9月に入って早十日。昼は暑さがまだ残っているものの、夜には虫の音が響いてきたり日の入りが早くなったりと、少しずつ秋の気配が感じられるようになってきたなあと思います。

 

先月のお盆過ぎ、娘と帰省してきました。やはりふるさとは空気も景色も人も食べ物も、すべてが最高でした。アイスクリンもやっぱり最高でした。

 かき氷とアイスクリン【連載第17回】

アイスクリンその他を買い出しに母とスーパーへ行った時、私は山形ならではの光景を目にしました。いつぶりだろうなあ、ちゃんと見たの。とても懐かしかったです。

 

 

山形県では、9月から10月にかけて芋煮会が県内各地で行われます。公的な大イベントから町内会の年中行事まで、大きな公園や河川敷など至る所で、青空の下で芋煮鍋をみんなでワイワイ囲んでつつきます。

全国的に知られてきた山形の芋煮会ですが、その中で最も有名なのはやはりこちらでしょうか。全国ニュースでも毎年紹介されていて、見る度に嬉しくなっております。

 第30回 日本一の芋煮会フェスティバル

材料は里芋3t・牛肉1.2t・こんにゃく3500枚・醤油700ℓ・お酒50升など実に桁違いで、調理器具もドーンと大型重機。それらで約3万食の芋煮汁を作ってふるまっていただく、何から何までスケールの大きなイベントです。

私はまだ行ったことがありませんが、いつか行ってみたいです。そしてできれば3杯くらいおかわりしたい。

 

さて、世間一般では「芋煮論争」として知られているようですが。山形県の芋煮汁は、庄内風と内陸(最上・村山・置賜)風の二種類があります。

 

 

庄内風にはゴボウ・人参・ブナシメジ・サツマイモが、内陸風にはマイタケ・大根・豆腐が入ることもあるとか。地域や家庭によってレシピは少しずつ異なるようです。…どれもいいなあ。おいしそう。たまらん。

芋煮汁は江戸時代から食べられていたようですが、明治時代に入ってから内陸の米沢で米沢牛が好評となったこと、庄内の酒田で養豚が始められたことが内陸風芋煮汁と庄内風芋煮汁がそれぞれ生まれたきっかけのようです。

諸説あるので、秋の夜長にじっくり調べてみるのもいいかもしれませんね。

 

さて。大学時代に内陸出身の先輩と、お互いの芋煮汁について熱く語り合ったことがあります。その様子を見ていた茨城人の同僚や先輩が会話に加わってきたのはいいのですが。

 

 

 

 

仕方ないっちゃあ仕方ないとは思います。まだまだ若い盛りの男子学生には、他県の郷土料理うんぬんよりもまずは「肉!!」だったのでしょうね。私の夫も、アラフォーの今も「肉!!」ですし。

小学生女子の娘は、バランスよく半々といったところですけれども。

 

小学生女子といえば、私が小学生の時は小学校でも芋煮会がありました。みんなでワイワイ作って食べて、とても楽しくおいしい芋煮汁でした。

…が。

 

 

…なんかこう、だまされた感が半端なかったです…。

あのサツマイモ、学校の畑で全校生徒が育てたサツマイモだった…里芋、サツマイモより高いし手間もかかるしなあ…いや、サツマイモはサツマイモで充分おいしいからいいんだけど…そういやうちの母ちゃん、栗ごはん作る時にサツマイモを栗っぽく彫刻して混ぜ込んでたっけ…。

それらも今となっては懐かしい、おいしい思い出です。…一応。

 

小学校と違い、中学校や高校では芋煮会はありませんでしたが、部活仲間でやったことがあります。高校生の時でした。

スーパーで芋煮汁セット(食材一式)を買って、芋煮会セット(鍋やゴザ)をレンタルして。みんなで自転車をこいで、最上川の河川敷で行いました。

秋空の下、部活のみんなで作って食べた芋煮汁は

 

 

鍋の中の芋煮汁をすべて平らげ、身も心も満腹になった私たちは一休みの後、片付け作業に入りました。箸が転がっても笑うお年頃の娘たちですから、鍋洗いなどの間もきゃあきゃあ笑いっぱなしでした。

「あー、楽しかったねー」と言い合っていたその時、ゴミ捨てに行った先輩が魂の抜けたような顔で戻ってきました。先程までの笑顔はすっかり消えて。

芋煮会はもちろん芋煮汁がメインですが、大人の場合はビールが付き物。当時は今ほど飲酒に厳しくなかった時代だったということもあり、芋煮会では真っ昼間からビールや日本酒を飲むのが割と当たり前でした。というか、そっちの方が普通だったかも。

そして、ビールといえば利尿効果の高い飲み物。…はい、つまりこういうことです。

 

 

ちなみに、トイレは仮設のものがちゃんとありました。先輩が鍋を洗っていた水場からは離れた所に。

 

「塞翁が馬」「禍福は糾える縄の如し」「人生楽ありゃ苦もあるさ」とは言いますが、花も恥じらうお年頃の乙女にはちょっと免除していただきたい不幸でした…。

みんなの慰めや励ましが功を奏したのか、幸い先輩はすぐ立ち直り、一時間も経たない内に「でってや!あのオヤジー!!(全くもう!あのおじ様ったら の意)」と、怒りの雄叫びをあげるほど元気になりました。

あれから数十年経った今、きっとご家庭や職場で楽しく芋煮汁を作っているんだろうなあ、先輩。先輩の中で、芋煮汁とあのオヤジの記憶がリンクしていませんように。

というか、まるっと忘れてしまっていますように。

 

わが家でも、そろそろ今年初の芋煮汁を作ろうと思います。

…けど。

 

 

というわけで。ごちそうでもありお弁当にもなる芋煮汁を、山形の皆様もそうでない皆様もこの秋おひとついかがでしょうか。おいしい秋をどうぞお召し上がり下さいませ。