東北をフカボリ!「道の駅」日刊ウェブマガジン「まいにち・みちこ」

まいにちみちこ

まいみち編集室
(まいみちへんしゅうしつ)
日刊ウェブマガジン「まいにち・みちこ」と季刊誌「michi-co」の運営と営業と取材と編集を行っています。

第22回 秋田街道(生保内街道)

特定非営利活動法人「東北みち会議」執筆による。東北各地の街道団体との連携や、地域づくりグループとの交流を強めるとともに、東北150ヵ所を越える道の駅の発展に貢献できる、「みち」のパートナーシップ形成を目指す。
「michi-co」2017年9月25日号連載記事
 

交易と戊辰戦争の道

 

湯の道をゆく

『田沢湯元道中画報』(県指定有形文化財)と名付けられた画帳が残されている。明治10年(1877)に描かれた一冊で、作者は大坂東岳という絵師である。東岳は刈和野(秋田県大仙市)に天保13年(1842)ごろに生まれ、角館の絵師・武村文海に師事した。同門に日本画家の平福穂庵(百穂の父)がいたが、師匠からは穂庵より画才があると評価され、「文嶺」という雅号をもらっている。しかし、穂庵が東京に出て評価が高まるにつれ、穂庵への嫉妬から後半生は荒れた生活を送り、非業の死を遂げたとされている。

東岳は大仙市長野にある、「秀よし」の醸造元・鈴木酒造店の当主に、パトロンのように面倒を見てもらっていた。この画帳は54場面からなる旅のスケッチ帳で、現在も鈴木家が所有している。「秀よし」がある長野をスタートして、角館、卒田の金精神社、潟見峠(薬師峠)、田沢湖などを巡り、乳頭温泉郷の鶴の湯までの旅程が描かれている。

筆遣いは軽妙で、絵からは旅を楽しむ様子が伝わってくる。卒田の金精神社で金精さんを見て頬を赤く染める参拝の女性、鶴の湯で混浴を楽しむ男女などから、当時の世相が見える。また、街道沿いの様子もよくわかり、記録の面からも貴重な画集となっている。

 

草彅家住宅 江戸時代末期に建てられた曲り屋形式の上層住宅。国指定重要文化財(仙北市田沢湖生保内下堂田)

 

盛岡と久保田を結ぶ最短ルート

岩手側では秋田街道、秋田側では生保内街道と呼ぶ道は、盛岡~国見峠~角館を指す場合が多い。角館から先、六郷までを生保内街道とすることもあるほか、大曲まで延びる角館街道と、旧・協和町(現・大仙市)の境まで延びる繫街道があった。盛岡から久保田(秋田市)に向かう最短ルートはこの繫街道(現在の国道46号)となる。3本とも奥州街道と羽州街道を結んでいた。

秋田街道は太平洋側と日本海側の交易ルートだったが、幕末の戊辰戦争では、盛岡藩兵が秋田側に攻め入る、戦の道となった。いまでも生保内や角館には、戦死者の墓や慰霊碑がいくつも残されている。

いまも岩手県側の街道の山道が残されていて、雫石町にある道の駅・雫石あねっこの道路向かいには、秋田街道を示す木柱が立っている。標高が940メートルと、奥羽山脈越えの街道でも一、二の高さの難路だったが、明治9年に開通した明治新道の峠名は、秋田県側の仙北と岩手から合わせ取った「仙岩峠」と、大久保利通によって命名された。

 

『田沢湯元道中画報』に描かれた玉川・刺巻の渡し(仙北市田沢湖刺巻)

 

生森(おおもり)一里塚 秋田街道の盛岡から三つ目の一里塚。旧国道をはさんで左右両塚が残っている。県指定史跡(雫石町七ツ森)

 

橋場関所跡 盛岡藩の藩境を守っていた関所跡。橋場集落のはずれにある(雫石町橋場安栖)

 

的方御境塚 国見峠の秋田藩側に立つ。「従是西南秋田領」と刻まれ、近くに「従是北東盛岡領」の石碑が立っている(仙北市田沢湖生保内沢)

 

秋田おばこと雫石あねっこ

人の誉れ高い秋田おばこと雫石あねっこは、この秋田街道周辺に住まいする。一夜のうちに峠を行き来し娘のもとに通った若衆の夜這い話が、生保内と雫石に残されている。そのためもあるのか、いまでも県境を越えた結婚話は少なくない。

秋田民謡の「ひでこ節」は、岩手県三陸の下閉伊地方の「そんで節」が伝わったもの。また「あねこもさ」も岩手の「鋳銭坂」が秋田に伝わったとされている。いずれも国見峠を越えたものである。

徳川幕府のための馬買い衆が行き来し、日本海と太平洋の塩が時代によってそれぞれ運ばれた。さまざまな産物が行き来した峠には、物資の輸送を助ける「助け小屋」が藩境に設けられ、荷を運ぶ人の便を図った。

 

滝夜叉姫塚 滝夜叉は平将門の娘とされる。かつては「村祖姫塚」の碑があったとされるが、豪族の墓説もある(仙北市田沢湖生保内字堂ノ前)

 

野村の仁王面 秋田県仙北市、大仙市、横手市などの村はずれには仁王面、鹿島様、鍾馗様などの村境を守る人形や面が多数置かれている(仙北市田沢湖生保内野村)

 

菅江真澄絶筆の地碑 江戸時代の紀行家・菅江真澄は肝煎大石家で長患いを過ごし、その後死亡した(仙北市田沢湖梅沢)

 

角館武家屋敷 角館佐竹北家時代に整備された町割がいまも残る(仙北市角館町)

 

街道周辺の道の駅「道の駅・雫石あねっこ」(雫石町)

 

街道コラム

国道106号と46号は太平洋と日本海をほぼ真横に結ぶ国道で、その沿線には7つの道の駅があり、「ルート106・46『道の駅』交流会」を組織している。共同販売会のほか、情報コーナーの設置、道の駅カフェ、クイズラリーなどさまざまな取り組みで、道の駅の広域連携を行なっている。参加道の駅は「みやこ」「やまびこ館」「区界高原」「雫石あねっこ」(岩手県)、「協和」「あきた港」「てんのう」(秋田県)の7駅。