山形出身者の心身にしみ込んだソウルフード。それは玉こんと「芋煮」
細胞からDNAレベルと言っても過言ではないわけで、それは大げさな表現ではありません。
特に最上川沿いにの者にとっては、秋は芋煮を思い出して河原に行きたくなる季節なのですよ。
筆者は現在、東京の多摩川という、神奈川県との県境の川の近くに住んでいるのですが(映画「シン・ゴジラ」でゴジラの東京侵入阻止のために戦車隊が防衛線を張り、橋が壊された辺りですね)週末ともなると、よく整備された河川敷で、家族連れや大学サークル、職場や町内会など色んなグループが焼き台や折り畳み椅子や、果ては日よけのパラソルなんぞを持ち込んで、煙をモクモクさせながら肉や野菜を焼いているのです。
ビールで乾杯して楽しそう。

ちなみに河川敷はバーベキュー全面禁止。

でも、山形の血が叫ぶ。
違うだろうと。
青い空、そよぐ風、空には鳥が飛び、川面が陽の光にきらめくときたら芋煮でしょうよと。
それほどに、人生の色んな局面で何度となく経験する、秋の行事が芋煮会。
芋煮会の起源は、里芋の収穫を終えた後の収穫祭的な性格のものだったと、どこかで読んだことがあります。
掘った里芋を土が付いたまま表面を乾かしたとしても、足が早いので傷みやすく長期保存には向かない。乾かしている間に秋の長雨に当たりでもしたら一発で腐ってしまいます。
そこで山で採れたきのこ、こんにゃく等と煮て食べてしまおうとなり、ついでに収穫時の娯楽と一体化したのが「芋煮会」
そもそもが「祭り」だったわけですね。

川原の石でかまどを組み、たきぎを燃やします。
学校で勉強が出来なくたって、火を起こすのが上手な子はそれだけでヒーローになれました。火焚きヒーロー。かっこいいじゃないですか。
前日手分けして買い出しした肉、板こんにゃく、長ネギを石の上に置いたまな板の上で切り、大なべに投入。里芋はぬめるので皮をむいた「洗い里芋」をどかどかと入れます。
(山形の昔ながらの八百屋の店先には『里芋皮むきマシン』がありました)

空を旋回するトンビがたまに襲来し、調理中の肉をかっさらっていくので、グループがパニックになったりはお約束。
ふざけ合った男子が鍋に体をひっかけて、材料全部ひっくり返してグループ全員が阿鼻叫喚とか、県民の思い出はいくつもあると思います。

煮えるまでの時間、先生の試食によるナンバーワン芋煮選手権、そして川の水で鍋を洗い、ぐったり疲れて帰るまでが芋煮会。

東京の我が家にも巨大七輪と大鍋が出番を待っているが、結婚後28年火を噴いた事はありません。
里芋…お高いんですよ…

【レシピ】芋煮・山形県南部 西置賜地方風


【材料】
洗い里芋…大1パック(約1キロくらい?)
牛肉薄切り…400~500グラムくらい
板こんにゃく…1枚
長ネギ…太いもの1本~
きのこ(マイタケ、シメジなど)…約2パック見当
醤油…カップ1~
みりん・日本酒…少し

これで6~8分。いつも以上に適当な分量ですが、現場ではこんなものなのです。


(1)板こんにゃくに箸でぶすぶす穴をあけ、手で千切ります。箸で刺すと裂きやすくなります。今回は真ん中に少し切れ目を入れ、そこをくぐらせた手綱こんにゃくにしてみました
水から入れて茹でこぼします。(アクで肉が固くなるのを防ぐため。下茹で不要と書かれているこんにゃくならそのまま使えます)

(2)洗い里芋は大きいものは半分に切り、茹でこぼしたこんにゃくと共に大なべに全部入れ、水1リットルくらいを加え、中火にかけます。洗い里芋がなかったら皮付きの里芋の皮をむき、皮をむいた後さっと茹でこぼして水洗いしてぬめりを出し、塩で揉んで水洗いしてぬめりをとって、水洗いして入れる方法もあります。どちらでも。
私は手がかぶれやすいので、茹でこぼす方法を使っています

(3)沸騰したら一口大に切った牛肉の薄切り、裂いたまいたけを入れて火にかけます。肉は高級なものでなくて大丈夫です。

(4)煮立ったら酒、みりん、醤油を順に入れます。薄いようなら味見しながら少しずつ加えていきます。

(5)再び煮立ったら弱めの中火で煮込み、肉と芋が柔らかくなったら味見をして、味が薄ければ醤油やみりんを足し、ねぎを加えて火を通します。ねぎはお好きなら一杯入れて大丈夫です。

ねぎに火が通って柔らかくなったら出来上がり。
(写真では固めのだったので早めに投入しました。その辺は好き好きで)

煮えあがったら熱々のうちに食べましょう。
余ったら焼き麩や豆腐を入れて次の日もリサイクル。卵でとじてご飯に載せても美味しいです。