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浪江森林鉄道 真草沢(まくさざわ)線【第16回】

 このレポートは、「日本の廃道」2010年5月号に掲載された「特濃廃道歩き 第27回 浪江森林鉄道 真草沢線」を加筆修正したものです。当記事は廃道探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。

林鉄界の秘宝! 幻の「三段インクライン」を解明せよ!

 このレポートは、「日本の廃道」2010年5月号に掲載された「特濃廃道歩き 第27回 浪江森林鉄道 真草沢線」を加筆修正したものです。当記事は廃道探索をテーマにしており、不用意に真似をした場合、あなたの生命に危険が及ぶ可能性があります。当記事を参考にあなたが廃道へ赴き、いかなる損害を受けた場合も、作者(マイみちスト)およびみちこ編集室・道の駅連絡会は責を負いません。

 

◆ 9:44 見上げた涸れ谷 

 

 

 

上部軌道が、乾燥した小さな谷を横断するとき、何気なく谷の上部に視線を向けた私は、とても驚いた。そこには――

 

 

大量の石垣があった!

 

20mほど上に、カーブしながら谷を横切る大きな石垣が存在していた。さらに、その上にもう一列、同じような石垣が見えていた。

谷を幾重にも塞ぐ石垣。そこから導き出される正体の第1候補は、古い谷留工だろう。だが、これは違っている。こんな山奥に、突然谷留工があるものか。これは、そんな当たり前のものではない…!

 

こいつの正体は――

 

 

九十九折りの廃道だ!

 

谷の上方には、二段の石垣が横たわっていた。そして、石垣があるラインの両側を、首を回して結んでいくと、九十九折りで高度を稼ぐ一筋の道の姿が浮き彫りとなった。この上部軌道の行く先だろう。これからあそこまで登っていくのだと思う。

三段インクラインを脱しても、まだこの路線の“上昇志向”は終わってなかったのだ! 熱い!

 

 

谷を通過しても、疎林の斜面を見上げれば、そこには二段の路盤が鮮明に見えた。下の路盤は左が低く、上の路盤は右が高い。

ただ「終点」を目指すだけだったら、あの一番上の段まで、ここから斜面を直登すれば良いのだろう。二度のインクライン直登を思えば、こんなことは簡単だ(ちょっと辛いけど)。だが、そんなもったいないショートカットをする気は全く起こらなかった。

 

 

◆ 9:49 切り返しの沢 

 

 

 

それから間もなく、道は灌木の林に入った。鞭のような小枝に引っかかれ、あるいは打たれ、痛い思いをしたが、幸い長くは続かず、行く手にさっきより大きな谷が見えてきた。

 

 

今度は少量の水が流れている沢。真草沢の源流の一つだろう。軌道は久々に橋を架けていたようで、対岸に明瞭な石組みの橋台が見えた。

 

九十九折りを「予告」された状況のままで、谷を渡るということは、どういうことなのか。

 

 

 

これは面白い線形!

軌道跡は、一つの小さな谷を連続して二度渡っていたようだ。その過程で進路を反転し、九十九折りの二段目へ入っていた。箱庭感のある印象的な線形だった。

こんな急カーブが鉄道だったとは、森林鉄道ならではの風景だろう。かつてはここを、原木が山盛りになった単車のトロッコが、乗り手のブレーキ操縦を頼りに、ゴトゴトと下っていったのだ。それが何台も連なって、この山奥にも賑やかな時があったはずだ。

運転操縦ばブレーキだけだが、スムースに走るには熟練を要したという。なにせ、加速は全て「下り坂」任せである。だから、臆病に過ぎてブレーキをかけ過ぎれば、勾配が緩いところで止まってしまって大変な重労働になった。しかし、速度を出しすぎれば簡単に脱線し、原木ごと谷に転落する危険があった。トロッコの乗り下げ運材は常に死と隣り合わせの仕事だった。

 

さあ、九十九折りの二段目へ。

 

 九十九折りでさらに高度を稼ぐ軌道は、どこまで登る?

 

 

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