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まいにち・みちこ【東北 道の駅 日刊マガジン】

シンガーソングライター坂本サトルが出会った音、風景、そして人…

第2回「青森から青森へ」

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まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/34975682/11268

デビューのために上京してから20年以上住み続けた川崎市溝の口(正確には「上京」じゃないか)。住みやすい街だったしマンションも買っちゃったし防音工事もしてスタジオに改修もしてしまった。さらに2003年に独り身に戻ったりもしたので「俺はこの街で1人で気ままに生きていこう」と密かに決めて、死ぬまであの辺をうろうろしているものだとばかり思っていた。

ところが人生なんて、どう転ぶかほんとにわからないもんなんですね。
予想もつかないことが次々に起こって2010年から青森県青森市と溝の口との二拠点生活が始まり、2014年の始めに青森市内にスタジオを作ったのを機に思い切って自宅と事務所を含めた全ての拠点を青森市へと移転させ、約30年ぶりに僕は青森県民となった。

以上のことを客観的に見れば「青森に戻った」という事になるわけだろうけど、状況は少しだけ複雑だ。

僕が生まれ育った南部町、八戸市というのは青森市からは約100キロ離れていて、道路でのアクセスがいまひとつなため移動に約2時間かかる。青森県内のマスコミがほとんど集まっている青森市には25年前にデビューしてから定期的に通うようになったがそれまではほぼ行ったことがなかったため、その青森市に移住した事を「地元に帰ったのね?」と言われると一瞬返事に困ってしまうのだ。
返事に困る理由は単に実家から離れているから、ということだけではない。

「雪」だ。

世の中「青森県=雪国」という認識の人がほとんどだろう。
他の地域に住む方はもちろん、実は青森県民の中にも太平洋沿いの町街にあまり雪が降らない事を知らない人がいるほどだ。

それでは…例えばこれ。
今年正月。帰省していた2018年1月3日朝の実家前。積雪ゼロ。

前日、親戚を送りに行った時の八戸駅前もこう。

気象庁のデータを見ても1月3日現在の八戸市の積雪量はゼロ。
この日の過去81年間の平均積雪が4センチだからほぼ平年並みと言っていい。
もちろん八戸にも全く雪が降らないというわけではなくて、この冬の累積積雪量は11センチとなっている。
昨年11月からこの日まで降った雪の量を全て合計してたった11センチというわけだ。

 

一方、同じく1月3日、仕事始めとなるレギュラー番組生放送のため実家から約2時間走った青森市内に入るとこれ。

片側4車線あるメインの国道4号線がこの状況だ。
こちらも気象庁のデータによれば1月3日現在の青森市の積雪量は39センチ。同様に累積積雪量は273センチ。

上の写真の通り中心街は交通量も多いためアスファルトが見えるところもあるが、そのほんの数キロ手前で撮ったのがこれ。実家の写真と同じ日、同じ青森県内。その距離わずか100キロである。

道路の脇に積み上げられた除雪された雪の山の高いこと!

「人口30万人規模の街としては世界一の降雪量」とも言われる青森市に住みたての頃の僕は、まず駐車場の契約で失敗した。
移住したばかりの秋のある日。全部で60台ほどが停められる近所の駐車場の一画を借りようと不動産屋へと行った。担当はスーツ姿もぎこちない若者。彼から駐車場代を聞いて驚いた。1月~3月までの3ヶ月間が半額になるという。なぜ?
若者「うちの駐車場は融雪入ってないですから。」
融雪とは雪を溶かすシステムのことでそれが入っていない、と。
ご自分で雪の片付けはして下さい、ということだ。
雪国の怖さを知らなかった当時の僕は恐ろしい出来事が待っていることも知らず「たったそんな理由で半額に!?なんてお得!」などと呑気に喜んでしまったのだった。

続いて、ニヤける僕にその若者は駐車場の図面を出してきて「何番の区画にしますか?」と尋ねてきた。どれどれ…と見てみると気になる点が2つあった。

まずは1つ目、道路から離れた奥の方がガラ空きだったこと。「こっちがずいぶん空いてるからここにします」と道路から1番離れた区画を指定。周りを気にせず気楽に駐車できそうだ。ここにします。
すると若者が「なるべく道路に近い方がいいですよ。冬は道路まで出るのが大変ですから」と。
えーそんなもんなんですか。それじゃ道路に近い区画にします。空いてるのは、えーっと…むむっ?ここで2つ目の気になるところ。ほとんどの区画が1台おきに飛び飛びで契約されている。
なんだ、1番道路に近い区画は埋まっているがその隣が空いている。それじゃここで。
と、若者「車に積もった雪を下ろす時の事を考えると隣の区画は空いてる方がいいですよ。作業スペースですね」と言うではないか。「なぜ最初から全部言わない!もうお前が決めてくれ!」と心の中で言って、若者のアドバイス通り道路になるべく近く、なおかつ隣と隣接していない区画に決め契約は完了したのだった。

 

それから数ヶ月が過ぎた冬のある日のこと。青森市に移り住んで初めての冬、である。
昼過ぎに出かけようと外に出ると前日から降り続いた雪が40センチほど積もっている。「一晩でこんなに積もるのか!」と驚愕しながら駐車場に向かって唖然。車がない。正確には雪に埋もれてどこに停まっているのかわからない。これは夢か?
急いでスコップやら手押しダンプを借りてきて慣れない除雪作業開始。あの時の不動産屋の若者の顔は忘れたが「やれやれ感」いっぱいの会話のトーンが思い出される。こういう事だったのか…。
2時間後。ようやく愛車は雪山から掘り起こされ、道路までの道をひとりで作って、なんとか駐車場から脱出したのであった。
汗だく&ヘトヘトになって運転席で深くため息。こりゃあ駐車場代半額にするわけだ…

当時の写真は残っていない(というより写真撮ってる余裕がなかった)ため、雰囲気の伝わるいつかの1枚を。
今使ってる駐車場は融雪が入っているため本当に楽だが車自体にこんな感じで積もった雪は、やはり自分で降ろさなければならない。これで30センチぐらいかな。これも一晩で積もりました。

「この街で暮らしていけるのだろうか」と不安になったあの日から数年が経ち、今では僕も立派な雪国の男となった(多分)。なぜこんな所にこんなにも多くの人が住んでいるのか?と時々本気で思うが、慣れてしまえば本当に雪で困るのは1年で数回だし、冬を耐えたぶん春の訪れには心の底から感激する。桜咲く春はもちろん夏も秋も景色は素晴らしく、実を言えばとんでもない雪景色も映画のセットのようでちょっとワクワクする。道が混んでない。でも合流がへたくそ。駐車場代が安い。しかし立体駐車場が全体的に狭い。飲み屋が分散しているためタクシー移動が増えたがタクシーの運ちゃんはみんな優しい。そして何よりも酒と食べ物が旨い…。
褒めてるのか愚痴っているのかわからなくなってきたが、今は住めば都を満喫している。
太宰治や棟方志功から奈良美智さん、そして吉幾三さんから佐藤竹善兄さんまで。多くの青森出身の優れた芸術家がこの雪国地帯から生まれているのも、厳しくも美しいこの自然環境と関係があるだろう。この先、僕の中でも気がつかなかった何かが開花するかもな、と淡い期待も。

雪国ではない青森から雪国の青森へ。
僕が「青森に帰ったのね?」と言われた時のちょっと困る気持ち。わかってもらえただろうか?

 

最後に青森市内から車で30分ほど。浅虫温泉の夕焼け。
美しすぎて車を停めて何枚もシャッターを切った。

【関連サイト】
気象庁「積雪の深さ一覧表」(毎日更新)
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/mdrr/snc_rct/alltable/snc00.html

気象庁「累積降雪量一覧表」(毎日更新)
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/mdrr/snc_rct/alltable/smsnd_sm00.html

エッセイ「津軽と南部」(坂本サトルブログより)
https://ameblo.jp/sakamotosatoru/entry-11888275691.html

 

※注…道路上で撮った写真は赤信号での停車中にダッシュボードのスタンドに設置したiPhoneを「Hey Siri!カメラ起動!」でカメラモードにし、Apple Watchのリモート機能でシャッターを切りました。例え停車中でも電話には一切触っていませんので念のため。小さな時計の画面を見ながら操作するよりも直接iPhoneのシャッターを押した方が圧倒的に安全だと思うけど。

 この記事を書いた「マイみちスト」
(さかもとさとる)
1967年青森県生まれ。1992年、JIGGER’S SONのボーカル、ギターとしてメジャーデビュー。1999年「天使達の歌」でソロ活動開始。自身の活動の他、楽曲提供、プロデュース、映画等の音楽制作、ラジオパーソナリティとしても活動中。
この「マイみちスト」の作品

SOUND of SURPRISE

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皆さまよりお寄せいただいた感想はこちら (8)
  1. アバター まさみち さん

    楽しみにしてます(^^)

  2. アバター パザパ さん

    お話にスーっと入り混んでしまいました。
    昔仙台の菓子屋で修行していた頃、店主が青森(十和田)出身の方で、よく青森のお話をしてくれました。同じ東北でも違う、同じ青森でも違う、でも親しみがあり訪れてみたいと思いました!素敵な旅をした気分です。次号も楽しみにしています。

  3. アバター もやしやま さん

    私も八戸勤務になって初めて気候の大きな違いを実感しました。
    雪に閉ざされることへの諦め。
    その環境を耐えているという誇り。
    津軽人の複雑な二面性はここから生まれてるのかもしれません。
    県外から異動してきた人がみんな、「青森はいいところだ」と言ってくれるのと同じ響きを感じました。

  4. アバター モーリー君 さん

    厳しくも美しい青森
    冬を耐えた分の春は心の底から感激する…。
    人生そのものですね。
    それにしても、不動産屋の若者の対応には残念です。対応ではなく応対してほしかったですね。

  5. アバター パリパリ さん

    八戸出身で仙台を経て関西在住の私は『雪国』に住んだことも、今思えば冬に訪れたこともありません。
    正月に帰省したと言えば誰もが『雪大変だったでしょう』と労ってくれますが、雪がないことを説明する面倒くささと、ちょっと困る気持ち、よくわかります。

  6. アバター コメは二合 さん

    同じ青森県でも、本当に気候が違いますよね。
    駐車場の話は、雪の少ないほうの青森県人からすると、想像も出来ず、たいへん驚きました。
    大変なこともありながらも、《住めば都》と書かれているように、サトルさんが青森市への愛情を持っていることが伝わってきます。
    サトルさんは、立派な雪国の男だと思いますよ。

  7. アバター マバ さん

    フタフユ、若い頃に青森市内で暮らしました。生憎と8年振りの大雪と巷で騒いだ年。バス通りまで400mほどあり、雪片付けに慣れない福地村で育ったため、泣いた思いでしかありません。住めば都になる前に転勤希望を出して、八戸に戻りました。今は、正に雪のない毎日である南部町住人です。

  8. アバター 白あんおやき さん

    青森県に生まれ、、、何度か県外にも住み戻って故郷の地で生活してますが、都会にはない安心感と不便さでも支障ないと思える精神的なものが、青森県なんでしょーね。諦めたら余裕も持てる。物でなく、視覚と感覚が青森で育み、人を成長させてる。と、思う。サトルさんを通して、歌を通して再確認する気がします。影ながらで、応援致します。

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