東北をフカボリ!「道の駅」日刊ウェブマガジン「まいにち・みちこ」

まいにち・みちこ【東北 道の駅 日刊マガジン】

第15回「飲食店でのクレームについて」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
シンガーソングライター坂本サトルが出会った音、風景、そして人…
まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/34975682/18538

先日、仕事帰りに男ばかり4人でとある居酒屋に入った時のこと。

この日は日曜だったため何軒かの馴染みの店は全てお休み。仕方がないのでセリ鍋の看板に惹かれて飛び込みで入った初めての店だった。

店内は意外に広く、僕らはテーブル席のみで構成された一角に案内された。そこには4人がけの席が12卓あってそのうち埋まっているのは僕らも含めて3卓のみ。普段からこうなのか時間が遅かったからなのかはわからなかったが、とにかく空いていたのだった。

そのテーブルエリアの図を見て頂きたい。

僕らが座ったのはA卓。C卓とD卓に客がいたこともあって一番離れた席を希望したのだ。

男4人にはちょっと狭めのテーブルと椅子だったのと、荷物置きらしいラックもスペースもなかったため、僕らは「お客さん来たらどかしますからここに荷物置かせて下さい」と断ってからB卓の椅子の上に荷物(トートバッグ3名とパソコンバッグ1名)を置いた。

料理やお酒のメニューから察するにここはいわゆる「一軒目用」のお店で、すでに夜10時を回っていたからこれから店がどんどん混んでいく…とは思えなかった。

あらためて言うが12卓のうち9卓が空いているのだ。僕の酒飲み人生31年の経験から許される範囲の行動と判断したし、同行した他の3人も全く気にもせずに荷物を置く。すると、ここでアルバイトと思われるちょっぴりやんちゃっぽい青年が僕らに向かって意外なことを言ったのだ。

やんちゃ「ここにお客さん来るかも知れないんで荷物置かないでもらえますか」

私たち「荷物置きがないのでここに置かせてもらいたいんだけど。お客さん来たらどかしますよ」

やんちゃ「いや、お客さん来るかも知れないんで」

これだけ席が空いているのに次の客が来たらわざわざ僕らのとなりに案内するというのか?

僕らはそれ以上何も言わず顔を見合わせて苦笑し、荷物を回収してそこらに無理矢理置いた。ある者はヒザの上に、ある者は背中の後ろに、またある者は「ここに荷物を置いたらお店の景観上みっともないだろう」という場所に。営業上はこっちの方がよっぽど他のお客さんの迷惑になっていると思われたが、やんちゃ君はそれでいいんだよ、とばかりに納得して厨房の方に消えた。

スカスカの店内で、僕らは窮屈な格好で座っている。

料理はまあまあだったが残念ながら「店員の態度がどうであれ是非ともまた食べたい!」と思うほどではなかった。僕らはそのやんちゃ店員にそれ以上声はかけなかったし文句も言わなかった。頼んだものを食べ、飲み、お金を払ってそこを出て、2度とこの店には来ないし人にも薦めない。それでおしまい。

別のある日、仙台でランチに牛タンを食べようということになった。

付近にある有名店を3軒まわったがどの店も50~60人ほどが行列を作っていてとても並ぶ気にはならなかった。あきらめて「カレーにしようか…」と思っていた時に僕らはその行列の1つが途切れたあたりに牛タン屋の看板が立っているのを見つけた。

そのビルの奥へと続く通路の向こうで営業しているとのこと。写真を見た限りでは有名店のメニューと大差ない。(値段も大差なかったが)よし、一か八か行ってみよう。旨ければラッキーだし、そうでなくとも話のネタにはなる。

さらに伸びている有名店行列を横目に通路へと入り、突き当たりにあったそのお店に入った。

予想に反して店内は清潔で明るく、よくある定食屋といった雰囲気。しかし客がいない。僕らの他にいた1組だけの客も食事を終えて出て行ってしまい、すぐに店には僕らだけになった。

ほぼ隣りにある有名店には大行列。ここは僕らだけ。料理にそれほどの差はない。暇そうな2名の店員。その割りにはすぐに出て来ないタコわさびと枝豆。付けっぱなしのテレビ。同時に鳴ってる有線放送…。

食事中の話題は「どうやってこの店を繁盛させるか」となった。

俺ならどうするかなあ。まず有線かテレビのどちらかのスイッチを切る。次にタコわさびと枝豆はすぐに持っていくようにスタッフに念押しし、そのあと牛タン定食の値段を有名店より2割りぐらい下げて、行列に並んでる人にチラシを渡す、かな。「並ばず入れる牛タン屋。有名店ではありませんが味は保障!価格も安い!」とか書いて。有名店の人には叱られるだろうが自分の店をなんとか切り盛りするためにはそのぐらいカラダ張らないと。

出てきた料理は有名店ほどのクオリティではなかったが、それでも「牛タンを食べたい!」という欲求を満たすには充分だった。客が増えて売上げが上がれば料理のクオリティも上げられるだろうし、いつか有名店の仲間入りが出来るかも知れない。

アイディアは色々と出たがもちろん僕らはそれを店員に伝える事はない。ここでも食べて、飲んで、お金を払ってだまって店を出た。また誰かを牛タンに連れて行こうとする時に3軒とも行列50名超だったら来るかも知れないし来ないかも知れない。

最初で最後かも知れないその店をあとにして通りに出ると、さきほどより更に伸びている有名店行列…。

クレームは言う方も言われる方もとてもエネルギーがいる。

年を追うごとに少しずつ減っていく体力と気力をそんなことに使ってる余裕も暇もないのだ。さらに年々「どこで飲むか?」ではなく「誰と飲むか?」が重要になっていく。だから馴染みの店にばかり通うようになるんだなあ。

多くの人は嫌なことがあってもお店に言うこともなく、ただ黙ってその店から離れていく。職種は違えど自分にも当てはまる事があるはずだ、と胸に手を当ててみる2018年、春でありました。おしまい。

【おまけ】

諸先輩方に「ミュージシャンは飲食に手を出すな」と口酸っぱく言われているが、自分が通いたくなるような店を持つのが20代の頃からの夢だった。今のところ到底かないそうもない話しだが、今日紹介したようなお店に行く度、そして素敵なお店と出会う度にやっぱり考えてしまう。照明はどうしよう?何を出そうか?どんな人を雇おうか…

写真は今年の花見での1枚。ワインの品定め中(ほんとは良くわかっていない)の私。うむ、このワインなら俺の店でも出せるぞ。

 この記事を書いた「マイみちスト」
(さかもとさとる)
1967年青森県生まれ。1992年、JIGGER’S SONのボーカル、ギターとしてメジャーデビュー。1999年「天使達の歌」でソロ活動開始。自身の活動の他、楽曲提供、プロデュース、映画等の音楽制作、ラジオパーソナリティとしても活動中。
この「マイみちスト」の作品

SOUND of SURPRISE

この記事が気に入ったらシェアお願いします

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
皆さまよりお寄せいただいた感想はこちら (4)
  1. なな さん

    ☆サトル様☆の☆お店☆☆☆妄想…抱きまくりデス☆
    ☆サトル様☆の楽曲が聴けて☆ラジオが聴ける☆今でも☆
    ☆サトルワールド☆が感じられて幸せなのに…
    ☆サトル様☆の☆お店☆☆☆あこがれ過ぎデ~ス☆
    いつも☆サトル様☆の☆オーラ☆を感じながら☆
    ☆観☆聴き☆読み☆いつもココロ震え☆ドキドキしております(^^♪

  2. なべまる君かわいい さん

    どんなに料理が美味しいとしても、接遇ひとつで、すべて台無しになり、お会計する時に、2度とここには来るものかと思いながら しぶしぶ払っているような気がします。この人達は、売上を上げる気があるのか?ないんだろうなぁと…。コンビニもそうです、近くの感じの悪いお店より、多少遠くても感じの良いお店に自然に足が向きます。毎日 笑顔で客の前に!とまでは言わないが、それが接客というもの、サービス業というものではないかと…思います。料理の味を落とすも上げるも、あなた達の接客にも関係がある事を知って欲しいですね。※ワインソムリエ?の写真、ステキです。

  3. はのひい さん

    『いかに心に寄り添えるか』
    この視点がないなぁと感じました。

    仕事をするうえで、求められてることをキチンとやるって大事なことだと思います。

    ただ、それだけ、マニュアル通りにやるだけではロボットでも出来ることです。

    心のある私たちが出来ること、決まりきったことをやるだけではなくて、どうすれば満足してもらえるのか、より良いサービスを提供できるのかを考えることの方が、仕事としてずっと大事なことなのになぁと思いました。

    サトルさんの音楽は、私たちの心に真っ直ぐ響きます。
    音楽聴かせて頂くたびに『心に寄り添った仕事』されてるなぁって、思います。

    いつも感謝してます。ありがとうございます。

  4. もやしやま さん

    「何を飲むか」ではなく「誰と飲むか」。
    激しく同意です。

感想をお待ちしております

*

CAPTCHA


プレミアム記事
この連載を読む
あなたにおすすめの記事