初主演・原作・プロデュースの映画『ライズ -ダルライザーTHE MOVIE-』が二月東京、三月九州と公開を迎えた和知健明(わち たけあき)さん。
本作は福島県白河市の活性化のため和知さんが生み出したキャラクター、名物白河だるまモチーフの不屈のヒーロー「ダルライザー」の物語。
東京で役者をしている館アキヒロ(演:和知健明)が妻・ミオ(演:桃奈)の懐妊と結婚を契機に白河に帰郷。親友のカメラマン・田辺マナブ(演:三浦佑介)と共にある”謎”に立ち向かうというストーリー。 10年間に渡って活動をしてきたダルライザーの集大成でもある。

その誕生から撮影秘話、主演であり生みの親でもある和知氏が思い描くヒーロー、そして街の成長まで、様々なことをインタビューでお話ししていただきました。

Q: いよいよ福島県内で上映されていた『ライズ -ダルライザーTHE MOVIE-』が東京・九州と公開になりますが、お気持ちはいかがですか?

和知健明氏(以下、和知氏) 「非常に嬉しいのですが、映画はまた作ってからが勝負なんだなと言うことを痛感しています。観ていただいた方の感想は『元気が出た』『自分もヒーローになれる』とか多数いただくのですけど、宣伝段階だと既存の特撮ヒーロー映画みたいに思われてしまうんですね。で、子供向けだと思われてしまう。なので”大人の方に観ていただく”というハードルに四苦八苦しています」

Q: 確かにとっかかりとして『ヒーロー』というキーワードから来た方だと、純粋なアクションとか見た目のかっこよさに誘われてという印象なんですが、それは本来の和知さんの狙いとは若干ずれている、と言うところでしょうか。

和知氏 「そうですね。ヒーローのアクション映画ではなく、どうやって普通の人がヒーローになれるのか? それはどうすればなれるのか? がテーマなので、大人をターゲットにしたヒューマンドラマを作ったと思っています」

Q: コンテンツとしてのダルライザーをどう皆様に知っていただくかというところですか。

和知氏 「そうですね。僕らは活動当初から高校生以上の大人をターゲットにしてきましたが、それはなぜかと言うと、大人が良いと思ってくれれば子供に伝え続けてくれるだろうと考えているからです。子育ては僕らヒーローの仕事と言うより、親の仕事です。なのでそこに向けて影響を与えていきたいと考え、自分達が時代に対して感じる疑問などをテーマに作品作りをしています。こういう事はなかなか、写真だけで興味を持ったという方には伝わりにくいですね。なので、今回のこの記事は非常に助かります(笑)」

Q: Twitterなどで特撮好きな方々も応援してくれていますね。

和知氏「本当にありがたいし嬉しいです。特撮好きの方々のヒーローのイメージが少し変わってくれればいいなと思いますし、逆にヒーローものをあまり観ない人たちが『ヒーローっていいな』と。自己啓発とでも言いますか、元気のない時に元気を出すために観るとか、そういう風になってくれればいいなと思います」

Q: 特に見てもらいたい人たちは?

和知氏「子どもにはちょっと長くて難しいと思うので、今作は特に高校生に観てほしいと思っています。例えば進路確定、そうした波に立ち向かっていく前に観てもらうと、困難が起きた時に思い出して立ち上がってくれるんじゃないかと。あとは夢を追いかけていたけど諦めてしまった方が、観た後にまた再び何かやろうと思ってもらえたら」

Q: 確かに、そうした方々には特に刺さる台詞や情景が随所にありますね。

和知氏「前半はほぼ実体験で、後半敵集団『ダイス』に攻められるあたりからが創作です。夢を諦めて帰郷した、同じような体験をした方には親近感を覚える人は多いかもしれませんね」

Q: 本作『ライズ - ダルライザー THE MOVIE -』は上京した主人公が白河市に帰郷し、当地に根を張るべく頑張る物語になっていますが、ヒーローものとUターンものを合わせるのは最初から構想にあったのですか?

和知氏「ヒーローものとUターンものの合体という考えはなかったのですが、自分が上京してUターンしてきたから、それが一応自分の人生をモデルにした原作になっているという事ですかね。HPにある小説仕立てのストーリーでは7話でやっとダルライザーが出てきます。
敵集団のお話『ダイス結成秘話』の映画もやりたいのですが、皆仕事があるので、とてもとても、撮影にそんなに時間は割けない。あとは一発目でダイスの話から始まると敵のイメージの方が強くなってしまうのではないか。白河の子供達に夢を与えるのだとしたらヒーローが先の方がいいという事で、本作の興行がうまくいったらダイスを映画化しようと思います」

敵集団ダイスを演じているのは全員白河に住み仕事をしている市民の方々だ。年の瀬を挟んだ冬の厳しいスケジュールの中、献身的に時間を割いて『自分たち市民の映画』の撮影をやりきった。その頑張りは映画画面の中からひしひしと伝わってくる。

Q: 撮影はストーリーの順番に行われたのですか? 

和知氏「いえ全然。できるところから、ラストの方から撮って行きました。12月4日のクランクインでKEYSIのフスト師匠は7日には帰らないといけないというので、ラストまでの全部のアクションシーンをガーッと撮ったんですね。結局少し残りましたけど」

Q: アレハンドロ師匠(演じるのは護身術KEYSI・ケイシの創始者フスト・ディエゲス氏)はとてもいい味を出されていました。

和知氏「本当に。脚本段階では急にスペイン人が登場するのに疑問の声もあったのですが、監督の意見でそのままさらっと出しました(笑)。むしろ味が出たのでよかったです」

Q: ほとんど白河市内で撮影されたとお伺いしましたが撮影は本当に大変だったと

和知氏「天気が一番の大敵でした。白河は山の裏側にあり吹きおろしの風がすごいんです。あとは1月に大量に雪が降り、雪のない12月まで撮っていたラスト近くのシーンと景色が変わってしまったという。目の前の雪かきはできても山まで雪かきはできないので、予定変更して室内シーンを先にしたり。そうすると役者さんやスタッフのスケジュールも変更になり、かなり大変なんです。出演者、スタッフ、ロケ現場の全てが揃った時に撮れているのが、映画の画面に集約されている。奇跡に近いなと撮了後に思いました。僕たちはロケがほとんどだったので大変でした」

Q: ストーリーの順に撮っていないのでなおさらですね。役者さんの意識の持ち方も違って来るのではないでしょうか

和知氏「ラスト近くから演じるというのは初めてだったのですが、やれることをやった感じで難しいけどいい経験になりました。でも撮影の終わりの方に冒頭のシーンを撮っていたので、監督に『順番通り撮っていたらラストの台詞の言い方も違ってきますよ』と伝えましたがそのくらい難しさを実感しました」

Q: 普段演技をされていない一般の白河市民の方々も大勢キャスティングされていますね。その方たちも撮影の変更に合わせて万障繰り合わせて…

和知氏「そうです。ロケ地の予定や急な変更にスケジュールを合わせてもらいました」

 

撮影許可を得ていても先方の予定や諸般の事情で、直前になり変更を余儀なくされた事も多々あったそうで、その都度別の場所を急遽手配したり、スタッフや大道具の搬入をずらしたり、ただでさえ厳しい撮影スケジュールの中、各方面の調整は困難を極めたそうだ。

話はまだまだ続くが、市民が主役の撮影秘話や、和知氏がヒーローについて考えるきっかけになった、ある『出来事』、白河で見た小さなヒーローについてなど、次回にて。

 

ダルライザーの公式サイト
http://www.dharuriser.com/

映画「ライズ・ダルライザーnew edition」は2019年3月9日より全国公開を予定している。
詳しくは上映館情報をご参照ください。
http://www.dharuriser.com/movie#modalInfo