
こんにちは。図書館を追っかけるライター、かどやじゅんこです。
図書館へ行こう♪ 連載2回目は、青森県内では唯一、大型ショッピングセンターに併設する図書館。今回はどんな空間に出会えるのか、どんな人が利用しているのか、少しドキドキしながら訪ねてみました。
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気がつけばピアノ曲が軽やかに流れている。香ばしいコーヒーと甘い香りに包まれた図書館。それが、つがる市立図書館の第一印象。それもそのはずで、図書館には併設のカフェがあるという、コーヒー好きにはたまらないロケーション。私語厳禁で飲食禁止、そんな図書館のイメージを緩やかにくつがえす。初冬の一日を過ごしたのは、そんな素敵な図書館だ。

実は、前回の取材で八戸市立南郷図書館の館長へ、ある質問をしていた。
“ここ以外で好きな図書館”。それが、意外にもつがる市立図書館だった。全国的にはカフェ併設の公立図書館があるのも知っているし、青森県の八戸市にはカフェスペースのある公立の書店ができたことも知っている。けれど、ショッピングセンターと図書館、私の中でこの2つは、なかなか結びつかなかったのだ。だから、意外にも。
つがる市立図書館は、休日には近隣の人達で賑わう大型ショッピングセンター・イオンモールつがる柏の別館にある。広い駐車場に車を停め東側の正面口から入ると、目に飛び込んできたのは、ヘリンボーンのパターンが続く寄木張り風の床。フランスのベルサイユ宮殿にも使われているというこの有名なパターンは、ショッピングセンターらしからぬ、レトロでモダンな、どこかほっとする木のぬくもりを漂わせている。加えて、むき出しの配管と木の格子が混在する天井空間。遊びのあるデザインが、どうやらカフェから図書館へと続き、1Fフロア全体に統一感を持たせながら広がっているようなのだ。
図書館の前に出店するのは大手カフェチェーン、タリーズコーヒー。同じフロアには、個性的な本と雑貨を集めたヴィレッジヴァンガード。2Fには大小8つのシアターを持つシネマコンプレックス。つがる市役所の出張所や授乳室などを備えた赤ちゃんルームもあって、普段、図書館に敷居が高いイメージを抱いている人でも、ここなら気軽に利用できそうだ。

温かいコーヒーにも大いに心惹かれるが、まずは図書館の中へと進もう。
図書館の入口はカフェを挟んで左右に2つ。そのどちらにも、鳥居のような雁木を思わせるシルバーの枠がしつらえてあって、奥へと連続して続く木の板が、雪国の昔ながらのアーケード、現代風“こみせ”を連想させる。人が集う場所を意識してのデザインだろうか、とても美しい眺めだ!

この先は、いよいよ図書館の中へあなたをご案内しましょう。
さあ、好奇心を全開にして、フロアの探検トリップへ!……(残り文字数2,000以上・写真点数11点)
静かに発光する、美しい本のタワー

図書館に足を踏み入れた途端、真っ先に目に飛び込んでくるのが、白い光を放つまるで太い柱のようなタワー書架だ。引き寄せられるように近づいてみる。本来なら無機質なLEDの灯りが、本の表紙や仕切り箱や観葉植物を間接的にぼうっと浮き立たせることによって、暖かみさえ感じられるライティングの妙。
まるで、書架全体が巨大な発光体のようだ。
近未来の図書館を思わせる趣向に、まんまと乗せられてみようか。
館内を見渡すとタワーは4本。郷土本や雑誌、絵本や大型本など、その時々でセレクトが変わるようだ。りんごの産地らしく、りんご箱を利用したディスプレイが効いている。今日はどんな本を手に取ろうか。決めていない人なら、まずはこの書架の前でしばし立ち止まり、好みの本を手に取ってみたらいい。
初めてなら、館内をぐるっと周遊のすすめ

ここに来るのが初めてなら「本の背表紙や、季節やテーマごとの展示を眺めながら、館内を一周してみて欲しい」という図書館スタッフのアドバイスをもとに、明るい外光が差し込む児童図書コーナーから一般図書コーナーへと、時計回りにゆっくり館内を探検してみようか。円形のおはなしスペースに向かって、放射状に並ぶ低い書架の中には、楽しそうな本がたくさん詰まっている。一角には読み聞かせ用の紙芝居コレクション。子どもたちにとってはお気に入りの場所に違いない。カラフルな絵本が誘っている。
椅子たちとの楽しいランデブー

館内を周遊していてとても気になるのは、形も色も材質も異なる、さまざまな表情をした椅子たちの存在だ。とにかく、片っ端から座ってみたくなるのだ。ひとしきり座り心地を試したら、お気に入りの一脚を決めてぼうっとしてみてもいいし、もちろん、手に取った一冊を読み進めてもいい。
実際、この椅子に会うために、この図書館へ通い詰めるのも悪くない。あの椅子はまだ空席だろうかと想いながら。それはどこか恋に似ているかもしれない。
図書館のミッションは、農業支援
青森県つがる市は人口3万3千人ほど。2005年2月、いわゆる平成の大合併によって、近隣の木造町・森田村・柏村・稲垣村・車力村の5町村が合併して誕生した市だ。広大な津軽平野を有し、米やりんご、メロンにスイカなど、豊かな農産物を生み出す一大産地としても知られている。
実はつがる市立図書館のミッションに、農業支援がある。館内には農業関連書や専門雑誌、個人では利用が難しい農業専門の有料データベースなどを、館内貸出用のタブレットを使って利用することができるのだ。
そういえば、農業関連の書籍に熱心に目を通す人達の姿が、時間を追うごとに増えている。こうした人々をサポートするのが、つがる市立図書館の使命でもあり特色でもある。

ここは、カジュアルな図書館だから
東側からの外光をふんだんに取り入れた明るい館内では、朝10時のオープンと同時に訪れた人達が、思い思いに書架をのぞいている。
先ほどから気になっていたのが、スカーフを頬かぶりにした年配の女性。畑仕事用の作業着と長靴とは、失礼ながら図書館ではあまり見かけない格好だ。女性が手に持っていたのは、シリーズだろうか、同じ装丁の料理本が4冊。自動貸出機のタッチパネルをいかにも慣れた様子で操作し終わると、足早に去って行く。
ちょっと、想像してみる。
彼女はおそらく、農家の女性達が集うグループのメンバーで、農閑期を迎えたこの時期、特産物を使った郷土料理を開発しようとしているのではないか。
借りた本は、そのための参考資料。何とも勝手な想像だが、道の駅や直売所で、料理自慢のお母さんたちの手作りの一品を買うのが楽しい身としては、その発想力の源に図書館の存在があるのは嬉しいことだと思う。
つがる市立図書館を青森市方面から車で目指すなら、無料供与中の津軽自動車道の利用がおすすめだ。国道7号から乗って現在の終点、つがる柏インターチェンジで降りると2、3分ほどで到着する。これならショッピングがてら、図書館で本に出会う楽しみが増えそうだ。

気がつけば、随分長い時間をここで過ごしたようだ。
テイクアウトしたカフェラテを持ち込んで、館内でコーヒーブレイクを楽しむ。
ここはカジュアルな図書館だから。気取らないのが魅力だから。スタッフの言葉に甘えさせてもらおう。
本とコーヒーのマリアージュ。
贅沢な時間がゆっくりと、けれど、足早に通り過ぎていく。

●つがる市立図書館
- 開館:2016年7月
- 蔵書冊数:約80,000冊
- 住所:〒038-3107 青森県つがる市柏稲盛幾世41
- イオンモールつがる柏 別館1F
- 電話:0173-25-3131
- 開館時間:10時〜20時
- 休館日:毎月最終月曜日(変更の可能性あり)・特別整理期間(年間5日間)
- http://tsugaru-city-lib.sakura.ne.jp/