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【レシピ付】織物職人の団欒。春の味は大人の味? ふきのとう味噌

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ご近所や祖父母、両親。見聞きした昭和的暮らしとお料理のレシピエッセイ。山形県置賜(おいたま)地方の伝統を、器用な母から不器用な娘へ。受け継がれるはずが失敗したり忘れたり。日々のご飯のヒントになるかな。
まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/28170364/17619

 

実家のある土地は、元々地元の大きな神社の森が切れたあたりの、何もない畑地だったらしい。

そこに米沢、山形と回り古い手法の織物を学んだ父が家を建て、米沢から両親を呼び寄せたのだという。
そのころ米沢では、効率の良い機械織りが主流になっていたから、昔のものを復興させたかった父はあえて知り合いのいない当地を選んだらしい。昭和30年代の話。

家には、昔ながらの織機を何台も置いた織物工房が隣接しており、周辺農家の奥さん達が通って働いていた。
家の中と工房は完全に繋がっていて、茶の間の北側に祖父の箪笥、祖母の箪笥、本棚、物置き場が続き、その並びで工房の織り機がガチャガチャ賑やかな音をひっきりなしに立てている。
工房兼住居の二階には大きな糸巻き機とかすり模様の染付け機械、それには専門の職人さんが着いていた。
さらに違う種類の糸への絵付け台が二台。オランダの風車のように回っていて、祖父が丸椅子に座って、絵柄の切り替えに合わせて糸貼りの板を替えるように見張っていた。
奥の北東の父の部屋では、父が胡坐をかいて筆と絵の具で図案を書き、それを絹糸を張り巡らせた専用台で、下に図案を敷いてトレスし、疲れると時々ギターを弾く。
スペインのギタリスト、ナルシソ・イエペスが大好きな父はLPレコードもたくさん持っていて、かけながら図案書きをしていた。

子供達が小学校から帰るころには織り子さん達も自宅に帰り、夕方五時には職人さんも、一杯やって帰宅するためにそそくさと出て行く。
父はお呼ばれすればどこにでも気軽に遊びに行く人だったが、祖父は違った。家が一番の人だった。
仕事の手を止めて一家揃って三時のお茶をいただいたあと、もうひと働きしたら、二階の『風車』機械の傍から降りてきて夕陽の中お風呂に入る。
湯船は、足の悪い祖母が膝を曲げないで入れるように、当時としては細長く色タイル貼りだった。
そしてお風呂から上がったら、腰タオルでうろうろなどせず、母が箪笥から出した洗いたての褌と白のランニング、ステテコまで着用して初めて脱衣所から台所を通って、茶の間に向かう。

風呂上がりの祖父や父と、ジュースで晩酌の御相伴をしながら夕方のテレビを見るのは私と兄の楽しみだった。とはいえ昭和40年代当時、民放は2局しか映らなかったが。

母の実家は大きな豆腐屋だったから、よく豆腐料理が食卓に上った。
なかでも春は隣の家からいただく、柿の木の下に沢山生えるふきのとうを使った、ふきのとう味噌の田楽が頻繁に出た。
栽培ものではない野生のふきの香りは強く、幼い兄と私は正直苦手だったが、大人たちは春の味だと大事に食べる。

「美和ちゃんもちょっこっと食ってみねが? 」

と箸の先ですくって、あーんと開いた口に入れてくれたが、その苦さ、匂いの強さに辟易し、しかめた顔を大人たちに笑われた。悔しかったのもあり、二度とこんな苦いものは口にするまいと誓った。

「じじちゃ、酒の肴だも、おぼごさふぎのと味噌はきづいべ」(おじいちゃん、酒の肴なんだもの。子供にふきのとう味噌はきついでしょうよ)

 

 母は長子である兄には食の面ではかなり甘く、好き嫌いを許し、魚の骨は全部取ってほぐして食べさせていたが、私には厳しかった。
嫌いなものもなるべく食べなさい。口に入れたものは美味しそうに飲み込め。それは、将来よそにお嫁に行くのだから、嫁ぎ先で馬鹿にされないようにとの配慮だったかもしれないが、それだけではないと思っていた。
心底打ち解けることができたのは結婚して子供ができてからだ。意地っ張りで頑固な母と娘だから、帰省する度に小さな衝突をしながらも、男衆にはなかなかわからない愚痴を語り、相槌を打ち、いつの間にか立派な『同士』になっている。母も私も丸くなったのだろう。

おかあさん、これからもよろしくです。

 

【レシピ】我が家のふきのとう味噌


【材料】

ふきのとう…ひとつかみ

味噌…赤味噌でも白味噌でも。木しゃもじに山盛り一杯

砂糖…大さじ一杯から二杯

みりん…固さ調節用なので適宜


 ふきのとう味噌にはいろいろな作り方があります。茹でるもの、生のまま油で炒めるもの、後から油を混ぜるもの。我が家のは母から教わったあっさりレシピです。

 (1)なるべく固く締まった、ころりとしたふきのとうを洗って木くずや土をとり、塩をたっぷりめに加えた湯で丸のままさっと茹でます。

 (2)中まで火が通るまで茹でたらざるに上げ、水をかけて冷まして水気を切ります。流水に晒してあく抜き等はせず、ざるにあけ自然に中まで冷ましつつ水気を切ります。

 (3)すっかり冷めたふきのとうをぎゅうっと握って水けを絞り、出来るだけ細かく刻みます。刻んだものの水気をさらにとるため、クッキングシートに包んでまたぎゅうっと絞ります。

 (4)味噌に砂糖を混ぜ、絞ったふきのとうを混ぜこみます。

 (5)よく混ぜて、味噌全体にふきのとうの色が映えるくらいに混ぜます。固かったらみりんを少し入れて混ぜ調節します。

 (6)洗って完全に乾かしたタッパーか瓶で保存する。

 火を通さないレシピなので、関東では冷蔵庫に入れ数日で食べきる方が無難です。豆腐やコンニャクの田楽に、白い炊き立てのご飯に。 

 白飯至上主義者の祖父はご飯の上に載せるのではなく、頑固に小皿に盛ったふきのとう味噌を一舐め、ご飯を一口、と食べていました。

 この記事を書いた「マイみちスト」
(にったみわ)
山形県長井市で生まれ育った主婦。現在東京在住。上杉家と食べる事、アニメと特撮をこよなく愛する。色んな事に興味を持って飛び回っています。

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