まいにち・みちこ【東北 道の駅 日刊マガジン】

進む自分に似合う一着を。私がみつけた「わたし」の服。

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人生は当たり前の毎日が重なる一冊の本。読んだあなたのその本に挟んでいく栞になるように、日々が少し彩るようにと思いながら書いていきます。満月と新月の頃に更新。
まいにちみちこ編集室
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今回ご紹介するお店に初めて足を運んだのは、昨年の秋だった。

あの日は10月にしては少し肌寒い日で、わたしは会社帰りのスーツ姿のまま菜園のpen.に向かったのだ。

その日はオーダーしてから心待ちにしていたjapen®の受け取りの日。

お会計を済ませ、店主とおしゃべりしていたら、もう一人、japen®を受け取りにきた女性がお店に入ってきた。印象に残ったのは、落ち着いたトーンでゆっくりとお話しをする感じや、ピンとした背筋、指先まで丁寧な所作。カジュアルな装いなのに、たおやかで。なんだか目が離せなかった。

そのときお会いしたのが、菜園にあるLicht(リヒト)のオーナー、吉田晃子さん。

あれから1年と少し経つ。思えばあの秋の日は、わたしが洋服への考え方を変えた分岐点だった。

手書きの可愛い看板を目印に、ドアを開ける。

わたしは、空気がいい、と思える店が大好きだ。居心地がいいな、また来たいなと思わせてくれる場所の空気は、淀みがなく、清潔で、あたたかい。香りともまた違うもので、商品や内装はもちろん、BGM、お客様と店主が交わした会話までもが、全部空中に溶けて出てお店に漂うような、そんなイメージ。空気が好きな店は、何度も何度も通ってしまう。

近況を話しながら、店内を見回す。「お洋服や小物が、いちばんキレイに見えるように」、と晃子さんが言うように、袖に工夫がある洋服は袖を少し折り返すようにたたんであり、一目見て「あ、袖がかわいい」、とわかるように並べられている。たたみ方一つにも、晃子さんの洋服への愛情を感じる。

洋服だけではなく、メガネ、靴下、アクセサリーなど、店内にあるものはどれも洗練されていて「ほんもの」で。心惹かれるものばかりだ。

その中でも、とびきりお気に入りの洋服はOwn GArment productsのものだ。紺色のワークパンツを試着したときの感覚は忘れられない。

試着なので当然初めて履いたはずなのに、昔から愛用していたかのように肌に馴染む。試着とは思えなかった。

晃子さんに笑われながら、いろいろなポーズを試した。窮屈さも全くなく、シルエットも美しい。それに加え、洗濯機で洗えるというタフさ。素敵すぎる。

このワークパンツは、欲しかったパンツの条件を満点以上に満たしてくれた。今でも週に何度かは絶対に履く、相棒のような一着だ。

そんな相棒を作ってくれたOwn GArment productsは、秋田県男鹿市にアトリエがあり、ご夫妻で洋服をつくっている。お二人が主催している月に一度の「ひのめ市」というイベントに伺ったとき、ご自身の作った服をみながら、こんなことをお話ししてくださった。

「僕たちは職人ですから。服にこだわりを持ち、いいものを作ることはできるんです。だけど、接客はそんなに得意じゃない。お客さんが服を手に取ると、途端に何も言えなくなっちゃう(笑)晃子さんは、僕たちの作った服の良いところをちゃんとわかってくれて、お客様にていねいに、過不足なく伝えてくれる。ほんとうにすごいことです。リヒトとご縁を頂いて、お店に置いてもらえて、よかったなあっていつも思うんです。」

わたしも、相棒のワークパンツとの出会いがリヒトではない場所だったら、これを買っていなかったかもしれないな、と思う。実は、最初は他のパンツを気に入って試着したのだ。でもしっくりこなくて。晃子さんが「こっち、合うんじゃないかな」そういって選んでくれたのが今の相棒なのだ。

作っているご夫婦のこと、見ただけではわからないような細かな縫製のこだわりのこと、私の仕事のことや、今まで買った洋服との組み合わせ方。晃子さんとそんな話をしていたら、それまで気にもしていなかったのにだんだん着てみたくなって。いざ着てみたら……、というわけだ。

思えば、わたしはリヒトで「買わなきゃよかった」、と思ったことが一度もない。

買ったのに数回しか着なかったり、家で着たら全然似合っていなかったり。他の服屋さんではそれなりに失敗もし、後悔したことがあるのに。

なぜだろうと考えてみると、晃子さんが、お客様に対しても商品に対しても正直だからではないか、という答えに行き着く。

わたしは、洋服に対して第一印象が良すぎると、よく考えずにえいっ!と買ってしまいそうになる。似合うのか? とか冷静に思う間もなく即決で財布を開いてしまう。(気をつけたい……)

そんなとき、晃子さんはにっこりと、でもはっきりと、「ちょっとちがうかもね」と言ってくれる。そして、その「ちょっとちがう」のがなぜなのかを教えてくれた上で、色違いや形違いを勧めてくれるのだ。

だからだろう、後悔なんて本当になくて。あるのはただただ、日々の満足。朝、袖を通すたびに「やっぱりこの服、似合うな。うん、いい」、と、鏡の中の自分がちょっと頼もしく思える。

ちょっと、なのだが得難いうれしさなのだ。

少し前に、リヒトで暖かそうなニットを買った。

お会計を終えて、晃子さんが洋服を包装してくれるのを見ていた。

あんまり綺麗にしてくれるので驚いて、「ごめん、自宅用なの!プレゼントじゃないよ!」と慌てて伝えた。

晃子さんは笑って「自分に贈るんだよね」といって、子どもが宝物にしたくなるような透き通る包装紙で、わたしのニットを包んでくれた。

自宅に帰り、そっと紙袋からニットを取り出す。リヒトの空気がふわりと香る。ゆっくり、ゆっくりと包みを開ける。

自分で買ったはずなのに、本当にだれかからプレゼントされたように、ぽかぽかしてくる気持ち。

このニットを作ってくれた人の時間も、晃子さんの心遣いも、お洋服と一緒に受け取ったようだった。

洋服には時代があり流行がある。雑誌を読み、ネットをみて、それを追いかけて選ぶこともそれはそれで楽しい。

だが、自分はどうなりたい? 自分が変化していきたい方向はどこ? そんなことを考えながら洋服を選ぶのは、もっともっと楽しい。答えは外にはない、自分の中だ。

新しい一年のはじまり。あなたは今年、どんな風に変わっていきたいだろうか? 

顔や体はそう簡単には変わらない。だが、自分の一番外側を包んでくれる洋服なら、変化していくあなたに追いついてくれるかもしれない。それがほんとうの「あなたらしい服」だ。

リヒト(Licht)はドイツ語で「光」。

私が「わたし」の服を探すのに光る道標を見つけたように、あなたの道標ももしかしたら、ここ、リヒトにあるかもしれない。

 

 

ご覧いただきありがとうございます。菅原茉莉です。

ここからは編集後記。どうぞお付き合いくださいませ。

 

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 この記事を書いた「マイみちスト」
(すがわらまり)
盛岡市在住。聴くこと、撮ること、書くことを通して、「伝わる」ためのお手伝いを仕事にしています。

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