日本全国、北海道を除いてまるっと梅雨に入りましたね。

この時季は雨や曇りの日が多くてジメジメしやすく気が滅入りがちですが、スーパーや直売所で梅の実を見かけると、まるで梅雨の晴れ間のようにパーッとさっぱりした気持ちになれます。

連載第10回【茨城の梅雨、酒田の梅雨】でも触れましたが、梅雨は文字どおり梅の季節。「梅仕事」、つまり梅干しや梅酒、梅シロップなどを作る季節でもありますね。梅の実ですぐに思い浮かぶのは、やはり「紀州の梅」でしょうか。和歌山県は梅の生産量が全国第一位で、全生産量の6割強を占めているそうです。

 

 

紀州といえば徳川御三家、徳川御三家といえば水戸もその一つ。茨城には水戸黄門こと水戸藩第二代目藩主・水戸光圀が開いた日本三大名園の一つ、偕楽園があります。この偕楽園では毎年2月中旬~3月末まで「水戸の梅まつり」が催され、6月初旬には梅の実落としと梅の実の販売が行われています。

 茨城県公式情報サイト 観光いばらき

 偕楽園・弘道館「梅の実販売」について

知名度や生産量では和歌山県に遠く及びませんが、茨城県でも梅仕事に精を出す人は少なくありません。夫の実家でも毎年梅干しや梅酒を作っております。特に梅干し作りは手間暇がかかり、天候との兼ね合いもあるので、本当に

 

 

な仕事だと思います。ちなみに「三毒(さんどく)」とは食毒(過食や偏食など食生活の乱れ)・水毒(体内に不要な水分が溜まること)・血毒(血行不良)のことで、「梅干しは三毒を絶つ」「一日一個の梅干しは医者いらず」と昔から言われているとか。すごいですね、梅干し。グッジョブ。

 

そういえば、茨城に来て初めて気付いたことはたくさんあるのですが。その一つに「梅干しが赤くない」ということがありました。私の実家と夫の実家の必殺梅仕事人にそれぞれ訊いてみましたところ、梅干しの材料はそれぞれ

 

 

だそうです。赤紫蘇を用いない梅干しは「白梅干し」と呼ぶことも、茨城に来てから初めて知りました。

東北や関東、東日本や西日本で作り方が分かれるのかな?と思い、お店で製品を確かめたりネット検索してみたりしましたが、いまいちよくわかりませんでした。もしよろしかったら、「うちの地方はこういう梅干しだよー」とコメントにてお教え下さいませ。

 

最近はタッパーやジッパー付きの袋を使ったり、重石や土用干しを省いたりするレシピも数多くあるようですね。ハチミツを使った甘めの梅干しもよく見かけます。私自身は、両方の実家で手作り梅干しを味わってきたからか、昔ながらのしょっぱすっぱい梅干しが好みです。

 

 

梅干しはクエン酸やリンゴ酸などの各種有機酸、タンパク質、カルシウム・カリウムなどのミネラル、ビタミンAやビタミンCを含んでいるそうです。さすがですね、梅干し。超グッジョブ。

 

梅干しはいつもおすそ分けしてもらったり買ってばかりだから、今年は自分でも作ってみようかな。そう思い、まずは作り方をざっと検索しました。もちろん「梅干し」の他に、「簡単」「初心者」「不器用」などのワードもしっかり入れて。

そしてその結果、

 

 

始める前から挫折しました。

じゃあそれ以外の梅仕事を…とも思ったのですが、私は下戸だから梅酒を作っても飲めない。梅シロップも、私にはやたら甘くてちょっと合わなかったっけ。仕方ない、今年も梅仕事は見送るか。

…と思った時、ふと「梅コーディアル」というワードが目に留まりました。コーディアルはハーブやフルーツを生の状態で漬け込んだイギリス発祥の濃縮ドリンクで、冷たい水や炭酸水で割って飲みます。昔は医薬品として用いられていたそうです。今では冷たい水や炭酸水の他、紅茶やヨーグルト、アイスに加えていただいたりもするとか。

コーディアルは、イギリスの児童文学作品「メアリー・ポピンズ」にも登場します。小5の時に読んで以来この作品が大好きな私は、コーディアルにもずっと憧れていました。レシピを見ると、青梅・氷砂糖・酢・ミントの葉を瓶に敷き詰めて1週間ほったらかすだけで出来上がり、とのことです。おしゃれな上に、なんというお手軽さ。

よし、これなら私にもできそうな気がする。やってみよう。

 

 

青梅を水洗いして水気を拭き取り、ヘタを取って一晩冷凍庫に入れるという手間はありましたが、あとは全ての材料を瓶に詰め込むだけ。下準備はわずか一日で完了しました。イエイ!梅コーディアル、ウルトラグッジョブ!!

 

1週間後。できたてホヤホヤの梅コーディアルの瓶を、ドキドキしながらそっと開けました。桃を思わせるふくよかな青梅の香り、酢のさっぱりした香り、ミントの涼やかな香り。それらがが程良く混じり合い、初夏の香りがふわりと心地よく私の鼻をくすぐりました。

いよいよ梅コーディアルをスプーンですくい、一さじ口へ。香りと同じく、爽やかな甘ずっぱさがふわりと心地よ……

 

 

「国破れて山河あり」と、唐の詩人・杜甫の代表作「春望」の一節が脊髄反射的に浮かびました。

アレでした。子供時代に風邪をひいた時、漢方薬マニアの祖母に半強制的に飲まされた薬用シロップとよく似た味でした。酸味混じりのドロ~ッとした激甘の後、謎の苦みが口の中いっぱいにしばらく居残り続けました。コーディアルの材料のどこにこんな苦み成分が?この一週間でどんな化学変化が?教えて、ドクター。

フルーツとハーブというおしゃれアイテムをふんだんに使ったのに、一体なぜ?ド田舎出身ド田舎在住のずぼらアラフォー主婦が、コーディアルなんて今まで一度も飲んだことがないくせに、思い付きぶっつけ本番で適当に作ったから?もしかしてこれは、コーディアルの妖精さんやおしゃれの女神様からの天罰なのか…?

 

いや、違う。そうだ、コーディアルは元々医薬品扱いだった。そしてハーブは、言ってみりゃ西洋の生薬。…そりゃ薬フレーバーにできあがっても、何ら不思議はなかったわけで…。

 

 

「良薬口に苦し」というけれど、甘ったるい場合もあったんだなあ…。

この梅コーディアルで、今年の梅雨と夏を無事に健康に乗り切れますように。賞味期限は冷蔵庫で10カ月らしいから、来年の梅雨が始まるまでに何とか自力でがんばることといたします。