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<第7回>大鰐温泉『ヤマニ仙遊館』と『鰐come』へ【前編】

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まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/30920304/27864

本が好きです。

宿でゆっくり本を読むのは、一人旅ならではの楽しみ。

今回は、太宰治ゆかりの宿へ。

 

青森市内から車で1時間半ほどで大鰐町に到着。

明るいうちに場所を確認しようと思いましたが出発が遅くなり、着いたころには真っ暗に。

秋の日没は早い!さすが、つるべ落とし!

 

まあ、駅から3分くらいだし、暗くなっても大丈夫かなと。

しかし、あれ?ない……。

2、3度同じ道をぐるぐる回ります。

 

よろしければ、グーグルマップで大鰐温泉駅から『ヤマニ仙遊館』のルートを確認してみてください。

「えー!なんでこれで迷うのー!まじウケるー!」と誰もが思うことでしょう。

私も、そう思います。

しかし、それでも迷うのが、方向音痴。

宿に電話をしようか思ったその時、ありました!

思いっきり逆方向ばかり見てたし。

宿と同時に、方向音痴に加え右も左も分からない自分も発見しました! 船長!(誰?船長って)

とにかく、着きました。

今夜の宿、『大鰐温泉 登録有形文化財の宿 ヤマニ仙遊館』です。

明治5年創業という、あまりに風情ある建物に、道に迷ったことも忘れ見惚れます。

引き戸を開けると、違う時代に旅したような館内。

駅から3分でも迷うのに、タイムトラベルなんかしたら時空の狭間でえらいことになりそうですが。

歴史を感じる建物ですが、どこも清潔で凛としているので、古びた感じはしません。

ソファーに座り、ゆったりとチェックイン。

今回は6畳間の、一番お手頃な部屋(朝食付き税込み7050円+入湯税150円)を予約。

それが、ありがたいことに宿のお心遣いで、団体で宿泊されている方々が遅い時間に外から戻り少し騒々しいかもと、そちらから離れた反対側の8畳間へ案内していただきました。

 

『椿の間』、化粧室も近いです。

うーん。

いい雰囲気。

広縁の籐の椅子とテーブルが、旅情をそそります。

昔の建物なので遮音性や水回りなどは覚悟していましたが、静かできれい、全くストレスはありませんでした。

部屋に、お風呂とトイレはありませんが、天然温泉の大浴場があります。

温泉で温まってから、隣接のレストラン『WANY』へ。

フロントの方にレストランに行くことを話したら、席を取っていてくださいました。

プロジェクターの正面で、一人でも間が持ちます。

席は2階でしたが、3階には太宰ゾーンが。

 

ご自由にどうぞとのことなので、階段を登ります。

おおー!

お座敷ー!

外套が、大きい!

弘前高校時代、自殺を図った太宰が母親に連れられ『ヤマニ仙遊館』で静養をしたとのこと。

理由はどうあれ、ただ何から逃げるためだったとしとも、その場所が快適であればそれだけでいいと思います。

本は好きですが、太宰の作品はあまり読み込んではいません。

でも、その作品や軌跡に触れると、心を動かされます。

私には私を救ってくれた作品があるように、太宰の作品に救われた方はたくさんいらっしゃるのだと思います。

それが本だと。

 

さて、話はガラッと変わり、生ビールです!

温泉に入った後です!

最高です!

タイルをはめ込んだ木のテーブルも美しい。

生ハムサラダも。

おすすめの、ビーツと牛すじの煮込み。

ビーツの優しい甘味と、かすかな酸味(サワークリームでしょうか)が、まったりとした牛すじとよく合います。

牛すじはトロトロ~。

美味しい~。

メニューを見て、ハンバーグも美味しそうだなと思いましたが、結構お腹がいっぱい。

あと、部屋にあったパンフレットのステーキセットも食べたい。

1日5食だった10代の胃袋と、中ジョッキ7杯飲んで次の店へ流れさらに飲んでいた20代の体力があれば、ハンバーグもステーキセットも今すぐ注文するのに。

おにぎり6個食べたこともあったな。あの頃。

ケーキ5個とか。

若いって恐ろしい……。

やっぱり今のままでいいかな。食費がやばいわ。

 

土蔵を改修した店内は、どこを見ても絵になります。

3階から見下ろした2階の客席。

こちらは、1階のカウンターと笑顔の素敵なマスター。

屋号の入った家具。

おしゃれだけど気さくで落ち着いた、居心地のいいレストランでした。

 

歩いて5秒で宿に戻り、2度目のお風呂。

塩分があるお湯は柔らかく、よく温まります。

脱衣所のかごが、蓮の葉のようでかわいい。

 

床の間にいた、獅子もかわいい。

部屋に戻り、だらだらと本を読んだり、テレビを見たり。

旅には文庫本を持って行くことが多いです。

今回は、嬉野雅道さんの「ひらあやまり」と、知人に勧められて初めて読んでいる、井上真偽さんの「恋と禁忌の述語理論」。

寝心地のいい布団で、至福の読書タイム。

心地いい眠気が……。

このまま目を覚まさなければ、これが最後に見た景色になるかも(要るか?この写真)。

 

ばっちり起きました。

5時半です。

あいにくの雨ですが、山にかかる霧もいい景色。

10月も半ばを過ぎると青森の朝は冷え込みます。

朝は何時からでもお風呂に入れるのが嬉しい。

貸切状態で、ゆっくりと温まりました。

 

朝食は一階の広間で。

庭が見えるように席がしつらえてあります。

ニシンや菊など青森らしいおかずや、リンゴジュースも。

熱々のお味噌汁が、感動的なうまさ。

雨に濡れて濃い緑の庭を眺めながら、しみじみといただきました。

 

チェックアウトまで、また部屋でのんびり。

この鏡台、よくないですか。

正座して化粧をしていると、2割増しキレイになった気分に。

まあ元が元なので、2割増したところで意味は無いのですが。

でも女性のオシャレは、ほぼ自分のためなので(個人的な意見です)、自分が思い込めばいいんです。それで。

窓の外からは、川音が聞こえます。

宵待草&斜陽的な気分(どっちにしろ重すぎ)になったところで、チェックアウトの時間。

PCのコードをまとめたり、ビールの空き缶を片付けたり、一気に現実へ。

 

1階に降りると、玄関に番傘が。

なんかもうここから物語が始まりそう。もしくはラストシーンか。

……階段を降りると、玄関の土間に置いてある屋号が入った番傘が目に留まった。

 「まだ、やまないか」

 つぶやくと、草履に大きな足を通し、引手に手をかける。

 「まあ、お出掛けでございますか。雨が降っておりますよ。どうぞ傘をお使いになってくださいまし」

 背後から聞こえる宿の女将の声に、前を向いたまま手を横に振り無言で答え、引き戸を滑らせた。

 そうして流れ込んできた、朝のキリキリとした寒さが残る湿った空気に触れ微かに眉をひそめると、両手で外套の襟を首に沿わせ、雨の中へゆっくりと歩き出す。

 戸を閉めるその一瞬、長身の背中越しに見えた横顔は端正で、鼻筋がすらりと高い。

 今日のような冷たい雨にあたったら、きっと風邪を引いてしまうのにと、女将は整えられた白髪に映える柔和な笑顔を少し曇らせ、その姿を見送った……

何の話だ、これ。

分からんが、つい。

主人公は、なんとなく男性で。

あと外に写りこんだ自分の車と、玄関のスニーカーが時代に合わないので、加工までして。

 

実際は、「番傘♡素敵ですね~」「お陰様で快適でした~」「大丈夫ですよ。車はすぐそこですから~」と、すっとんきょうな声で話しつつバタバタと車へ走る、風情のかけらもない私が。

 

建物全体の雰囲気も、部屋も、温泉も、食事も、スタッフの方々も、とても素敵な宿でした。

 

……先づは、珈琲でも飲もうかと独り言ち、外套の襟を立てたまま……

はい、外套は着てないですよ~。

タイムトラベルして迷子にならないよう、さっさと現代に戻りましょうね~。

 

ちょっとコーヒーが飲みたいなと、碇ヶ関の道の駅へ車を走らせます。

 

道に迷ったり、ある男の物語が始まったり(終わったり?)して、長くなってしまいました。

この先は次回へと続きます。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。

 

 

 この記事を書いた「マイみちスト」
(はたけやまりえ)
本を読むことが好きで、海底でじっとしている深海魚のような生き物でしたが、気が付くと回遊魚のように移動する日々。本と、写真と、旅と、美味しものと、お酒と、犬と、人と、音楽と・・・ いつの間にか好きなものが増えていることに感謝しながら、青森で暮らしています。

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