親戚や隣近所が採って来て、玄関先にどさっと置いておいてくれる「山菜」。
特有の香りが私はずっと苦手だった。
いい加減歳をとった今も、克服されたとは思っていない。
山菜だけでなく、ウドや茗荷も苦手なのはお子ちゃま舌のせいだろう。
なんで新鮮な野菜が買えるのに、こんな「きどい」(実家周りでは『アクっぽい』『くせがある』の意味)草を手間暇かけて食べるんだろう。
そう思っていた。

産地以外での山菜と言えば、ほんのちょっぴり売られているものでもけっこういいお値段。小鉢にちんまりと、春の香りを愛でる感覚で盛られている和え物や天婦羅を想起するだろう。
だが、産地ではそんな量では済まない。
「これ山さいってとってきたがら、あがっとごやい(食べてください)」
ともらったり、果ては新聞紙にくるまれ、藁で縛られた山菜が1キロくらい、玄関の上がり待ちに置いてあったりするのだ。
新美南吉の童話「ごんぎつね」を思いだしてくれれば早い。
香りの強い癖のある山菜も、ちょっぴりなら『これはこういう物か。大人の味だな』で納得できるが、深鉢に一杯ドドーンと出てくると、それは子供には厳しい。
しかも実家での調理は、素材の味ダイレクトな『おひたし』がほとんどだった。
ほとんど泣きそうになりながら、目の前の緑の山菜を消化していた。

大人になり、幸い大抵の山菜は大丈夫になったが、今でも売り場で強い香りを感じると、ウッと身構えてしまう。
今回、母と長井市の「道の駅」で買って来た『どほいな』も、お子様にとって苦手系の香りを持つ山菜の一つだろう。

別名『イヌドウナ』という。『ホンナ』『ボウナ』とも言うらしい。北国の豪雪地帯に自生する山草だ。
香りは強いが、シャキシャキとして舌触りや歯ごたえも良く、噛みしめると何とも言えない旨味があった。
強い香りの奥には、子供にはわからない美味しさがあったのだ。
今回は市販のピーナツバターで、ピーナツ和えにしてみた。
どほいな特有の香りと相まって、なかなか美味しい小鉢になった。
店頭で見かけたらぜひ作ってみてください
母曰く「いっぱいもらった時は、さつま揚げや油揚げを入れて、ごま油で炒り煮にするといいんだ」

いや、そんなにたくさん入手する機会は、都内じゃ滅多にないから。

【レシピ】どほいなのピーナツ和え


【材料】
どほいな 1束
市販の甘いピーナツバター(ピーナツクリーム)…大匙1~2
醤油…小匙2くらい


(1) どほいなはよく洗い、根元の固く変色した部分を切り捨てる
(2) 沸騰した湯に茎の部分から入れ、10秒数えたら全体を沈め、五秒くらいで茹であがり。

(3) たっぷりの水で晒す。
(4)ピーナツバターと醤油を分離しないようによく混ぜ、食卓に出す直前に固く絞って3センチくらいの長さに切ったどほいなを入れ、よく和える。

山菜かあ、とついつい構えてしまう、香りの強い種類には、このピーナツバター和えが実によく合います。
単純なレシピですがぜひ作ってみてください。