春はいつになったらやってくるのだろう。

西目屋村では乳ヶ穂滝(におがたき)が氷結するほど、今年は寒かった。
津軽の3月は、春の気配を感じては遠ざかり、非常にやきもきします。
そして、弘前に桜が咲くのを津軽の人達はじっと、寒さに耐えて待っている。
さて、僕は元々研究者でした。
弘前の地でずっとキノコの毒素について研究していて、人様のなんの役に立つのだろうと、疑問に思いながら博士課程で研究していました。
赤血球に付着し、高分子の複合体を形成して穴を開け、破裂させるタンパク質の研究。
決して退屈な毎日ではなかったものの、研究そのものの意味や、博士号を取得しても就職できないという、社会の現実への不安もあり、それを紛らわすように、趣味に没頭していきました。
当時ハマっていた趣味は温泉巡り。
弘前市では飽き足らず、お隣りの平川市まで自転車で片道17km程。

平川市は温泉大国で、全国の温泉ファンにも名の知れた、湯量が豊富な古遠部温泉や、エメラルドグリーンのお湯が流れる新屋温泉等、非常に泉質のいい、バラエティに富んだ温泉が数多くあり、全く飽きることはありませんでした。
自転車の汗を平川の温泉で洗い流し、また自転車で汗をかいて弘前まで戻る(笑)
その後、またシャワーを浴びるという、なんとも空虚で意味のなさない行為。
そんな自らの暴挙に疑問を感じつつ、平川にはお気に入りの食堂があり、よく通っていました。

その名も「味助」さん。
ココの焼きそばは、今まで食べた焼きそばの中でも最強だと思っています。
平川市尾上地区は「尾上やきそば」が有名で、モチモチの太麺と豚肉・玉ネギのシンプルな具が特徴。

元気なおばちゃんが作る「太麺焼きそば」¥600は麺は不規則なちぢれとしっかりとしたコシ、そしてラードでしっかり炒めており、甘めの特性ソースが美味い。

具も豚肉と玉ねぎの他、キクラゲのコリコリとした食感がいいアクセントになっていて絶品です。
東北の焼きそばの聖地、横手から遊びに来た友人も、すごく絶賛していました。
後に色々あって、研究者を辞めサラリーマンとして働き、当時のことは黒歴史として思い出さない様にしていました。
ところがこの前、とある研究機関の報道発表に、僕が命名した毒素が、アフリカの難病「眠り病」の解明に役立つかも知れないという、ニュースが飛び込み、驚きのあまり、牛乳を吹き出しそうになったのを覚えています。
人生は何が起こるかわからない。
意味の無いことは無いのだなと。
温泉通いや食べ歩きも無駄だと思っていたけれど、そこで身につけた知識は、ブロガーとして今でもすごく役に立っている。
自分の人生をうつむかず、前を向いて肯定し、全てを糧とする。
じっと耐えながら、うつむいて待つ春と、前を向いて待つ春、見える視界はおそらく違うだろう。


弘前の桜が咲いたら、昔のことを思い出しながら、ロードバイクでまた尾上の焼きそば食べに行こう。
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