだ。

 

「個性がさまざま」は、楽しいことだ

夢ファームは農業の研修をする施設。つまり、先生がいる。正式な役職は農業担い手育成指導部長。(研修生のみなさんも先生、と呼んでいたのでわたしもそれに習って先生、と呼ばせていただこう)今回お話を伺ったのも、その先生である、高橋寿一(たかはし としいち)さんだ。高橋先生は夢ファームの前の職場では品種改良などをする施設に勤めていたのだそうだ。農業についての知識や経験はここでお伝えする必要もないほど豊富で、専門知識のないわたしでは十分に説明できそうもないので割愛させていただくが。

高橋先生とお話している途中、何度も形を変えて出てきたフレーズがあった。そのフレーズの根っこを一言で表すなら「“個性がさまざま”なことが、楽しい」。

農業に向いている人って、どんな人でしょう?という話題の中では、「いろんな人がいることが、なにより楽しいね」という言葉で。作物の種類についての話題の中では「いろんなものを作ってみた方が楽しいでしょう!」という言葉で。

この夢ファームにある、多くのチャレンジの土台には高橋先生の「いろんなタイプの人がいていい、それが楽しい」と言える、気持ちの広さがある。

夢ファームの研修は2年間。
会社員だったら、2年目ってどんなことができていただろうか。社会人2年目、24歳の時、わたしは関東のホテルに勤務していた。配属先はフロントだった。毎日毎日、数百件のチェックイン・チェックアウトの作業と、お客様の多岐にわたる質問と要望に応えつづけていく。

入社したばかりのころは何もかも初めての業務ばかりで毎日緊張の連続。失敗も山ほどしたけれど、そのたびに一つずつわかるようになり、視界がじわじわと広がっていくような嬉しさがあった。

そんな毎日を1年過ごし、2年目になると、1年間に何度かあった大きなイベントも全部2巡目、なんとなく勝手はわかっている。日々の業務にも慣れと余裕ができて、作業のうわべはわかったような気になってくる。

大きな決断をせまられるような場面では上司や先輩が助けてくれる。逆に、新卒で入った子に教えるくらいには仕事はできるようになった。中身はまだまだなのに、外側のプライドばかりが大きく膨らんだ風船のような危うさ。わたしの社会人2年目は、恥ずかしながら、そんな中途半端な感じだった。

夢ファームでは1年目は座学の研修や現場の作業を通して基礎を身につけ、2年目は日々の研修と並行して、1年間、自分の決めたテーマで研究をする。2年後に独立するスタートラインが見えている分、そこへの助走期間とも言えるのかもしれない。ここで研修生として学ぶ間に、農業や作物についての知識技術はもちろん深まる。それと一緒に、自分で判断をすること、決断することを学ぶ期間にも思えた。

もう一つ、高橋先生のお話の中で「すごくいい仕組みだなあ」と思ったのが研修期間中に各作物の部会に参加できるということだ。部会、というのは同業者組合の役員会議、に近い役割を持っており、それぞれの作物の先輩農家さんと直接つながりを持つことができるのだ。

これには本当に驚いた。

他の業界で例えるなら、起業を考えている若い会社の社長が、同業他社且つ大企業の社長から教えを請うようなもので。そんなこと、ビジネス界隈では稀なケースだと思うからだ。独立したあとの選択、決断の連続。農家同士でなければわからないような悩み。つまずいたときに、アドバイスを貰えるような場所を、巣立った夢ファーム以外にも持つことができる。しかもそれを研修期間中から自分で準備していけるというのは、わたしが研修生だったら嬉しい、頼もしい仕組みだ。

感心したことや、嬉しく思ったことばかりを勢い良く書いてきたが、なんにだって表があれば裏がある。夢ファームにも改善していきたい点がいくつかあるという。農業での所得は、独立してすぐはなかなか安定しない。そのため、更なる努力やチャレンジが必要になる。所得については、国の給付金などの活用もポイントになるそうだが、「所得の不安定さ」はウィークポイントの一つなんです、と高橋先生が話してくれた。

「所得の不安定さ」という話を聞きながら思い出したのは、少し前にお会いした高校生や大学生の方々の話。

彼らと話していると「自分にとって価値があると思えるものに、より多くの時間をかけたい」という意思を会話の中に強く感じた。彼らは、生まれた時からインターネットや携帯が身近にあり、私たちよりもずっと多くの情報に囲まれて育っている。

彼らは「自分にとっての価値を追いかける」ということがすごく上手だなあと思うのだ。

学業という本業を持ちながら、得意なことを発信し続けたり、大人顔負けのレベルで趣味を極めたり。

どちらも諦めなくていい。どちらも大切にできる。

そんな10代を見ていると、農業の「所得の不安定さ」というデメリットの裏には、「自分で考えて動ける自由さ」というメリットがあるということに気づくのだ。

会社員という経験だってそうだ。広報でも、営業でも、ITでも。サラリーマンとして会社で得た経験や、昔から得意だったこと、趣味で続けていることなど組み合わせ、農業プラスαの強みにしていくことができる。

高橋先生も言っていたことだが、「異業種から農業を始めた人は、前職の知識や好きなことを農業に取り入れるのが上手」なのだそうだ。

会社の中では当たり前だったことは、一歩外に出ればあなたの武器になる。

あなたが「価値を感じているもの」を「農業」という主軸に組み合わせていくことで、あなただけの色が生まれるかもしれないのだ。

 

色、といえば、中学校の美術の時間に、風景画を描いていたときのこと。木を描きたかったのに、思った緑と違う色を画用紙にのせてしまった。「間違えた!」というわたしに、先生は「失敗の線なんてないのよ。その線を生かすの」。と柔らかく伝えてくれた。

おだやかな声色だった、もう顔はおぼろげにしか思い出せない美術の先生。おおらかで、外に開けた考え方をする先生だった。夢ファームの高橋先生と少し重なる。

そんな高橋先生がいる夢ファームという場所は、「自分の色を探し、点を描ける場所」だと感じた。

自分が育てている作物の他のものに触れに来る近隣の農家の方は、「新しい作物へのチャレンジ」という点を描く。今まで引いてきた線とは少し離れた位置に、違う色で。

サラリーマンから研修生になった方も、今まで引いた線の次のページにまず点を描く。そして線を引き始める。たくさんの作物に触れ、失敗し、悩む、その度に点を。そして2年後には、その色とりどりの点をみつめ、つなげて、一本の線をまた引き始めるのだろう。

あなたの人生が大きな画用紙だとしたら、そこにはどんな色でどんな絵が描かれているだろうか。

点のなかには「正直描かなきゃよかった」みたいな後悔の点も、あると思う。(わたしには、たくさんたくさん、ある)

でも間違いではない、間違いなんてない。その色を、形を、生かすのだ。そう思うと少し前を向ける。

 

あなたの画用紙には、まだ余白はありますか?

その余白に、「農業」という点を描きはじめてみてもいいかも、そう思ったら、夢ファームを思い出してほしい。今までのあなたが描いた絵を「きれいだね」といってくれる先生と、彩り豊かな研修生の仲間たちが待っている。そして、あなたが新たな一歩を描きはじめことを、きっと一緒に喜んでくれる。

夢ファームでわたしが過ごせた時間は、わずかではあったけれど。

それでも、ハウスに入り野菜に触れ、先生や研修生の方とお話した時間は、わたしの画用紙にも小さな点として描かれた。驚くほどにはっきりと。

今まで「農業」という職業を縁遠い仕事だと、少し自分から離して考えていたのかもしれない。

漁業も、会社員も、農業も、自営業も、医者も、みんな同じケースに入った絵の具。自分の画用紙を何色に彩るのか決めるのはあなた自身だ。

わたしは、もう「農業」という色だけを、ケースの外に置いてしまうことはしない。

今までに使ったことがない色だからこそ、チャレンジしてみる価値があると今は思っている。

もしかしたらチャレンジした「農業」の小さな点が、あなたやわたしの画用紙に、長く美しい線を描いていく可能性だってあるのだから。

 

\新・農業人フェアに出展します!/

平成30年2月10日(土) 10:30〜16:30
開催場所:東京都豊島区東池袋3-1-1 池袋サンシャインシティ
  ワールドインポートマートビル4F 展示ホールA-1〜3
http://shin-nougyoujin.hatalike.jp/schedule/tokyo_20180210.html
アクセス:東池袋駅より徒歩3分、池袋駅より徒歩8分
主  催:リクルートジョブズ

 

「はじまりは夢ファーム」〜新規就農者のための農業研修機関
http://ichinohe-yume.com/

 この記事を書いた「マイみちスト」
(すがわらまり)
盛岡市在住。聴くこと、撮ること、書くことを通して、「伝わる」ためのお手伝いを仕事にしています。

この記事が気に入ったらシェアお願いします

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

感想をお待ちしております

*

CAPTCHA