2020年2月7日、前日石巻市渡波のライブハウス「ローディー」で楽しい夜を過ごした後、朝一番で近くの石巻線・渡波駅から朝の万石浦の美しい景色を見ながら浦宿駅まで移動し駅前のコンビニで腹ごしらえをして、いよいよこの日は大六天山だ。

早朝の万石浦
万石浦

駅から大六天山の登山口に向かって歩き出してすぐ、駅近くの大きな工場のなかからフォークリフトに乗って「加藤さ~ん!」と声をかける男性がいる。びっくりしているとなんと昨晩「ローディー」に来ていた千田さんの友人の方が、もう仕事を始めていてぼくを見つけてわざわざ近寄ってきて激励の声をかけてくれたのだ。その気持ちが嬉しくて、この日は大六天山山頂を経てから女川に出るまでのルートだったが実に気持ちよく明るい気分でスタートすることができたのだった。

寒波が来ている中大六天山は身を切るような寒さだったが、幸いなことに海沿いのエリアなのでそれほどの積雪もなくむしろ青空も見られて爽快な登山となった。特に山頂までの登りは台風の被害による多少のルートの崩れはあったものの、万石浦の美しい景色を後ろに見ながら軽快なテンポで順調に進んだ。
しかし、山頂を経て下りに入った時に問題が起きた。

大六天山から女川方面を臨む
どれがルートだかわからない!

山頂から下りに入ってしばらくは標識等の表示もわかりやすく何の問題もなく順調に下っていった……はずだった。ところが、気持ちよく下っていったはずがふと気づくとどうもおかしい。遙か彼方の下の方にはこれから行くはずの鹿柵のあたりが見えている。大まかな方向は間違ってはいないはずだ。しかし途中まで「みちのく潮風トレイル」のキロポストやテープを確認しながら来たはずなのにこの周囲にはそれらしいものは見当たらない。確かに途中台風による豪雨被害の影響でかなり荒れていてどちらへ行くのか迷う箇所やキロポストが倒木の影になっていて気がつかない箇所もあった。どうやらそのあたりで進む方向を間違ったらしい。行き先が見えているのだからこのまま強引に道なき道を下ってしまおうかと思うが、よく見ると最初の方はなんとか行けそうな感じだが、その先には崖になっている所もある。取りあえずあちこち周囲を探索してみると、今いる場所から左手に上がった少し奥の方に枝につけられた赤いテープがかすかに見える。地元の登山愛好家たちがつけた目印のように見える。そちらの方へ藪こぎ状態で近づいてみると、まさに人の踏み跡のある明らかなルートが見えてきた。よく見ると「みちのく潮風トレイル」のテープも近くに翻っている。このルートを通ったハイカー仲間もこの辺りで迷ったという話しは聞いていたが、やはり集中豪雨被害でルートそのものが分からなくなっている箇所で方向を間違えたのだった。
これでなんとかルートに戻ることができた。現在では既に復旧整備済みのはずだが、その時点ではまだルートそのものが大きく崩落している箇所が何カ所も見られたり、そこからかなり下ったあたりでも作業小屋や人家が大きな被害を受けて、壊れた小屋や車ごと放置されている箇所があったりして、改めて2019年10月の超大型台風による集中豪雨の被害の大きさに驚かされたのだった。

ルートそのものが大きく崩れている
多分あっちだとあたりをつける
倒木に隠れていて一度見落とした

この大六天山をクリアして女川にたどり着いたことによって、牡鹿半島という大きなエリアをひとつ越え、この回の挑戦の序盤戦を無事終えることができた。こうして人口は大幅に減少しているもののかなり復興の進んでいる女川の街に入り、温泉が併設されているおしゃれな駅舎の近くで汗を出し尽くした身体にしみ渡る美味しいビールとラーメンで序盤戦終了をひとり祝ったのだった(笑)。

シーパルピア女川(ショッピングモール)
温泉付きのおしゃれな女川駅舎

これでこの回のハイクは、難関の雄勝半島と南三陸を越えて陸前戸倉を目指すのみとなった。