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【レシピ付】おひさま色の砂糖煮

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ご近所や祖父母、両親。見聞きした昭和的暮らしとお料理のレシピエッセイ。山形県置賜(おいたま)地方の伝統を、器用な母から不器用な娘へ。受け継がれるはずが失敗したり忘れたり。日々のご飯のヒントになるかな。
まいにちみちこ編集室
https://my-michi.com/column/28170364/14459
宅配便が届いた。大きな段ボール箱の中身はぎっしり大玉の伊予柑。差出人は関東の某テレビ局の番組である。
はて、としばし考えて思い出した。大好きな若手俳優が司会をしているバラエティ番組の、視聴者プレゼントに応募していたっけ。
期待はしていなかったのに当選したらしい。番組中にその俳優さんから当選者として名を読み上げられる栄誉は逃がしたが、嬉しい。ひゃっほう。ありがとう世界。(だったらすぐに思い出せよと)
 
青果市場直送の新鮮な伊予柑が、大きな段ボールにみっしり。
山形育ちの自分にとって、明るい柑橘類の橙色はお日様のようだ。
ご近所にも配り、一家総出で必死に食べた。実においしい。みずみずしく甘酸っぱい果汁が口の中に溢れてくる。
 
始めてみかんがなっているのを見たのは中学の修学旅行。列車を乗り継いで京都に向かう途中のことだ。新幹線が神奈川県に入りしばらくすると、住宅地から急に景色が開けた。
長い海岸線の、穏やかな凪いだ海。そして反対側の山の斜面には、濃い緑色の枝の間にたわわに実る丸いみかん。青い海と空に白い雲、そしてたくさんの果実が実る丘の斜面。
その明るさは私の心をとらえ、南への憧れをかきたてた。
 
思えば山形の実家でも、みかんを段ボールで買っていた。
通りがかった者が取って行けるよう、家の中で一番寒い北側の廊下に置いておくのだが、家族総出でかかっても、箱の半分辺りまで食べ勧めたころには下の方が押されて傷んでしまう。
一日一回箱を揺するようにと八百屋のおじちゃんに言われても、いつの間にか、隣り合って圧迫されたところから皮に水気がしみだして、かびていくのである。
もったいないので、そうはさせじと兄や母と意地になって食べていた。こたつの上には常に山盛りのみかんが置いてあり、それこそ指先が黄色くなった。指が黄色くなるくらい食べると風邪をひかないと言われたが、風邪をひいて熱を出しても食べていた。アホである。
小粒な早生の季節が過ぎ、中粒の甘酸っぱい種類になり、寒さもひと段落して春の足音が微かに聞こえる頃、北側廊下のみかん箱の中身も、大粒で甘く酸味の少ないものになる。
そうしたらボチボチ伊予柑やポンカン等他の柑橘類に代わっていくのだ。
みかんと違って皮が厚く、ナイフで切れ目を入れて剥き、薄皮も除かなくてはいけないので少々手間だが、春が近い事を教えてくれる味だ。
食べ終えた艶やかな皮を見て、母はいつももったいないねえと言っていた。厚めの皮は瑞々しく、まだまだ芳香を放っている。
母は皮を薄く刻みあく抜きしママレードを作ったが、いかに料理上手な母とは言え、スライサーの無い時代。刻んだ皮は今一つ厚く舌触りが悪かったし、市販のママレードに比べて苦みもばっちり残っていた。いきおい子供達には不評だった。
次に母は皮の砂糖煮を作った。手間と時間をかけて作ったそれは甘くほろ苦く、同居の爺ちゃんやご近所の婆ちゃんたちに好評だった。近所や公民館でのお茶飲みの集いにもよく持参していた。
 
台所に立つ母の手つきを思い出しながら作ってみよう。
 
 
【レシピ】かんきつの皮の砂糖煮

【材料】
・いよかん、ぽんかん等の柑橘類の皮4・5個分。
・砂糖を皮と同じ重さ。最後にまぶすための砂糖かグラニュー糖適量(多め)

(1)厚くてしっかりとした柑橘類の皮は縦に八つ切り程度にし、白いワタの部分をナイフで削りとります。この時点で皮の重さを計ります。
(2)やさしくしっかり水洗いしてざるにあけ、熱湯をかけます。
鍋に入れ、被るくらいの水を加え、強火で沸騰させます。5分くらい茹でて湯を捨て、水にさらします。再び新たな水を加え沸騰させます。この茹でこぼしを3回繰り返すうちに皮は柔かくなり、苦みも薄れるはず。
最後の茹でこぼしの後は水にさらして一晩おきます。
(3)翌日、さらしておいた水を捨て鍋に皮を戻し、ひたひたより少ない程度の水と砂糖の半量を加え、よくかき混ぜて砂糖を溶かしたら中火にかけ、よくかき混ぜながら沸騰させます。(ここでは少量ずつにしています。その方が団子になりにくくうまくいきます)
蜜が沸いたら残りの砂糖を加え、焦げ付かないよう手早く鍋を揺すり混ぜながら煮詰めます。皮が意外ともろくて多々ちぎれてしまったのはご愛敬…になりませんか(涙
(4)水分が蒸発し、皮がくっつきあって塊になりだしたら弱火に落とし、皮をばらしながら煎り付けます。
水分がほぼなくなり、鍋肌についた砂糖が白くなってきたら火を止め、皿などにとって冷まします。
(5)大きめの紙やバットの上に広げた砂糖の上に散らし、手早くまぶし付けます。
一枚一枚に全体に砂糖の粒で覆われたら、そのまま乾かします。
出来たては香りもみずみずしく格別ですよ。まぶすのがグラニュー糖ならもっときれいに仕上がります。

手間も時間もかかりますが、香りを残し苦みを抜く為なので根気よく茹でてはさらし、を繰り返してください。
砂糖を入れてからはスピード勝負。焦がさないよう、くっつき合わないよう気を付けて。
いわゆるオレンジピールですが、砂糖を小分けに入れて時間をかけて味を含ませる本格的なやり方と違い、母は二回に分けて一気に煮詰めていました。
夏みかんや八朔、レモンでも同様に作れます。
お茶うけや、刻んでパウンドケーキやお菓子作りに、また意外とおいしいのがバタートーストに挟む食べ方。煮魚や豚の角煮に入れれば匂い消し兼隠し味にもなります。いろいろ工夫して使ってみてください。
 
いやー、母の味を受け継いだと言えるまでには、まだまだ遠い道のりであります。
 この記事を書いた「マイみちスト」
(にったみわ)
山形県長井市で生まれ育った主婦。現在東京在住。上杉家と食べる事、アニメと特撮をこよなく愛する。色んな事に興味を持って飛び回っています。

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