「何かいっか? 米はまだ買ってねベ? 白菜と餅は段ボールさ入れたけんど」
山形県長井市の両親は、こんな電話と共によく食べ物を送ってくれる。
私が東京の大学に進学してからだから、かれこれ30年以上。
子供が生まれた当初など、買い物にも行きにくいだろうと、月に二回のペースで送ってくれた時期もある。
とても、とてもありがたい。でもずっとお断りはしているのだ。
送料だけでも馬鹿にならないし、米やカボチャ大根など重い野菜が入った荷物は、宅配の集荷センターに出しに行くだけでも一苦労。
だが両親は、さすがに頻度は低くなったが、何かにつけ大きな段ボールで救援物資を送ってくれる。

荷物の中にはたまに、私の知らない食材が入っている。
大抵長井市の道の駅『川のみなと長井』や、市民直売所の『おらんだ市場 菜なポート』で買って試食がてら私に送り、後ほど感想を求めてくるのだが、時に全くの新顔もある。
夏に送られてくる「ギョウジャ菜」そして今回の「元気菜」もそうだ。山形にいた時は聞いた事がなかった。

「元気菜」は元々は山形県の県南・置賜地方の中でも高畠町で研究・改良された野菜らしい。
元々は「雲南百薬」という名前の薬効で知られた宮古島の栽培植物。そのぬるりとした食感と草姿で別名は「陸わかめ」。
近年本州でも栽培されるようになり、中でも山形県高畠町の栽培グループの10年以上かけた壌や肥料など条件・栽培法の研究の成果で、現在市販されるようになった。
なるほど、山形に居た頃は知らなかったはずだ。
マグネシウム・カルシウム・亜鉛・銅などのミネラルやビタミンAを極めて豊富に含み、しかも収穫後の時間経過で失われる量も少なく、効率よく摂取できるという。
はるばる沖縄県宮古島の植物を気候も違う東北・山形県の地に根付かせるのは大変な苦労だったろう。
商業ベースに載せて流通させたのは、高畠町のグループが最初だという。
新しい特産物として、おいしい野菜として息長く、食卓の定番野菜になってほしいものである。

【レシピ】元気菜のたたき


元気菜…2パック分
酢醤油、もみ海苔、ごま油、おろししょうが、おろしにんにく他お好きな薬味


(1)元気菜を洗い、沸騰した湯でさっと茹でる。20秒くらい。時間が長いと柔かくなりすぎ、色も鮮やかでなくなる。

(2)大急ぎで流水に放って冷ます。しばらく水にさらしておく。

(3)ざるに上げて水気を絞り、包丁でみじんに切ったあとトントンと叩く。ねばねばが出てとろりと糸を引くようになったら出来上がり。

(4)小鉢にもり、酢醤油をかけ、ごま油、おろししょうがや刻んだネギなど、お好みの薬味と混ぜていただく。

夏野菜のツルムラサキのようなほのかなひなたの匂いがするので、薬味で香りを補ってやるのがコツかも。
モロヘイヤにも似ています。
我が家では温かいご飯にのせて、メカブのようにかきこむ食べ方が好評でした。
納豆に混ぜ込んでも美味しいし、生卵に混ぜてグリーンが綺麗な卵かけご飯の変形、というのもいけます。
生産者の方々のページでは、ニンニクとの相性も抜群と書いてあったので、それも試してみたいですね。
最後に長井市の実家の母・くみこさんにご登場願いました。
お母さん、いつまでも元気でね。(季節感のないすっぴんでの写真すみません)